調速機を構成する部品のひとつ。両端はそれぞれテンワとヒゲ持ちに固定され、テンワに規則正しい振動周期を与えることで、機械式時計に等時性を与えることができる。発明者はロバート・フック(1635〜1703年)もしくはクリスチャン・ホイヘンス(1629〜95年)といわれるが、現在は後者説が主流である。1776年、ジョン・アーノルドは、ヒゲゼンマイに同心円状を保たせるため提灯ヒゲを開発。彼の影響を受けたアブラアン-ルイ・ブレゲは、後に外端曲線の一部を巻き上げた巻き上げヒゲ(通称ブレゲヒゲ)を製作した。ブレゲの巻き上げヒゲは理論的な裏付けを持たなかったが、1861年、エドゥワルド・フィリップスが理論的解析に成功。以降、同心円状に広がるフィリップス型の巻き上げヒゲが普及した。ちなみに、発明当初のヒゲゼンマイは鉄製だったが、1900年代にはギョーム博士の発明したエリンバー合金に置き換わり、温度変化への耐性を獲得した。スイス製とドイツ製の機械式時計は、ニヴァロックス社製のヒゲゼンマイを採用するが、近年は自社で製造するメーカーも増えている。