ドイツの時計ブランド「アオニック(Äonic)」から、まるでレモン搾り器のような外観のファーストモデル「オートマティック ディスカバー ミニッツ」が発表された。ベルリンを拠点とする実業家、ヨルグ・ウィッヒマンは、アオニックを通じてウォッチシーンを豊かにしていく人物となるだろう。
自動巻き(Cal.A26-1 W)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.95mm)。世界限定100本。参考価格4450ユーロ(約72万円)。
新しい時計ブランド、アオニックのファーストモデル「オートマティック ディスカバー ミニッツ」
「どの角度からも常に分表示が視認できる、これが非常に大切なことだと思っています。日常生活を送るのに、分針のリズム的要素は重要ですから」。これはドイツの新しい時計ブランド「アオニック(Äonic)」創業者のヨルグ・ウィッヒマンが、アオニックのファーストモデル「オートマティック ディスカバー ミニッツ」を表現するのに用いた言葉だ。
ベルリンを拠点に活動する実業家であるヨルグ・ウィッヒマンは、デザインとファッションのバックグラウンドを持ち、2003年に首都ベルリンのデザイン・マーケティング・プラットフォームを併設したコンセプト・ストア「berlinomat」を、2011年にはファッション見本市「Panorama Berlin」を立ち上げた。新型コロナウィルス感染拡大によって展示会ビジネスが困難に直面した時、彼の頭には昔から好きだった腕時計が浮かんだ。
「オートマティック ディスカバー ミニッツは、センスと使い勝手の良さを同時にアピールする、五感に訴えかけるユニークな機械式時計をデザインしたいという発想から生まれました」とウィッヒマンは語る。この時計に着手するやいなや、彼は考えをまとめ上げ、すぐに方向性を確立した。それは、ディスク上に時刻を表示し、分を目立つ位置に表示する時計であった。ドイツ・レーゲンスブルク近郊のバービングにある時計メーカー、ダマスコで、ウィッヒマンはムーブメントとケース開発を積極的にサポートしてくれるパートナーを見つけた。
ディスクによる時間表示
アオニックの最初のモデルであるオートマティック ディスカバー ミニッツは、逆さにしたレモン搾り器を思わせるフォルムだ。果汁が流れ出す溝のようなスリットは12個あり、それがインデックスになっている。その下にはディスクがあり、オレンジのスーパールミノバが塗布された部分がスリットから見えることで現在の時間を表示する。ディスクは毎時15分前に動き出す。文字盤はフラットで、いわば“レモン搾り器の底”の部分に位置している。
分針は、ブラックのディスク上にオレンジのスーパールミノバで描かれ、固定されたミニッツトラック内を1時間に1回転する。分針の下には扇型の窓があり、そこから秒ディスクを見ることができる。そのため、文字盤の外観は1時間の間に絶えず変化するのだ。秒ディスクは1分間に1度、自転軸を中心に回転する。
高い品質
厚さ12.95mmという、意外にも薄型のケースはダマスコが製作したもので、表面を硬化させたブラストビーズ加工によって700ビッカースの硬さを保持している。大きなカップ型になっている無反射防止加工のサファイアクリスタル製風防は、スイスの小さな専門業者からの供給で、厚さはわずか1.2mmである。
ウィッヒマンは全体の構造が風防下にコンパクトにまとまり、外部から見える部分をできるだけ大きく取りたかったため、それ以上の厚さは許容できなかった。ウィッヒマンがプロトタイプを持って訪れた時に見た、風防からその周辺へのシームレスな流れは、品質の高さを十分に示していた。
ダマスコのCal.A26-Xをカスタムメイドしたムーブメント
A26-1Wと名付けられたムーブメントは、ダマスコのCal.A26-Xのカスタムメイドバージョンである。ETA2824の輪列をベースに、ダマスコ社製の地板、ブリッジ、ギア、その他のパーツを加えた、14枚のディスクを使用した構造になっている。軽量性と堅牢性を保つため、一部がPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製となっている。この高温耐性のあるプラスチックは、アルミの2倍も軽量だがより強く、航空業界や自動車業界で採用され、テニスのガットもこの熱可塑性プラスチック素材で作られている。パネライも「サブマーシブル マリーナ ミリターレ カーボテック」に採用している。
またダマスコは、ムーブメントに両方向回転の巻き止めを備えた巻き上げシステムと、2個のセラミックスボールベアリング、ニヴァロックス・ファー製のエスケープメントとヒゲゼンマイを搭載している。サファイアクリスタル製ケースバックにより、裏蓋側からムーブメントが鑑賞できる。
特許出願中のストラップ機構
フォルツハイムの会社、Craissがクラスプを製作していることに言及する意味はあるだろう。すぐに使い方を覚えられるZ型のつく棒は驚きのひとつである。これは、ウィッヒマンが時計の着脱時にレザーストラップを保護し、長く使えるようにとデザインしたものだ。
ストラップ自体はラグにバネ棒で取り付けられておらず、ケースに固定してあるブリッジから伸びており、面ファスナーで固定されている。ウィッヒマンはこれとディスク構造、スプリングを備えたベアリングの特許出願を行っている。
面ファスナーでの開閉によってストラップ交換が容易なため、3本のストラップが付属している。スムースなブラックのカーフストラップ、オレンジのテクスチャード・カーフストラップ、そしてブラックのNATOストラップだ。他にも、グリーンやオリジナルのバスケットボール・レザーを使用したストラップなどがオンラインショップには用意されている。
世界限定100本のファーストエディション
ヨルグ・ウィッヒマンが見せてくれたプロトタイプはステンレススティールカラーであったが、ファーストエディションとして発売されるのは、ブラック加工を施したケースと、全体がロジウムプレーテッド加工されたムーブメント仕様のものである。ケースカラーは、ダマスコでDAMESTコーティングとして知られる、5層のDLCコーティング由来だ。
世界限定100本が製造され、導入価格として4450ユーロが予定されており、時計宝飾店やセレクトショップ、アオニックのウェブサイトで販売される。コーティングなしのステンレススティール仕様はセカンドエディションとして販売される予定で、ファーストエディションよりは高いが5000ユーロ以下の設定となるようだ。
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