[webChronos] -- 時計専門誌「クロノス日本版」オフィシャルSNSサイト --

元々国産-それも古い諏訪セイコーの時計-に注目している理由は、言われがちな
舶来に遠く及ばなかった、という言説が果たしてどんなもんか？と思ったからだ。
そしてそれらを追っかけてゆく過程で、当時の諏訪セイコーは亀戸などからは
ずいぶん蔑まれ、欲深な田舎者などと罵られていた事を知り、諏訪セイコーに
肩入れするようになっていった。昨今、大陸製のものを中華と蔑称で呼ぶことに
恐ろしく抵抗があるのは諏訪セイコーの一件があるからで、では大陸製の時計は
果たしてどんなもんか？と、香港のタイガーコンセプトという会社より取り寄せた。

ここ　http://www.tiger-concept.com/

一応、行動は一貫しており、価値があるものよりも思想や理念にお金を出したくて、
物の良し悪しにのみ注目してお金を払うような精神の貧困さだけはご免被りたい。
簡単に言えば、大坂なおみのBLMに沈黙するシチズンは買わない、といったところだ。

メールにて注文し、五日目には手元に届いた。それがこのタイガーコンセプト1655 GMT。
一見して判る通りローレックスの初期型エクスプローラーⅡ、ref.1655のオマージュだ。
同社のHPによるとムーブメントはDG3804Bとあり、22石だそうである。実物の感じは
６振動・片巻き上げ・日付は12時でクイックチェンジ・GMTの針は単独調整は可能、
パワーリザーブは不明・ハック機能はあるものの、どうやら手巻きはできないようだ。




ドームガラスは流石にミネラルだが、青く輝く無反射コーティングが施されており、
ベゼル径は40mm未満・夜光付・ねじ込みリューズで10気圧防水と、まずまずである。
勿論、ペラい針やたてつけ、ブレスのショボさ等々もう一息という部分もあるけれど、
日差はせいぜいプラマイ15秒程度と、二万チョイという価格を鑑みれば十二分に過ぎる。
日付窓部にはすり鉢状にテーパーがかけられてある処理など、なかなかのものである。
ローレックスの記号であるサイクロップレンズを採用していないのもトゥーマッチに
ならず、センスがよろしい。角度によっては見づらいしドーム風防の処理は大歓迎だ。
マット文字盤に映えるグレーのロゴもよい。やや小振りなのは評価が分かれそうだが、
当時の時計は大きくてもそれぐらいのサイズだから、という事を鑑みれば納得できる。

実際問題200万を超えるローレックスというのも考え物ではあるが、それでなければ
満足できない-つまり全てに満足がいくような自慢の逸品が欲しい、という行動を
止めやしないし、他人の金だからいくらでもご勝手に思う存分にやらかして頂きたい。
それらをこういう場でお友達に見せびらかせてヨタ話に興じるのも多いに奨励する。
が、もうじきシニア割引という年齢で本物とはこうである、なんて話に一切興味はない。

機械式時計は一生物なんて言われてもせいぜい後20年も生きたらいいとこだろうし、
この期に及んではいいものなんかより、かっこいいものを欲しているだけである。
そもそもそんな事を言いだしたら「新しき世界」のパチもんローレックス以上に
かっこよく最高な時計なんかあるもんか。幸いなのはフィクションの世界という事だ。


これをもって断定はできないが、安かろう悪かろうとは言いづらいというのが結論だ。
これから大陸製の時計がどうなっていくのかは未知数であり、将来が楽しみだが、
残念な事に果たしてどうなったかを見届けられるまでこの世にはいないであろう。

繰り返しになるが諏訪セイコーの歴史を知らず、イノセントにネトウヨのように
ニッポンスゴイを唱えるのは構わない。が、この世は果てしなくグレーゾーンで
非対称であると考える者としては、スイスの女性差別の歴史の権化である時計を
イノセントに褒め称えることもできない。世界はどうしてもなにかしら地続きで、
問題点をない事にしてしまうと家父長制丸出しでミソジニーまみれな権力者共が
世界を分断させている、という行為に図らずも手を貸すという事態を招きかねない。
故にネットのホモソーシャルな繋がりから中華という蔑称が滅びるよう願うばかりだ。

蔑まれ、嘲笑に晒され続けた諏訪セイコーの歴史を繰り返す必要などありはしない。

グワシ！