1910年代のレクタンギュラーウォッチの誕生以来受け継がれてきたエレガンスを象徴する「ロンジン ドルチェヴィータ」。その新世代モデルから、コスモダイアル、ローマンインデックス、カラーダイアルをピックアップ。アールデコ時代のアーカイブから発想したデザインは今年さらに進化し、21世紀の現代にふさわしい、新たな洗練のかたちを語り掛ける。
円周と直線の意匠を組み合わせた、ラウンド型のセクターダイアルを採り入れた新作。スモールセコンドとともに丸型の表示をふたつ連ねており、“コスモダイアル”と呼ぶ。ケースもコンパクトなミニサイズに。クォーツ(Cal.L178)。SSケース(縦29×横21.5mm、厚さ6.75mm)。ダイヤモンド合計0.456ct。3気圧防水。60万2800円(税込み)。
野上亜紀:文 Text by Aki Nogami
加瀬友重:編集 Edited by Tomoshige Kase
[クロノス日本版 2023年11月号掲載記事]
歴史とクラフツマンシップが生んだタイムレスな美しさ
アールデコは20世紀初頭、殊に1910〜30年代にかけて流行した装飾芸術である。25年にパリで開催された「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」をその名の由来とするこの様式は、その後、建築に始まり、家具や食器などの室内装飾に至るまで、あらゆる分野に採り入れられていくようになる。
ローマンインデックスやレイルウェイトラックなど、歴代のデザインを受け継ぐモデル。薄く、小さなケースに合わせて、ジュエリーからインスパイアされたという、細かい角型のパーツを組み合わせた新たなブレスレットを備える。クォーツ(Cal.L178)。SSケース(縦29×横21.5mm、厚さ6.75mm)。3気圧防水。28万9300円(税込み)。
産業革命後の新たな市場や新素材の登場に伴い、生活に芸術性を求めたアールヌーボーが曲線美を魅力とするものであれば、アールデコは「左右対称」「幾何学模様」などの構造美を基盤とすることで、芸術と産業の橋渡しをさらに推し進める一大ムーブメントとなった。両大戦間に登場したこの装飾芸術は、同時期に著しい技術開発を見せていた腕時計にも積極的に採り入れられ、現在に至るまでアールデコの意匠は、時計における様式美のひとつとして受け継がれてきたのである。
そんな時代の息吹を現代のコレクションへと反映させたのが、「ロンジン ドルチェヴィータ」だ。ロンジンは1910年代にレクタンギュラーウォッチの製作と販売を開始。同コレクションの範となったのは27年のアーカイブ。レクタンギュラー型ケースやレイルウェイトラック、ローマンインデックスなどの直線が織り成す構造美が目を引く腕時計は、97年にロンジンの基幹コレクションとして誕生した。
今回、最新の「ミニ ドルチェヴィータ」では、ロンジンのヘリテージコレクションにも用いられてきたコスモダイアルを採用。レイルウェイトラックなどのスケールに始まり、視認性を高めるための分割表示(アールデコ特有の表示)をドルチェヴィータは誕生当初から採用し、アレンジしてきた。主に30〜40年代に製作されたセクターダイアルが今作においては、より当時に忠実なラウンド型となり、かつ円周内にバーインデックスを織り交ぜることで、腕時計はさらに古典的な印象を高めている。サンレイとマットを組み合わせた文字盤の仕上げも、かの時代のミニマリズム的佇まいを強調するだろう。198個のリンクを採り入れた新たなブレスレットも、腕時計の幾何学的な印象を際立てる。
一方でカラフルな4色のモデルも登場した。こちらはドルチェヴィータに受け継がれてきた従来のコードを3Dデザイン化。ギヨシェ文字盤とともに、奥行きのある表情を生み出している。ミント・グリーンやブロッサム・ピンクの絶妙なカラーリングと、ゴールドをあしらったインデックスやストラップの煌めきが、「人生の一瞬一瞬を美しく豊かに彩る」というコレクションのスピリットと見事に呼応する。
昨今の小径化の流行に伴い、男性にとってはヴィンテージライクに、女性にとってはジュエリーライクに装うことのできる新作「ミニ ドルチェヴィータ」。性別と時代を超えた新たな洗練をここに告げる。
(左)L5.200.0.99.2/(右)L5.200.0.05.2
インデックスやスモールセコンドの立体的な造形をあしらった最新作。文字盤を彩るパステル調の色彩と同色のストラップには、インデックスに合わせたゴールドカラーのパウダーフィニッシングを施した。クォーツ(Cal.L178)。SSケース(縦29×横21.5mm、厚さ6.75mm)。ダイヤモンド合計0.456ct。3気圧防水。各56万1000円(税込み)。
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