ザ・クォーツレボリューション!『ちゃお』付録のブレスレットウォッチをテストする

2019.12.02

一部の愛好家はご存じの通り、『ちゃお』2019年12月号には、“かつてないゴージャスふろく”と称して小さな女性用時計が付録になっている。最近、オマケ付きの雑誌を見かけるようになったが、時計が付属した例はほとんどない。この付録の時計をwebChronos的に解説する。

はじめに

 この時計、ネタと思いきやかなりちゃんとできている。ネタかマジかでいえば、大マジだ。時計の素材はクロムメッキを施した亜鉛合金。汗で錆びにくいよう、裏蓋はステンレスになっている。風防はプラスチックではなくガラス。ムーブメントはシチズン2035代替機で、きちんと秒針も付いている。オマケの時計と思いきや、侮れない完成度を持っており、大人の女性が着けてもおかしくなさそうだ。


外装

マジカルブレスレットウォッチ
クォーツ(Cal.SL 68、縦17.8×横15.3mm、厚さ3.15mm)。0石。3万2768Hz。理論上のバッテリー駆動時間18ヶ月間。日差±30秒以内。亜鉛合金×SS(直径13m)。ブレスレット長150mm。非防水。『ちゃお』12月号付録に付き価格不明。

 ブレスレットとケースは、クロムメッキした亜鉛合金である。ブレスレットの上下にはプレスの際に生じた“ひけ”が見られるが、オマケと考えれば十分なクオリティーだ。裏蓋とおそらくリュウズはステンレス製。リュウズの周囲には爪を差し込む切り欠きはないが、リュウズは容易に引き出すことができた。また、リュウズのガタは完全に押さえられており、針回しの感触もスムースだった。目をつぶって触ったら、この時計は数万円のクオリティーがあると感じるだろう。

 ただ、ケースとブレスレットは亜鉛合金であるため、金属アレルギーのある人は避けた方がいいだろう。事実、取扱説明書にも「金属アレルギーの方は本商品のご使用はおやめください」とある。また、裏蓋とケースの間や、リュウズにはパッキンが入っていない。防水性能は皆無で、水回りでの使用は避けた方がよさそうだ。

 オマケ時計とは言え、本作は女の子が好きそうな要素を巧みに盛り込んでいる。文字盤には『ちゃお』の人気マンガ『メロと恋の魔法』(篠塚ひろむ)の主人公であるメロの影絵が描かれており、風防ガラスも、ジェラルド・ジェンタ「サクセス」よろしく、多角形にカットしてある。もっとも、コストの関係上、おそらく文字盤は紙で、メロの表現はプリントである。

 影絵で表現せざるを得なかったのは、視認性を考慮したためと、また印刷のクオリティーが高くないためだろう。なお、時分針はプレスの打ち抜きながら立体的なドーフィンであり、視認性はかなり良好だった。安価な女性用の時計には、ダイヤカットで平面に仕上げた時分針を持つものが多いが、むしろ本作のほうが、時計としてはよく考えられている。

時計を包んでいた箱。オマケとは思えない豪華さだ。


ムーブメント

SL 68

ムーブメントには中国製のSL 68を採用する。電池が日本製なのは良心的だ。

 搭載するのは中国製のSL 68ムーブメントである。製造者は、シリコン製の時計や、LEDウォッチ、またice watchを手掛ける深圳エーステック。これはシチズン2035のクローン※であり、現在中国で広く使われている物のひとつだ。もっとも、多くの中国製ムーブメントと異なり、バッテリーには日本製を採用する。今なお日本製のバッテリーは、スイス製や中国製よりも液漏れを起こしにくく、理論上は、優れた耐久性をもたらすだろう。オマケの時計とは言え、かなり良心的だ。

 もっとも、ムーブメントを固定する外枠とバッテリーの押さえが一体成形されているため、バッテリー交換は難しい。事実、本作の取扱説明には「本製品は電池の交換ができません」とある。そのため、理論上、時計の寿命は18ヵ月しかない。もし、長期に渡って使用したい場合は、外枠とバッテリーの押さえを切り離す加工が必要になる。その場合は「大きなお友達」に頼んでみよう。喜んで手伝ってくれるに違いない。

裏蓋とおそらくリュウズはSS製である。裏蓋はオーソドックスなはめ込み式。


結論

 オマケという範疇を超えて、魅力的な時計に仕上がった『ちゃお』の付録時計、マジカルブレスレットウォッチ。無料なのに、大人の女性が好みそうな要素を巧みに盛り込んだ本作は、背伸びしたい女の子には、きっと歓迎されるに違いない。この時計をきっかけに、時計を触る人が増えてくれることを、筆者は強く期待したい。これぞ、クォーツレボリューションではないか。

※:白苺氏曰く、セイコーのPC21Jに置き換え可能とのこと。