【インタビュー】ブレゲCEO「リオネル・ア・マルカ」

2023.09.26

ブレゲが新しく発表したタイプ XXは、フライバック付きのクロノグラフとしてはひとつの完成形と言っていい。では、ブレゲはこのモデルに何を込めようとしたのか? 説明してくれたのは、ブレゲCEOのリオネル・ア・マルカ本人だ。

三田村優:写真 Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2023年9月号掲載記事]


タイプ XXは、時を経て成長するよう設計されています

「新しいタイプ XXコレクションは、1955年のオリジナルモデルにインスピレーションを得たものですが、そこに現代的なひねりを加えています。私たちの意図は、かつてのモデルの完璧なレプリカを作ることではなく、今の時計で今日のニーズに応えることなのです」。それが自動巻きであり、日付表示ということか?

リオネル・ア・マルカ

リオネル・ア・マルカ
1967年、スイス生まれ。ポラントリュイのEHMPで時計師としての教育を受けた後、ジュウ渓谷のさまざまな時計メーカーで働く。92年にスウォッチ グループの傘下となったフレデリック・ピゲに入社。後にETAへ転籍した。その後は、グループ内でコンサルタントとして活躍したほか、ブランパンでも開発責任者を務めた。2019年からスウォッチ グループのボードメンバーとなり、21年から現職。

「クロノグラフのユーザーであれば、現在の時刻だけでなく、クロノグラフを使用した場合の経過時間や、日付も知りたいでしょう。ですから、適切な位置にカレンダーを追加することが重要だと考えました。忘れてはならないのは、タイプ XXの主な機能はクロノグラフであり、視認性は損なわれるべきではないということです。開発チームは日付表示窓の位置も熟考し、4時と5時の間が最適だと考えました」

 面白いのは、クロノグラフ秒針、30分積算計、そして12時間積算計を同時にリセットする、一体型のリニアハンマーだ。このおかげで、新しいタイプ XXは、極めて正確にフライバックを動かせるようになった。筆者が、フライバック搭載機のひとつの完成形と述べた理由だ。

「新しいムーブメントの目的は、ユーザーの皆さんに高性能と堅牢性を提供することです。フライバックやリセットに関する新機能がそのひとつですね。この目的を完璧に満たすため、素材やサイズを工夫し、ヘッドに柔軟性を持たせたリニアハンマーを開発しました。これはハンマーの頭がハート型のカムを押す際に、完璧なリセットを行うものです。とはいえ、ムーブメント内のスペースが限られていることは大きな難点でした。対して私たちは、機械的性能を確保しながらも、薄くなるように設計しました。また、性能を高め、堅牢性を与えるため、ラチェット式の自動巻き機構を標準的なリバーサーに改めました」

 非凡な完成度をもって登場した新しいタイプ XX。もっとも、これは始まりでしかないようだ。

「タイプ XXは、これからの基礎を築くだけでなく、時を経て成長するように設計されています。ですから、日付なしのモデルを作ることを妨げるものはありませんし、新しいモデルや色、サイズ、カタチを生み出すチャンスは今後いくらでもあるのです」

タイプ 20 2057

ブレゲ「タイプ 20 2057」
史上最もフライバックに特化したクロノグラフ。複数の積算計を同時にリセットできるリニアハンマーは、先端にバネ性を持たせてあるため、極めて正確にゼロリセットできる。こちらは12時間積算計を省いたミリタリー版の「2057」。自動巻き(Cal.7281)。34石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。258万5000円(税込み)。



Contact info: ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211 www.breguet.com/jp


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