主ゼンマイとも。機械式時計を駆動する部品のこと。記録上、15世紀には実用化されたとある。巻き上げた状態とほどけた状態でトルクが大きく変わるため、16世紀のドイツ製懐中時計はスタッカードという部品を使い、トルクを制限していた。また18世紀以降の高級懐中時計は香箱上に巻き止めという機構を設けて、トルクを安定させていた。この時代のゼンマイは鋼鉄製で、さびると破断するという欠点を持っていたが、1940年代以降はステンレスを原材料としたニヴァフレックスやエルジロイに置き換えられ、ゼンマイの寿命は飛躍的に延びた。自動巻き時計の普及は、優れたゼンマイがあってこそといえる。なお理論上は、ゼンマイがほどけた状態で、香箱の半分の体積に等しいことが理想とされる。しかしゼンマイの性能が上がった現在、香箱に占めるゼンマイの割合は、以前に比べて増加している。そのため一般的に、機械式時計のパワーリザープやトルクは増える傾向にある。