色使いでも新境地を切り拓くノルケイン。 「ワイルド ワン オールブラック」の黒は黒でも一味違う！

ノルケインは、細部までブラックでまとめ上げて強い存在感を生み出した「ワイルド ワン オールブラック」を発表した。同コレクションではオールブラックモデルは初となる。ワイルド ワンの特徴である異素材の組み合わせや、ダイアルの立体感、ポリッシュされた針やインデックスといった異なる質感が使い分けられていることで、単調とならず、視認性も確保されている。

高い耐衝撃性能を備えるワイルド ワンのオールブラックモデルが登場

　ノルケインは、フラッグシップに位置付ける「ワイルド ワン」に、初となるオールブラックモデルの「ワイルド ワン オールブラック」を発表した。ワイルド ワンは、独自素材の「NORTEQ（ノルテック）」を外装に用い、超軽量かつ5000Gの耐衝撃テストを難なくクリアする、多彩なアクティビティーに適する性能を有するモデルだ。

　ノルケインは、スイス機械時計文化の継承を掲げており、スイスの有力なサプライヤーの技術力を結集した時計作りに、創業以来取り組んでいる。また、そのサプライヤーをノルケインチームの一員として公開していることも特徴のひとつである。そんなノルケインの展開するモデルの中でもワイルド ワンは、有力サプライヤーの技術力を巧みに融合することで高い完成度を実現したモデルだ。

　本作の特徴は、ワイルド ワンのデザインコードを守りつつ、ダイアル、ケース、ストラップに至るまでブラックでまとめ上げた点だ。従来モデルは、ケース構造の特徴を生かしたカラフルなモデルが多かった中で、オールブラックの本作はひと際存在感を放っている。

　本作は、カラーによるコントラストを与えずに、仕上げや素材の違いによる質感の差によって視認性を確保しつつ、デザインが単調にならないように仕立てられているのだ。

オールブラックながら視認性を確保するダイアルデザイン

　本作の視認性がどのように確保されているかに注目しよう。ダイアルは、ノルケインの「N」ふたつを組み合わせたロゴマークをパターン化して浮き彫りにしたもので、僅かに高低差を設けることで立体感が与えられている。加えて、視認性を悪化させるような光の反射を抑える効果もある。このダイアルの製造は、専門サプライヤーであるモントレモによるものだ。インデックスと時分秒針はポリッシュ仕上げがなされ、ダイアルとコントラストを与えることによって、視認性を確保しつつ、キラリと光る存在感を加えている。

　Weaber HMS社製の時分秒針は、ブラックにカラーリングされて本作のコンセプトであるオールブラックを実現。また、時分針は従来通りスケルトン化され、ワイルド ワンの軽量さを表現しつつ、ワイルド ワンの特徴であるダイアルデザインを引き立たせる効果も狙ったものではなかろうか。

　ダイアルリングに表記された5分ごとの表示と分インデックス、ブランドロゴや「CHRONOMETER」の表記までもブラックに統一しつつ、僅かなトーンや質感の違いで可読性を維持している。質感が違いすぎると目立ち、近すぎると読みづらくなることは容易に想像できるため、本作のコンセプトを実現するうえで重要なファクターであると言えるだろう。

　各針とインデックスの先端には蓄光塗料が施される。これもオールブラックにまとめるために特別に用意されたもので、明所ではブラックに、暗所では発光して視認性を確保する。

巧みに異素材を組み合わせることで高い耐衝撃性を実現したケース構造

　ワイルド ワンの最大の特徴は、複数の素材の長所を最大限に引き出すように組み合せて軽量かつ高い耐衝撃性能を実現した構造だ。そのケースは合計25個の部品で構成される。ムーブメントはチタン製コンテナ（インナーケース）に収められ、ラバー製のショックアブソーバーが包む。それを独自素材の「NORTEQ（ノルテック）」製ケージが挟み込んで保護ケージを形成する。ワイルド ワンの全体的なコンセプトとデザイン、およびノルテックの開発はBIWI SA社が手掛け、コンテナ製造およびケース組み立てはMRP SA社によるものだ。

　ノルテックは、カーボンファイバーとバイオ由来原料を60%含む高性能ポリマーマトリックスを融合させたカーボン複合素材であり、その特性によりチタンと比較しても約3分の1という軽量かつ高剛性である特性を持つ。その結果、ヘッド部分の全体重量は84gと、同社のステンレススティール製モデルと比べて重量は約半分に抑えられている。

　これらの効果により、堅牢なノルテックがもたらす耐傷性を確保しつつ、落下のような大きな衝撃では、軽量な仕立てで衝撃のエネルギーを抑えながらラバー製ショックアブソーバーでムーブメントを保護しており、5000Gの耐衝撃テストをクリアする性能を実現する。加えて、200mの防水性能も備えていることから、マリンスポーツを始めとした多彩なアクティビティーに適するコレクションだ。

高い性能を有し、信頼性も高いケニッシ製ムーブメントCal.NN20/1

　チタン製コンテナ内に収められたムーブメントは、ケニッシ製のCal.NN20/1である。ケニッシ製ムーブメントは、近年では供給先を増やして採用モデルも増えてきたが、ケニッシ設立当初はチューダーの他に関係の深いシャネルとブライトリングといった有力ブランドへの供給に限られていた。このような背景の元、スイス機械時計文化の継承を標榜するノルケインを評価したケニッシは、2020年よりノルケインとの長期のパートナーシップを締結し、ワイルド ワンへの採用へと至っている。

　Cal.NN20/1を始めとしたケニッシ製ムーブメントの評価は非常に高い。現代において重視されるパワーリザーブは約70時間と十分であり、C.O.S.C.クロノメーターを取得していて高い精度が期待できる。数値として現れない部分に注目しても、アガキの調整が可能な両持ちのテンプ受けやフリースプラングテンプを採用するなど、信頼性を高める工夫も見て取れる。

素材感や仕上げの違いを際立たせたオールブラックモデルの登場

　本作に組み合わされるのは、ミラネーゼパターンの施されたブラックのラバーストラップで、尾錠もコンセプトに沿ったブラックである。本作の全体を改めて眺めると、徹底してブラックに統一しつつ、マットなノルテックとサイドから覗くショックアブソーバー、立体感のあるダイアル、ポリッシュされた針やインデックス、テクスチャーが与えられたストラップと、素材感の違いや僅かなトーンの差により単調となっていない。

　本作は、オールブラックであるからこそ、これらの僅かな違いが引き立っており、異素材を組み合わせたワイルド ワンの特徴が生かされている。この点は、ファッションにおけるオールブラックのコーディネートにて素材感の差が重要であることと共通する部分であり、ノルケインの感性の鋭さを反映していると言える。

　この観点から本作の発表は、特徴的な耐衝撃性や防水性能に期待したアクティブなシーンから、都会的でモダンなファッションにもマッチする総合力の高いモデルの登場である評価できるだろう。