「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」と「1815 ラトラパント・パーペチュアルカレンダー」。A.ランゲ&ゾーネは永久カレンダーを搭載するふたつの代表モデルに新たなカラーバリエーションを加えた。過去のモデルの革新的な技術の成果を効果的に生かした精緻な複雑機構によって、世紀を超える永続性を手に入れたふたつは、技術が英知を語る稀少なマスターピースだ。
菅原茂:取材・文 Text by Shigeru Sugawara
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]
白い輝きをまとったふたつの永久カレンダー
2021年発表の18KWG、18KPGによる同モデルに続く2023年の新作は、Ptケースとブラックダイアルを採用し、アウトサイズデイトも黒ベースに白字の組み合わせとなり、シャープな印象を持つ。自動巻き(Cal.L021.3)。63石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ptケース(直径41.9mm、厚さ12.1mm)。3気圧防水。要価格問い合わせ。
あらゆるウォッチメーカーにとって、永久カレンダーは創作に値する意義深い複雑機構だ。時刻表示のみの時計は基本的に12時間×2回の繰り返しでしかないが、カレンダー表示の要素を増やすことによって、時計は1日のサイクルから1カ月、1年、そしてはるか先の22世紀、いやそれ以上先の時を取り込むことができる。永久カレンダーには、単なる実用機能を超えて果てなく続く時の壮大なビジョンが反映されるのである。
(右)永久カレンダーの12カ月は、ダイアル外周の回転リングがひと月ごとにジャンプして示される。6時位置のマーカーの上には閏年周期の表示窓が設けられ、赤い数字の「4」が閏年を示す。
A.ランゲ&ゾーネには永久カレンダーを搭載するモデルが各種ある。初作は2001年発表の「ランゲマティック・パーペチュアル」だ。48カ月車で制御するオーソドックスな設計を採用したランゲマティック・パーペチュアルは、アウトサイズデイトの日付表示に、曜日と24時間のデイ/ナイト表示、12カ月の月表示と4年周期の閏年表示の各ダイアルを組み合わせたものだった。
23年発表の「ランゲ1・パーペチュアルカレンダー」は、21年発表の同モデルをプラチナケースとブラックダイアルによって再解釈した新バージョンだ。最大の特徴は「ランゲ1・デイマティック」のダイアルデザインを保持しながら、永久カレンダーをさりげなく巧妙に組み込んでいる点である。日付と曜日は定位置にあるが、12カ月の月名表示をダイアル外周に配置し、月次リングが毎月の最終日に30度進んで瞬時に月が切り替わる仕組みだ。この特殊な永久カレンダー機構は、12年発表の「ランゲ1・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー」のために開発されたもので、48カ月車で閏年周期を制御する伝統的な方式に取って代わる革新的な機構である。実際、アイコニックなデザインを変えずに機能を足すという方法論で設計されたこれらのモデルの外観は瓜ふたつだ。
2013年発表モデルに加わった新色。ムーブメントはスプリットセコンドクロノグラフとともに、永久カレンダー、高精度ムーンフェイズ、パワーリザーブを搭載する、最も複雑なもののひとつ。手巻き(Cal.L101.1)。43石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KWGケース(直径41.9mm、厚さ14.7mm)。3気圧防水。100本限定。要価格問い合わせ。
新しい永久カレンダーモデルには、もうひとつ「1815 ラトラパント・パーペチュアルカレンダー」がある。13年初出の同モデルのバリエーションで、ホワイトゴールドのケースとピンクゴールドのダイアルを組み合わせた新鮮なカラーリングが印象的な限定モデルだ。特徴は西暦2100年までの未来を記憶する永久カレンダーとスプリットセコンドクロノグラフの融合にある。興味深いのは、100年単位の長大なマクロの時間と、6分の1秒単位の微細なミクロの時間という対極がひとつの機械式ムーブメントで表現されることだ。
永久カレンダーは、人の一生を超えて生き続ける稀有な存在だからこそ、ウォッチメーカーは後世まで長く残るマスターピース作りに情熱を注ぐ。A.ランゲ&ゾーネの取り組みがまさにその象徴だ。
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