webChronosで参加者を募ったカルティエ×クロノス日本版の「サントス」スペシャルイベントが6月27日に六本木のグランドハイアット東京にて開催されました。
同イベントは『クロノス日本版』の編集長・広田雅将が、カルティエ「サントス」の歴史から最新作までを解説し、時計愛好家から愛され続ける同コレクションの魅力に迫るというものでした。そのスペシャルイベントの模様をお伝えします!
イベントは「サントス ドゥ カルティエ」の誕生秘話からスタートします。
「サントスは、富豪であり飛行家のアルベルト・サントス=デュモンの依頼によって生まれました。彼の飛行船は体を水平に伸ばし、片手で舵を取るスタイルだったため、飛行中に懐中時計を取り出して時間を確認するのが困難だったのです。この話を聞いたカルティエの3代目当主ルイ・カルティエが開発したのがサントスのオリジナルです」
そんな初代サントスが完成したのは1904年と言われています。腕時計と呼べるもの自体はそれ以前にもいくつかのブランドから開発されていました。しかし、それらはすべてミリタリーウォッチや婦人用ストラップウォッチなど、用途の限られていたもの。そのため、初代サントスこそが“どこでも使える初めての腕時計”、すなわち実用的な腕時計であると考えられています。
では、サントスはどのようにして、“どこでも使える腕時計”と呼ばれるだけの懐の深さを得たのでしょうか。
「サントスは懐中時計にワイヤーラグを取り付けた腕時計とは異なり、ラグをケースと一体化させることでストラップをしっかりと固定できるようにしました。そしてどこでも使えるスポーティーなストラップを与えたのです。半面、ローマンインデックスやブレゲ針を使用することで、フォーマルな要素も持ち合わせています」
結果、サントスはカジュアルな場でもフォーマルな場でも着用できるフレキシブルさを手に入れることができたのです。そしてサントスはそうしたマルチパーパスに対応できるデザインを踏襲しながら、現在まで改良され続けてきました。
「2018年に発表された現行サントス ドゥ カルティエは自社製ブレスレットの完成度が非常に高いのが特徴です。ボタンひとつで取り外しが可能なクィックスイッチとコマを簡単に調整できるスマートリンクを有しています。また、ひとつひとつのコマの精度も優れています」
もちろん、現行のサントス ドゥ カルティエが突出しているのはブレスレットだけではありません。
「搭載するムーブメント、Cal.1847 MCは脱進機をシリコン製としたことで約1200ガウスの耐磁性能を実現しています。さらにこのムーブメントの自動巻き機構には巻き上げ効率に優れるマジッククリックが用いられています。つまり、男性に比べて運動量の少ない(=手の振りが少ない)とされる女性でも主ゼンマイが巻き上がり、問題なく使用できるのです」
また、この日は2019年の新作である「サントス デュモン」と「サントス ドゥ カルティエ クロノグラフ」に関しても解説がありました。前者はデザインをドレッシーに振ってこそいるが、決してドレスウォッチではなく、後者はスポーティーだが、やはりスポーツウォッチではないという。その理由を広田はこう語ります。
「サントス デュモンはクォーツムーブメントを採用することでケースの厚さを7.3mmと薄型に仕上げたほか、筋目加工のダイアル、細身のローマンインデックスやラグを有しています。しかしベゼルに立体感を持たせているため、見た目の印象は平たい印象を受けません。また、アリゲーターストラップもドレスウォッチならばツヤを与えますが、サントス デュモンではあえてセミマット加工にしています。さらにテーパーを掛けずストレートにしている点や、太いステッチを使用していることからもドレスウォッチではないことが分かります。かといって、スポーツウォッチでもありません。『クロノス日本版』ではこのような腕時計を“インフォーマルウォッチ”と呼んでいます」
「他方、サントス ドゥ カルティエ クロノグラフは10気圧防水やADLC加工のベゼルなどがスポーティーな印象を与えます。しかしケース厚は袖口に引っかからないよう、12.5mmに抑えられています。さらに、クロノグラフのスタート/ストップボタンを9時位置に移し、リセットボタンをリュウズと同軸にして左右対称とすることで、フォーマル感を強調しています」
初代から“シーンを問わず使用できる腕時計”であり続けるサントス。それは2019年発表の最新作でも不変です。今回のイベントのテーマである「サントス、自由こそがスタイルだ」は、近年の潮流であるインフォーマルウォッチのはしりとも言えるサントスのキャラクターを端的に表したフレーズでしょう。