伊東屋のオリジナルブランド「ROMEO(ロメオ)」が生まれ変わった。新しいコンセプトのもと、新生ロメオが打ち出す新製品の発表会からは、同社のユーザーに寄り添う開発姿勢が垣間見える。
Photographs & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2024年10月23日公開記事]
銀座 伊東屋 本店で開催された、新生ロメオの発表会
1904年、伊藤勝太郎によって創業された伊東屋。文房具専門店として知られているが、小売り事業のみを行っている企業ではない。「クリエイティブな時をより美しく、心地よく」を使命に、フード事業や貸し会議室などを提供する空間事業を展開したり、オリジナル商品・サービスの開発を手掛けたりするなど、多角的な経営を行っているのだ。
本ブログで取り上げる「ROMEO(ロメオ)」は、そんな伊東屋のオリジナルブランドだ。1914年に同社が作った「ロメオ万年筆」を2004年に「ROMEO No.2」として復刻。2009年には「ROMEO No.3」が登場した。なお、ロメオというブランド名にはPilgrim from Rome(ローマから来た巡礼者、旅人)という意味がある。
2024年秋、伊東屋はこのロメオ を“Moment of Dis-covery”という新コンセプトのもと、リブランディング。新生ロメオの新製品発表会が、銀座 伊東屋 本店のK.Itoyaで行われたので、クロノス編集部のメンバーで取材した。その様子をお伝えする。
ロメオの新製品を堪能!
今回取材した発表会では、新生ロメオの新コンセプトについて解説を受けた後、新製品を実際に手に取りながらじっくりと取材することができた。
前述の通り、本ブランドの新しいコンセプトは “Moment of Dis-covery”だ。なぜリブランディングしたか、発表会では、以下のように語られた。
「これまでロメオは『男性向けのビジネスツール』でした。しかし今回、(新生ロメオでは)切り口を変えて、ビジネスのみならず、そして性別を問わず、多様な“ライフスタイルメゾン”を目指します。また、日々デジタルの波にさらされ、多忙な毎日を過ごすと、視野が狭くなったり、今まで見えてきたものが見えなくなったりします。そんな中、『手書き』で一息、一拍置くと、今まで見えなかったものが見えてくる……そういった、日々の中の発見に寄り添いたいといった思いを込めました」
また、リブランディングに伴い、コンセプトカラーが設定された。「黄櫨(はぜ)」「白雲石」「深紫(こむらさき)」という、古来から日本で高貴な色と認識されていた3つのカラーを、製品に反映しているのだ。
新コンセプト、新カラーにのっとって発表された新製品は、万年筆、ボールペン、革小物と、多岐にわたっている。
なお、リブランディングにあたって、付属の化粧ボックスが変更された。ウレタン素材を廃し、中の仕切りを紙に変更している。さらに、簡易的なペンシースを付属する。このペンシースはやわらかな布製である。
「ROMEO No.3 万年筆」
新製品の目玉は、やはり万年筆だ。前述したコンセプトカラーをまとった6種(中字と細字、各3種)の万年筆が登場しており、高級感ある外装に目を引かれた。黄櫨と深紫には光沢加工とラメが、白雲石にはマット加工が施されている。
ペン先は18Kゴールドで製造されている。ロメオのロゴと、「一拍おいて、一息つくために」という思いの下、音楽の休符モチーフがあしらわれており、狙い通りにほっこりさせられる。
個人的にとても“推し”だったのが、天冠部分が「時計のリュウズ」モチーフであったこと。従来はアクリルパーツであったが、ステンレススティールでバッジを製作したというのだ。リュウズから範を取ったのは「大切な時間を、この筆記具と一緒に過ごしてほしい」という思いを込めたと聞いて、時計メディアの一員として、そして時計好きとして、なんだかうれしくなった。
中字タイプと細字タイプがラインナップされており、定価は7万7000円(税込み)。いずれもブラウンまたはパープルのインクが付属する。
ちなみに私は文房具は門外漢で、あまり余計なことは言えないので、万年筆を所有している同僚の細田に感想を聞いたところ「書き心地がすごくよい」とのことだった。
「ROMEO No.3 ボールペン」 と「ROMEO No.3 ボールペン ES レザー」
万年筆とともに、ボールペンからも全9種が登場した。
「ROMEO No.3 ボールペン」の太軸と細軸からは、各3種がリリースされた(今回の発表会で触れたのは、11mmの細軸のみ)。万年筆と同じくコンセプトカラーをまとっており、さらにアクリル軸は、1本1本模様が異なっている。
また、「ROMEO No.3 ボールペン ES レザー」も見ることができた。「エクストラスリム」と呼ばれるシリーズで、軸径が9.2mmとロメオの中で最も細く、かつ金属のボディに革を薄くすいて、職人が1枚1枚丁寧に手で巻いて製造しているとのこと。
価格はROMEO No.3 ボールペンの太軸が各2万5300円、細軸とROMEO No.3 ボールペン ES レザーが2万2000円だ(いずれも税込み)。
ちなみにボールペンの方の天冠もリュウズモチーフがあしらわれている。ボールペンはリュウズ部分を回すことでチップを出し入れするので、より「時計感」を味わえるディテールだと思った。
最も刺さったのが革小物!
