[2016年新作詳報Part2] 創造性奪還に懸けるバーゼルの命運

2016.06.03

Interviews with KEY PERSONS ①
HARRY WINSTON
時計は触ってみないと絶対に分かりません

ナイラ・ハイエック Nayla Hayek
スウォッチ グループ会長兼ハリー・ウィンストンCEO。1995年、スウォッチ グループ取締役。2010年5月12日に同副会長、翌月30日に同会長に就任。2013年5月、ハリー・ウィンストンCEOに就任し、ジュエリー部門のあるニューヨークと時計部門のあるスイスを統括。今年は、女性用に意欲作を数多くリリースする。

 

 ウォッチ グループ総帥にしてハリー・ウィンストンCEO。時計業界屈指の大物が、ナイラ・ハイエック氏である。ハリー・ウィンストン買収後、彼女は、アメリカとスイスに分かれている時計、ジュエリーの各部門を統括。そんな彼女から聞いて面白く、有益なのは、経営よりも、やはり新製品の話だろう。
 ハリー・ウィンストンはアメリカでは大変強いが、アジアではまだまだ伸ばせると思う、と筆者が切り出すと、ナイラ氏は次のように語った。
「オーパスやイストワール・ドゥ・トゥールビヨンのような男性用の時計は強いインパクトを与えることに成功しています。でも女性向けはまだまだ伸ばす余地があります。日本ではHW アヴェニューが人気ですが、新たな顧客開拓のために、さらなるアイコニックな女性用コレクションを加えようと思いました。それが今年発表のHW エメラルドです。風防をエメラルドカット型にしていますが、これは創始者のハリー・ウィンストンが特に好んだダイヤモンドのカットをデザインに用いたもの。そういうアイコニックな要素を盛り込んで、この小ぶりな時計を作りました。アメリカのマーケットも小さな時計が好きだし、アジアは言うまでもなく、ヨーロッパも小さな時計に興味を持ち始めているわね」

 

なぜヨーロッパも小さな時計に興味を持ち始めたと言えるのか。
「ジュエリーのように重ね着けできるからよ。アクセサリー感覚ね」。そう言って、彼女は左腕にはめたHW エメラルドを見せてくれた。なるほど小ぶりなジュエリーと重ね着けされている。彼女はいつ、なぜ、この発想に至ったのだろうか。
 「私は女性よ(笑)」。プロダクトを語る彼女の口ぶりはだんだん熱を帯びてくる。
 ハリー・ウィンストンの時計は、スウォッチ グループによる買収後、大きく質を高めた。ハイエック家の人は皆、製品開発に大変長けていますね?

「情熱はあるわね。私たちにとっては、何を作るかは、何を信じて、どういう感情を持つのかによるわね」。さまざまな新製品の詳細を語った後、彼女はハリー・ウィンストンの強みを明かした。
「今は良い時計が多いですよね。でも、見ていいなと思っても、腕に載せると良くなかったりします。例えば、ブレスレットも良くないし、アタッチメントもイマイチ。なぜかと言うと、時計メーカーが作っていないから。一方、私たちはふたつのカルチャーを持っています。時計メーカーであり、そしてジュエラーとしてのハリー・ウィンストンを継承しました。それが他社との大きな違いではないかしら」。それと製品開発の秘訣。「時計は触れてみないと絶対に分からない。ブレスレットが肌に当たるとかね。まず触りなさい、とハリー・ウィンストンの人間には伝えているわ」。  (広田雅将:本誌)

 

HW エメラルド
文字盤と風防、そしてロゴもエメラルドカットにシェイプした新作。青い文字盤は、ハリー・ウィンストンが所有していた「ホープダイヤモンド」をイメージ。スウォッチ グループの傘下に加わって以降、外装の質は大きく向上した。写真のモデルはサテンストラップ。クォーツ。18KWG(縦24×横17.75mm)。予価140万円。今秋発売予定。

 

つづきは雑誌『クロノス日本版』でお楽しみください。
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