バーゼルワールド2016編集部注目モデル
Chronos Japan Recommends #1
文字盤の仕上げが語るオメガの変化
世界的な景気減退の中開催された2016年のバーゼルワールド。しかし、興味深い新作が多く並んだ。おしなべて共通するのは商品力を高め、一方では価格を抑えるというアプローチだ。
オメガの「スピードマスター ムーンフェイズ クロノグラフ マスター クロノメーター」は、キャリバー9300をマスター クロノメーター化し、ムーンフェイズとポインターデイトを加えた新作だ。見どころは多いが、今年の傾向に沿うならば、語るべきは青文字盤だろう。
かつて、オメガの青文字盤はラッカー仕上げが定石だった。メッキに比べて発色が安定し、製造コストも低いラッカー仕上げの文字盤は、そこそこ高級な大量生産品にはうってつけだった。もちろん、ラッカー仕上げでも、ロレックスやグランドセイコー、F.P.ジュルヌやIWCのように、コストをかけたものはある。対して、オメガは精細な下地処理を省くためか、ラッカー文字盤に一貫して単調な仕上げを与え続けてきた。
しかしオメガは、生産性から見た目にかじを切り直した。例えば青文字盤。ラッカーからPVD仕上げに変更された結果、鮮やかな発色と薄い膜の両立に成功した。その仕上がりは、上の写真が示す通りだ。
この10年、消費者への訴求ポイントは主にムーブメントだった。しかし、今や優れた外装と説得力のある価格が加わろうとしている。他社に先んじて、その流れに乗るオメガ。
本作を2016年の1本に挙げた理由である。(広田雅将:本誌)