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東京は雪だ。春も近いであろう三月下旬にして雪だ。
徳川セックス禁止令のような自粛ムードたけなわで、
そこに雪の援護射撃が加われば街ゆく人もまばらである。
そんな中カメラを携え外出するのも酔狂ではあるけれど、
桜の季節に雪が降るのも珍しくこればっかりは仕方がない。

コロンビアのパーカー（ノースフェイスは大嫌いだ）で武装し
ほど近い公園に咲く桜を目指し、しゃこしゃこ撮影していると
雪合戦には飽きたと覚しき親子連れが雪だるまを作り出した。
なんとなしに手伝うような流れになり、いや、その間も撮影は
していたけれど、拾った棒は案外気に入ってもらえたようだ。

おめめのツツジも落ちた桜の飾りもほどよく彩りを添えている。
折角だから仕上げに雪だるまを囲んで家族の記念写真を撮った。
自分の写真なんかクソどうでもいいんだけれど、ご主人の
スマホで雪だるまを囲んだ家族写真を撮れたのがたいそう嬉しい。

一番いい写真は間違いなくそれなんだけど、生憎手元にはない。
自分の写真を撮る時間なんかよりもずっと大事なことはあるし、
最高の写真を撮る手伝いができたのはカメラ好き冥利につきる。
お気に入りこそ他人に渡すべきだ。独り占めはみっともない。
ほどよく、いい日であった。