ジワジワくるぞ!バンビの松阪牛ストラップ

2019.10.06

 かつて食べ物に凝った時期があり、松坂(まつさか、まつざか)の牛銀や和田金で、すき焼きを食べたことがある。以来、人と会う度に「まつざかぎゅう」はうまいと伝えてきた。しかしこの呼び方は間違いであることを知った。正しくは「まつさかうし」である。濁らないし、ぎゅうとも呼ばない。

 知ったきっかけは、バンビの高級ラインである「グレディア」というストラップだった。高級品にふさわしく、使われる素材はクロコダイル、カイマンワニ、リザードにマツサカレザー。バンビでこの話を聞いた際、松阪牛の革なんてすごいなあと連呼したが、渡されたパンフレットを開いて「まつさかうし」であることを知った。

 松阪牛は食べたが、革は試したことがない。しかし、肉が良いなら革だっていいに決まっているだろう。バンビに頼んで、グレディアのマツサカレザー素材を1本貸してもらった。

グラスヒュッテ・オリジナル「シックスティーズ」に装着したグレディアのマツサカレザーストラップ。結構使い込んでいるが、へたる気配はまったくない。

 バンビのストラップが良いことは、昨年借りた「はっ水アリゲーターストラップ」で実感した。日本メーカーのOEMを引き受けているだけあって、酷使してもまったくへたらなかったのである。上級グレードのグレディアも、きっと同じに違いない。

 松阪牛と言えば、日本を代表するブランド牛であり、これを革製品に使うというアイデアは悪くない。しかしマツサカレザーを採用するのは、今のところバンビの「グレディア」と「さとり」のみだ。ではなぜ、他社は採用しないのか。

ストラップを拡大したところ。写真が示すとおり、革のきめは非常に細かい。また、微妙なツヤが出ているのが分かる。ラグ幅19mmにも対応しているのは嬉しい。



バンビ「グレディア」/質感を愉しむレザーストラップ
https://www.webchronos.net/movie/36437/

 詳細は上記のページに記してあるが、改めて説明したい。マツサカレザーは脂分が多く、いくらなめしても脂が抜けないのだというという。革にするための時間がかかれば、当然商品にはなりにくい。しかしバンビは、肌のきめが細かく、残った脂がゆっくりと経年変化を起こす、という美点に注目した。

 筆者は、ストラップの表面がスムースなのは、ラッカーで固めたためと思っていた。しかし、使い込んだマツサカレザーのストラップは、ラッカーを塗り固めた革では得られない、コードバンのような深い色味を見せる。しかも、汚い感じにならないのだ。三度の飯よりも靴磨きが好きな人なら、この深い表情はきっと好きに違いない。

ストラップの裏側。使用感は出ているが、へたり感は全くない。もちろん、バンビのストラップであるからして、極めてアレルギーは起こりにくい。

 筆者も、フェチではないが革製品は好きである。経年変化を起こすべく、マツサカレザーのグレディアを使い込んでみたが、色が激変する気配もないし、もちろんダメになる様子はみじんもない。ただし、これは喜ばしいことではないか、と思った。乏しい経験を言うと、買ってすぐ色が変わるストラップは、確かに楽しいが、例外なくすぐダメになる。経年変化は起こるが簡単にへたらないのは、いかにもバンビらしいし、時間をかけて自分だけのストラップに育てる楽しみがある、とも言える。

「まつさかうし」のすき焼きみたいな分かりやすさはないけど、これいいぞ。