IWCの2024年新作「ポルトギーゼ・エターナルカレンダー」を深堀りしつつ、本気で欲しい1本も見つけてしまった!

FEATURE2024年新作時計
2024.04.27

IWCの2024年新作時計を深掘り。ハイライトは、ケース厚を変えずにセキュラーカレンダーと超高精度ダブルムーンフェイズ表示を搭載した「ポルトギーゼ・エターナルカレンダー」だ。しかし筆者が「本気でかなり欲しい1本」も、併せて紹介する。

IWC ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー

Photograph by Yu Mitamura
鈴木裕之:取材・文
Text by Hiroyuki Suzuki
[2024年4月27日公開記事]


IWC「ポルトギーゼ・エターナルカレンダー」を深堀り

 2024年にフルリニューアルされたIWCのポルトギーゼコレクション。そのハイライトとなるのが「ポルトギーゼ・エターナルカレンダー」だ。クルト・クラウスがダ・ヴィンチに初めて搭載した永久カレンダー機構にオマージュを捧げ、その機構をさらに洗練させたモデルである。

IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」Ref.IW505701
自動巻き(Cal.52640)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。Ptケース(直径44.4mm、厚さ15mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。

 搭載されるCal.52640は、従来の永久カレンダー機構にモジュールを追加し、400年周期の正確さを誇るセキュラーカレンダーにアップグレードされたもの。グレゴリオ暦に基づく閏年のルールでは、4年毎(4で割り切れる年号)に2月29日が追加されて1年が366日となるが、100で割り切れる年号には閏年の例外が設けられていて平年のままとなる。しかしこれにはさらに例外があって、400で割り切れる年号の場合は必ず閏年になるという取り決めがある。この400年間の間に97回訪れる閏年のサイクルを、機械的にメモリーしている機構がセキュラーカレンダーだ。

 過去にこれを腕時計に搭載した例は、独立時計師のスヴェン・アンデルセンを筆頭に数例しかないが、IWCは非常にシンプルな手法を用いてこれを実現させている。400年歯車と2枚のゼネバ歯車からなるモジュールを追加することで、ベースの永久カレンダーからほとんど厚みを変えずにセキュラーカレンダーを作り上げた。

ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの会場で、『クロノス日本版』取材チームが撮影したCal.52640のモジュールの模型。400年に一回転する歯車が組み込まれている。

 さらに驚くべきは、2200兆もの輪列パターンを解析することで実現したというダブルムーンフェイズ。これも従来の機構に3枚の中間車をプラスしただけで、月相表示の誤差を4500万年に1日という超高精度にまで高めている。時計が動き続けている限り、オーナーの一生を軽く超える年月、カレンダーとムーンフェイズの調整作業は不要となる計算だ。もっともこれは理論上の話で、実際にはリュウズ操作ひとつでカレンダー調整が可能という点のほうが重要だろう。

IWC ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー

従来からラインナップされていた「ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー」とほとんどケース厚を変えずに、セキュラーカレンダーおよび超高精度ダブルムーン表示を組み込んだ本作。なお、プラチナ製ケースも直径44.4mmと、従来品から大きく変わっていない。

 ウォッチズ&ワンダーズで発表されたプロトタイプは、表と裏の両面にダブルカーブのボックスサファイアガラスを搭載。さらにエターナルカレンダーだけは、ベゼルレスに分スケールを刻んだフリンジ付きという構成で、コレクションの中でも特に異彩を放つデザインを持っている。裏側からホワイトラッカーをペイントしたサファイアダイアルも同様だ。しかし実際に腕に乗せてみると、装着感は従来の永久カレンダーモデルと大差ない。厚みを増やさずにハイコンプリケーションをトッピングしたその手法は、まさにIWCの面目躍如といったところだろう。


IWCの通常コレクションにも注目したい

IWC ポルトギーゼ IW358402

IWC「ポルトギーゼ・オートマティック 40」Ref.IW358401
2024年、IWCはポルトギーゼ・オートマティック 40のみならず、「ポルトギーゼ・オートマティック 42」や「ポルトギーゼ・クロノグラフ」など、本コレクションを刷新した。自動巻き(Cal.82200)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KWGケース(直径40.4mm、厚さ12.4mm)。5気圧防水。275万円(税込み)。

 通常コレクションに目を向けると、ソフィスティケートされたケース構造の秀逸さが際立つ。パッと見の印象はまさしくポルトギーゼのそれなのだが、いくらか素っ気なかったケースデザイン(そこがまた良いのだが……)が熟成されて、一足飛びに「現代の腕時計」に生まれ変わった印象だ。ポイントは、全幅を絞りつつコンケーブ状のフォルムがプラスされたベゼルと、エターナルカレンダーにも用いられたダブルカーブのボックスサファイアガラス。これだけで時計の印象が大きく変わるという事実に、ウォッチデザインの奥深さを改めて感じさせる。

 筆者の個人的なお気に入りは、新作の中でも最もシンプルな「ポルトギーゼ・オートマティック40」。中でもオブシディアンのダイアルカラーに彩られた18KRGケースが好みだ。

IWC ポルトギーゼ・オートマティック40

Photograph by Yu Mitamura
IWC「ポルトギーゼ・オートマティック 40」Ref.IW358401
自動巻き(Cal.82200)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRGケース(直径40.4mm、厚さ12.4mm)。5気圧防水。259万6000円(税込み)。

 オブシディアンとは、新作で披露された4つのシグネチャーカラーのひとつで(他はシルバームーン、ホライゾンブルー、デューン)、トランスパレントラッカーで表現されたブラックダイアルのこと。ロジウムコーティングされた下地に15層のラッカーを吹き重ね、約100ミクロン(約0.1mm)を残して表面を削る。なお、このトランスパレントブラックラッカーには、必ずゴールドの時分秒針とインデックスが組み合わされるのがルールとされている。4つのシグネチャーカラーは全て、1日の中で移り変わる空の色を表現したものだが、オブシディアンは漆黒の夜空に黄金の光を放つ、都会の夜景をイメージしたものとされている。そのため(現状では)ブラックダイアルを選ぶと必然的に18KRGケース一択となってしまうのだが、その落ち着いたバランスには見惚れるばかり。本気でかなり欲しい1本だ。


Contact info:IWC Tel.0120-05-1868


2024年 IWC新作時計を一気読み!

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