2024年も残すところあと2カ月。年末には、ボーナスが控えているという読者もいるだろう。「まとまったお金が入った」状態で、どんな腕時計を買おうか考えるのは楽しい。そこで私も、ちょっとそのシーズンには早いけど、ボーナスが入ったら買いたい腕時計を考えてみた。
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2024年11月04日公開記事]
買いたい腕時計のことを考えている時が人生で一番楽しいかもしれない
先日、本ブログで「40歳になった記念に買いたい腕時計」という記事を公開した。そして本日「ボーナスで買いたい腕時計」。いつも腕時計を買うことばかり考えていると思われるかもしれないが、実際その通り。会社と家の往復という、大して面白くもない毎日に彩りを添えてくれるのが、すでに所有している腕時計を愛でることに加えて、「欲しい時計」「買いたい時計」に思いを馳せることだ。
それはさておき。年末が間近になると、時計業界はボーナスやクリスマスといったイベントを迎えて、繁忙期になる。販促活動が活発になる街の時計屋なんかをのぞくと、ついついこちらも購買意欲がそそられるものだ。そこで、そんなシーズンより少し早いが、自分自身が考えている「ボーナスが入ったら買いたい腕時計」を2本、この記事で紹介していく。なお、この記事で紹介するモデルの金額と私がもらっているボーナスの金額はまったく関係はない(弊社、そもそも12月がボーナス支給月じゃないしね)。
ボーナスで買いたい腕時計①オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ」
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。107万8000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000-087
いきなり余談で恐縮だが、今年に入ってから「『クロノス日本版』編集部オススメの時計」というコンテンツをwebChronosに掲載している。
このコンテンツは小誌編集部のメンバーが、決められたテーマに沿ってそれぞれ読者にお勧めしたい時計を挙げる、という趣旨である。この「オススメ」で、いつも自分が挙げたいけど、大体ほかのメンバーがピックアップしてしまうのが、オメガの「スピードマスター ムーンウォッチ」(ほかのメンバーとかぶっちゃいけない、というわけではないのだけれど、たくさんあるオススメのうち、やはり他人と同じものは紹介したくないという気持ちがある)。だから、ようやく「ブログ」という形で、本作への思いをつづることができる。
とはいえ、もともと購入しようと思っていた「スピードマスター」は、現行モデルではなかった。1980年代後半~1990年くらいに製造された、まだムーブメントもCal.861だった頃のモデルだ。この年代のモデルのうち、12時位置の“Speedmaster”のロゴの、最後の“r”が一般的なモデルよりも、少し下がり気味に書かれた個体が存在する。この個体が欲しいなと何となく考えていて、以前に某中古時計店で入荷したという報を聞き、見に行った。すると、私がこの個体の存在を知った時よりも価格がずいぶん上昇していて、驚かされた。この個体に引かれたのは「価格」だけではなかったものの、現行モデルを買うよりもお手頃に済むと思っていたのは確かだ。そこでふと、「もう少し頑張ってお金を貯めて、現行スピードマスターを買うという手もアリだな」と、気持ちを切り替えた。
基本的に、スピードマスター ムーンウォッチは第4世代以降、デザインのスタイルを大きく変えていない。だから、もちろん現行モデルでもあの渋い意匠を楽しめるし、おまけに現行モデルならマスター クロノメーター認定ムーブメントCal.3861を搭載しているので、1万5000ガウスという超耐磁性能もついてくる。
トランスパレント式のケースバックからムーブメントがのぞくRef. 310.30.42.50.01.002も良いけど、やっぱり昔ながらのプラ風防の感じが好きなのと、オメガに限らず、ケースバックの素敵なメダリオンをこよなく愛する民なので、Ref. 310.30.42.50.01.001が候補かな。
ボーナスで買いたい腕時計②チューダー「ブラックベイ 58 GMT」
自動巻き(Cal.MT5450-U)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。64万3500円(税込み)。(問)日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570
チューダーの2024年新作モデル「ブラックベイ 58 GMT」も、前述した「編集部おすすめ」で、よく他のメンバーが挙げてしまうがゆえに、自分ではなかなか紹介できなかった腕時計だ。
このモデルはその名の通りGMTウォッチ。GMTウォッチで多いのが、時針が単独操作できる仕様になっている、というモデル。この仕様によって現在地の時間と、もうひとつ別のタイムゾーンを持った地域の時間に時計を合わせて表示させることができる。本作はこの機能に加えて、瞬時日送りができる仕様になっている。おまけにセーフティー機能が付いているため、深夜12時に日付がカシャっと切り替わった後、日付を1日逆戻しして、さらにその状態で針を12時以降に進めると、カレンダーディスクがゆっくり進む仕様になっているのだ。このあたりは、小誌編集長・広田雅将が書いた以下の記事が分かりやすいと思う。
こういった機能をさりげなく搭載させ、しかも60万円台という価格で打ち出すところに「さすが俺たちのチューダー!」と喝采を送りたくなるが、実は私が本当にこのモデルに引かれたのは機能や価格ではなく、そのルックス。Watches and Wonders Geneve 2024で本作が発表された2カ月後くらいに、日本で新作モデルの内覧会が開催されて、初めて実機を手に取った時、まだアルミ製ベゼルインサートを有していた頃のロレックス「GMTマスター II」をほうふつとさせる雰囲気だと思った。
もちろん「ロレックスのGMTマスターが買えないからこのモデルを」という意味ではまったくない。ただ、ベゼルインサートがアルミだった時代の、ブレスレットのコマ同士の遊びやバックルなどが、現在よりもゆるっとしていた時代の、今はないGMTマスター IIを感じられて(もちろんロレックスの現行モデルも良いけど)、なんだか私はノスタルジックな気持ちになると同時に、ヴィンテージウォッチ好きとして、強く所有欲を刺激されてしまったのだ。
実際、ロレックスにもチューダーにも最近のモデルにはなかった“赤黒ベゼル”とか、しかもそのベゼルにはアルマイト加工されたインサートを使うとか、エイジングを思わせるカラーの蓄光塗料を施すとか、上手に過去のモデルに寄せているように思われる。一方で現代の「ブラックベイ」らしい要素も盛り込んでいるところから、チューダーの“新作巧者”なところが分かるだろう。
なお、ルックスは過去のモデルをほうふつとさせるとはいえ、機能は最新。本作もマスター クロノメーター認定機であることに加えて、工具なしでバックル部分でサイズを微調整できる“T-fit”が搭載されている。「ボーナス入ったら」と狙っている時計好きも多いモデルなのでは? と思う。