ノルケインは、コレクションとして初めてゴールド製外装を用いた「ワイルド ワン ゴールド」を発表した。ワイルド ワンの従来モデルは、外装にカーボン複合素材を用いた軽量かつ高耐衝撃モデルであったのに対し、本作は外装の一部に18Kレッドゴールドを用いたことが特徴だ。しかし、時計本体の重量を100gに抑えつつ、従来通りの5000Gの耐衝撃テストをクリアしている。
18Kレッドゴールドを採用した「ワイルド ワン」が登場。新境地を切り拓くラグジュアリーなモデルらしく、18KRG部分はポリッシュとサテンで磨き分けられるなど、見事な仕上がりだ。自動巻き(Cal.NN20/1)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KRG×ノルテック×ラバーケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。200m防水。217万8000円(税込み)。世界限定99本。
佐藤しんいち:文 Text by Shin-ichi Sato
Edited by Seiki Maeda
[2023年11月17日公開記事]
耐衝撃性能とゴールドのエレガントさを兼ね備えた新たなフラッグシップ
ノルケインは、フラッグシップに位置付ける「ワイルド ワン」に、初となる18Kレッドゴールドを外装に用いた「ワイルド ワン ゴールド」を発表した。18Kレッドゴールドを用いながら従来モデル通りの5000Gの耐衝撃テストをクリアしており、エレガントかつ多彩なアクティビティーに適する性能を有するモデルに仕上がっている。
ノルケインは、スイス機械時計文化の継承を掲げた新興ブランドだ。伝統的な水平分業制での時計作りを掲げる同社の展開モデルの中でも、ワイルド ワンは有力サプライヤーの技術力を巧みに融合することで高い完成度を実現している。
本作の特徴は、ワイルド ワンのデザインコードを守りつつ、ブラックをベースにレッドゴールドの華やかさを加えた点である。従来モデルのケージ(外装)は軽量で堅牢なノルケイン独自素材「ノルテック」製であったが、本作はダイアル側のケージに18Kレッドゴールドを用いている。そのため重量増が心配されるが、複数の素材を組み合わせて軽量かつ耐衝撃性を実現する保護ケージ構造をワイルド ワンより踏襲していることにより、本体重量は100gに抑えられている。
時計全体はゴールドとブラックのツートンコーディネートにまとめられており、華やかでありながら引き締まった印象である。
従来モデルから踏襲された優れたケース構造と搭載ムーブメント
ワイルド ワン ゴールドのムーブメントは従来モデル通りのケニッシ製Cal.NN20/1で、パワーリザーブ約70時間、C.O.S.C.クロノメーターと基本性能が高い。
ワイルド ワンのケース構造は、このムーブメントをチタン製のコンテナ(インナーケース)に収め、それをラバー製のショックアブソーバーが包んでいる。これを更に硬質なケージにより挟み込むことで、高い耐衝撃性を有する保護ケージを形成している。本作のケージは、ケースバック側は従来モデル同様の「ノルテック」製だが、ダイアル側は18Kレッドゴールド製を採用している。
本作の構造はケースサイド側から見ると良く分かる。ベゼルからラグまでを包み込むような18KRG製ケージとブラックのショックアブソーバーがコントラストを成している。このケージはノルテック製を前提とした設計であったはずだが、18KRGを用いた本作でもプロポーションを変えていない。樹脂成型とは異なる技術が必要となるため、ノルケインが連携するサプライヤーの幅広さを示していると言える。また、サイドのプレートも18KRG製となる。
インデックスおよびWeaber HMS社製の時分秒針は、ゴールドにカラーリングされており、本作の特徴であるゴールドとブラックのツートンコーディネートを成す。モントレモ製のダイアルには、ノルケインの「N」ふたつを組み合わせたロゴマークをパターン化して浮き彫りにし、わずかに高低差を設けることで立体感を生み出している。また、各針とインデックスの先端には蓄光塗料が施される。塗布面積は小さいが発光量は十分で、暗所での視認性も問題ない。
画期的な新作が生まれるタッグ
本作は18KRGとラバー、独自素材のノルテック、チタンと特徴や質感、加工方法も全く異なる複数の素材を組み合わせたモデルである。このような異素材の組み合わせがノルケインから生まれるのは、豊かな経験を持つジャン-クロード・ビバーが素晴らしいメンターとして加わっていることもひとつの要因である。
ビバーがノルケインの顧問に就任したのは2022年6月のことだ。22年時点でノルケインは、ケニッシを始めとした数多くのサプライヤーと良好な関係を結び、魅力的なラインナップで人気を集めるに至っていた。しかし、さらなる進化をしていくために、“経験”を必要としていたタイミングでもあった。
ビバーの功績は、休眠状態のブランパンを復活させるなど多岐にわたるが、ひとつのトレンドを作った点でウブロ「ビッグ・バン」において異素材の組み合わせを実現する多層構造を完成させたことは見逃せない。異素材を多層的に組み合わせることの共通点から見て、ワイルド ワンおよび18KRGを用いた本作に対して、何かしらの示唆があったとしても不思議はない。
良好なアクセシビリティーを提供するノルケイン
ノルケインは、多くの人に時計を手に取ってもらうことと、ブランドとユーザーあるいはユーザー同士の交流を重視している点が特徴である。現在ノルケインは、世界40カ国で展開しており、時計を手に取る場として年内にはブティックを含めた取扱店が250店舗に達する予定だ。特に日本では、ビバーのアドバイスもあって積極的に店舗を増やしており、現在の41店舗という展開数は独立系かつ新興ブランドとしては非常に多いと言える。その背景には、ノルケインの実直な物作りとフェアなプライスが販売側に受け入れられていることもあるのだろう。
そして、創業者でCEOのベン・カッファー自身が広告塔となり、ユーザーを集めたイベントを積極的に開催している。このようなイベントは、参加者がブランドのフィロソフィーや製品の情報を深く知ることに加えて、ブランドとユーザーおよびユーザー間の交流を活発にし、チームメンバーとしての連帯感を醸成するに至っている。
ここで、ノルケインが協力関係にあるサプライヤーを積極的に公開していることも思い出そう。ユーザーに対してノルケインは、店舗やイベントにてブランドフィロソフィーやモデルのコンセプト、そして実機に触れる機会を設け、そのモデルがどこで、どのような企業によって製造されているかを公開している。これは、これからの時計ブランドに求められる良好なアクセシビリティーを積極的に提供する姿勢だと言えるだろう。
さらに、ノルケインから、2024年のウォッチズ・アンド・ワンダーズに初出展することがアナウンスされた。これに合わせて魅力的なモデルが発表されることだろう。また、この出展によってノルケインが更に広く知られるきっかけとなり、新たなつながりを生むことになるだろう。今後も目を離せない存在であることは間違いない。
https://www.norqain.com/wild-one/
https://www.webchronos.net/features/98463/
https://www.webchronos.net/features/85454/
https://www.webchronos.net/features/85240/