万年筆とボールペンがメインだとは思うが、個人的に最も刺さったのが、イタリアの革を使用した小物類だった。
特に、ロールペンケースにグッときた。
この2本または4本用のロールペンケースは、柔らかで上質な革が使われているという以外は、何の変哲もないケースだ。しかし、このケースにこそ、伊東屋のユーザビリティーを追求する姿勢、そしてアイデアの卓越性が感じられる名品である(提灯記事とかでなく、説明を聞いて本当にそう思った)。
どういうことかというと、一般的なロールペンケースは、スリットにペンを入れて、フラップを巻いて、紐で巻いて……そんな作業が必要だ。この手間を省くために、そしてフラップにシワが付いてしまうのを防ぐために、ロメオの新しいロールペンケースはスリット部分に工夫が凝らされている。伊東屋では「枝豆方式」と呼ぶこのスリットは、スポッとペンを覆う。ペンの取り出し口がスリットの1/3程度開いているのみであるため、厳重に巻かずともペンが落ちず、取り出す時は少しペンを取り出し口側に押してあげるだけで(枝豆を食べる時のように)、ピョコっとペン先がスリットからのぞく。スリット内には定規も入れられるくらいのゆったりとしたスペースがあるとのこと。
ケースを正面から見て、左下にロゴのバッジがあしらわれているのも、意味がある。普通、横向きで使う製品は右下が目線の終わりとなる。しかしロメオは和を意識しているため、縦書きを想定したうえで、左下を目線の終わりと制定したため、この位置のロゴとなっているのだ。
ロールペンケースは2本用が2万2000円、4本用が2万6400円(いずれも税込み)である。
ちなみに、一緒に行った副編集長の鈴木幸也と同僚の細田雄人がしきりに「欲しい欲しい」と騒いでいたのが、「ROMEO ユーリカンノート」だ。
ROMEO ユーリカンノートは、古代ギリシャの数学者であるアルキメデスが、発見の瞬間に叫んだといわれる「Eureka」に名前を由来する製品だ。ロメオは「いろんな時に持ち歩いてほしい。新たな発見の時に、そばに置いてほしい」といった気持ちを込めている。
肝は、このコンパクトなサイズ感。軽量で、わずか9mmしか厚みを持たないにもかかわらず200ページを超える大容量となっているのだ。各ページに、ノンブル(ページ番号)があしらわれているのも良い。ユーザーが「どれくらいノートを使ったか」が、すぐに判別できるだろう。
なお、あえて革にしたのは、ノートを使い捨てではなく、使い終わった後も手元に取っておくような存在にするため。小口部分は天金加工で保護されており、高級感ある見た目にも寄与している。
ROMEO ユーリカンノートは横罫とドット罫の2種類が用意され、各6600円(税込み)で販売予定だ。
毎日を彩ってくれそうなロメオの新製品
新生ロメオの製品発表会の様子をお伝えした。いずれも、伊東屋のユーザーに寄り添った開発姿勢が感じられる製品であると感じた。
今回掲載した製品の発売予定日や納品予定日はそれぞれで異なるものの、2024年10月23日(水)より、銀座 伊東屋 本店および伊東屋 玉川店の2店舗で先行で展開される。
本ブログを読んでくれたwebChronos読者も、ぜひこの機会にロメオの世界を知ってほしい。