「ミスタークロノ」でストラップ道の奥深さを知る

2019.07.16

 知り合いに、ジャン・フィリップ・タロというジャーナリストがいる。彼はしょっちゅう来日していて、そのたびにお茶を飲み、フランスと日本の時計事情を交換し合っている。そんなタロ氏は、ミスタークロノという店の共同経営者でもあるそうだ。ミスタークロノって何?とたずねたところ、「時計を置かない時計ショップ。店を見に来るといい」と言われた。パリに出かけたついでに、ちょっと寄ってみた。

ミスタークロノ。店はヴァンドーム広場のすぐそばにある

 パリのヴァンドーム広場から歩くこと1分。ダニエル・カサノヴァ通りの途中にそのミスタークロノはあった。タロ氏が時計を置かないと述べたとおり、店内には腕時計がひとつもない。代わりにあるのは、時計のボックスや本、ワインダーやストラップなど、時計関係のアイテムばかりだ。

ヴァンドーム広場にあるミスタークロノの店内。時計ショップだが、時計の在庫はひとつもない

 店の中心には、NATOストラップがずらっと揃っている。店長が説明してくれた。「NATOストラップは348種類あって、それぞれに長さ違いと幅違いがあります。在庫は1万本を超えてるんじゃないかな?」なぜ増やしたんですか? 「いろいろ選べた方が楽しいでしょう?」。オンラインショップでどんなストラップにしようか迷っている人は、ミスタークロノに来て、実物を見た方が早い。正直、市場にあるNATOストラップのほとんどが、この店には並んでいる。在庫管理はどうするのかと尋ねたところ「信じられないほど大変だ」とのこと。よくぞやっている、としか言いようがない。

みよ、このNATOストラップの在庫を!!!!!たぶん在庫では世界一か?

 そんなミスタークロノは、2013年から、オリジナルアイテムの提供を始めたそうだ。名前はクロノキーパー。様々なアイテムを出しているが、筆者がもっとも惹かれたのは、革張りのトラベルケース「スリムケース」だった。一時期いろいろなメーカーが革張りのトラベルケースを作ったが、現在作り続けているのは、スカトラ・デル・テンポとカシスぐらいだろう。たまたま見かけたクロノキーパーのトラベルケースは、出来もいいし、価格も69ユーロと案外手頃だ。日本での需要は大きそうだ。

売れ線の時計ケアセット。ハイアマチュアが使うには十分すぎる内容だ

 オリジナルのベルトもなかなかの出来だった。「裏にラバーを貼ることで、汗をかいても痛まない」とタロ氏が述べたとおり、細かい配慮が際立っている。「元々時計好きが始めた店なので、時計好きの声を聞いているため」と彼は理由を話す。価格は79ユーロ。クロノキーパーの「エキスパート・ツールセット」も、時計好きならば見逃せない。価格は239ユーロ。ポーチの中には、コマ外しやピンセット、エアブラシなど、一通りのツールが揃っている。ハイアマチュアが使うには、十分すぎるほどのセットだ。

ウッドマルケトリーの時計ボックス。これは欲しいぞ

マルケトリーは、張る木の色も選べます

 人の持っていないものが欲しい、と言う人には、ウッドマルケトリーの時計ボックスもある。「某社でコンプリケーション向けのボックスを作っていた人」が手掛けるこの箱は、様々な色の木を組み合わせることができる。価格は630ユーロ。

時計ボックスも充実。お勧めは革張りのトラベルケース「スリムケース」だ

 現在、ミスタークロノはパリ以外にも、香港とシンガポールに支店があり、日本にも進出を検討中とのこと。もし出来たら、かなり人気を集めるのではないか。一人の時計ファンとして、ぜひ進出を希望したい。

案内してくれたタロさん(左)と、店員の女性、そして店長
http://www.misterchrono.com/en/

営業時間:月曜日は12時から19時半
火曜日から土曜日までは10時半から19時半
日曜定休

Vendôme : 23 Rue Danielle Casanova , 75001 Paris France
+33 9 53 42 04 64