レッセンス “時計らしく在り、時計以上の何か”。自分だけの時を刻む「タイプ 8S」

2023.12.07

時計もシーンによって着け替えを楽しむことが、ウォッチファンのスタイルのひとつになっている。では、心底リラックスしたいときにはどんな選択肢があるのか。逆説的だが例えば、時計を身に着けつつも時間にとらわれることなく、本来の自分らしい時を刻んでくれる1本が理想に近い。螺旋のように回転するディスクで独自の時刻表示を実現したレッセンス。その玄妙な動きが、我々の中の“何か”を解放してくれる。

タイプ 8S

レッセンス「タイプ 8S」
時分表示のみの「タイプ8」。レッセンスのラインナップにおいて最もシンプルなスペックだ。この「タイプ 8S」はセージグリーンの文字盤とグレーのレザーストラップを組み合わせた新作。自動巻き(Cal. 2892A2/Ressence OrbitalConvex System)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約36時間。Tiケース(直径42.9mm、厚さ11mm)。防滴構造1気圧。206万2500円(税込み)。
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
長谷川剛:文 Text by Tsuyoshi Hasegawa
加瀬友重:編集 Edited by Tomoshige Kase
[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]


針を持たないROCS(レッセンス・オービタル・コンベックス・システム)

タイプ 8S

 時計は文字盤と針をもって、時という事象を具現化してきた。「しかし人間の目は動くものに集中してしまう性質がある。針が動いているとそればかりに集中してしまい、読みづらさが生じるもの。であるなら、すべてをディスク表示にしてしまえば良い」。理想の時計の在り方として、そう直感し確信したデザイナーがいる。極めてユニークな時刻表示スタイルを持つ腕時計、レッセンスを生み出したベノワ・ミンティエンスだ。

 彼はそもそも工業デザイナーとして高速列車や航空機の客室、それに医療機器などのデザインを手掛けていた人物。その後、2010年に時計ブランド、レッセンスを興し、続々とユニークな時計を作り出し注目を浴びた。そんな鬼才が時計作りに関し特に重視しているのが「機能性」と「ユーザー体験」である。時計としての見やすさや使い勝手に加え、五感を刺激し、見る者を惹きつける〝何か〞を大事にしているという。

タイプ 8S

レッセンスの腕時計の外観上の特徴のひとつが、ケースサイドにリュウズを持たないデザインであること。ケースの流麗なフォルムを崩さず、左右どちらの腕に装着しても見た目の違和感は生じない。時刻合わせおよび主ゼンマイの巻き上げは、ケースバック自体を直接回転させて行う方式を採る。この「タイプ 8S」以外のモデルも同様だ。

タイプ 8S

 それらの要素や理想を追求し集約させたアイデアが、ROCS(レッセンス・オービタル・コンベックス・システム)だ。一般的な時計のように、文字盤上を回転する針で時刻表示を行うのではなく、すべての情報をひとつのレイヤーに集約させるという、ミニマルなスタイルが特徴である。そしてレッセンスシリーズの腕時計は、すべてこのROCSを採用しているのだ。ROCSの魅力は、いわゆる針を持たないこと。そして複数の回転ディスクをひとつの面の中に完璧な形で収めているため、ベースディスク以外に突出したパーツが皆無なことだ。ディスク構成における最大パーツは分ディスクであり、その面に時ディスクや秒ディスク等を埋め込んでいる。時と秒などの表示は常に分ディスクと連動し、お互いを追いかけるように動き続けるところが実にユニークである。

 合理的かつ未来的なルックスのため、一見クォーツ式を思わせるレッセンスの腕時計。しかし基本的に自動巻きのETA2892A2をムーブメントとした、生粋のメカニカルウォッチなのである。10年からスタートしたレッセンスのイノベーションは、23年の現在に至るまで、複数のバリエーションを生み出し大きな反響を呼んでいる。中でもレッセンスらしいミニマリズムを味わえるのが「タイプ8」。時・分以外の表示機能を持たず、数字などの要素も排除している。極めて明快な印象だ。今季は新色の「タイプ8S」がリリースされ、シリーズの幅をさらに広げている。

タイプ1 ラウンド

レッセンス「タイプ1 ラウンド」
2014年に初登場した「タイプ1」。その新作が「タイプ1 ラウンド」だ。革新的な時刻表示スタイルはそのままに、人間工学に基づきながらも有機的な質感の、丸みのあるフォルムが心地よい。自動巻き(Cal.ROCS 1.3 /Ressence Orbital Convex System、Cal.2892[モジュール])。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約36時間。Tiケース(直径42.7mm、厚さ11mm)。防滴構造1気圧。277万2000円(税込み)。

「タイプ1」は各所に数字を振ったダイアルを持つ実用的なデザイン。分ディスクの針表示と時ディスクの間にカレンダーを配置しており、機能的にも充実している。さらに特別なユーザー体験をもたらすモデルとして登場したのが13年発表の「タイプ3」だ。このモデルは「光の反射による見づらさ」を克服している点が画期的。なんとダイアルと風防との空間にオイルを満たしており、結果、あらゆる角度からの視認性が向上している。

 人はなぜ腕時計を選んで身に着けるのか。時刻を知りたいというだけでなく、自分らしい時間、すなわち自分らしい人生を生きていきたいと願うからに違いない。信頼を得たいビジネスの場などでは、ステータスに特化した時計を着けるのもひとつの手。しかし、オフの寛いだ時間を自分らしく過ごすのであれば、快適な着け心地に加え、自分だけの時を刻むアイテムが欲しくなるものだ。誰かのための時計ではなく、本当の意味で自分と共に生きる時計。レッセンスの腕時計はその先鋭をもって、既存の時計外の位相へと我々を導いてくれるのかもしれない。

タイプ 3EE

レッセンス「タイプ 3EE」
風防内にオイルを封入した画期的モデルとして2013年にデビューした「タイプ3」。今季はその新色モデルである「タイプ3 EE」が登場。爽やかさと柔和な印象を湛えるユーカリグリーンを採用。自動巻き(Cal.ROCS 3.5 / RessenceOrbital Convex System、Cal.2824-2[モジュール])。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約36時間。Tiケース(直径44mm、厚さ15mm)。防滴構造1気圧。630万3000円(税込み)。


【動画】機械式時計で最も不思議な動きをするレッセンス「Type 3.5-B」

 レギュレーター式の分針と時針や日付、曜日、温度計などの各インダイアルがオイルに満たされたサファイアクリスタル製風防の中で回転する、レッセンスの「Type 3.5-B」。仕組みを知っている者ですら、絵が動いているかのような錯覚を起こすダイアルとなっている。



Contact info: DKSHマーケットエクスパンションサービスジャパン cg.csc1@dksh.com


【動画】ダイアル上で絵が動いている!? 機械式時計で最も不思議な動きをするレッセンス「Type 3.5-B」

https://www.webchronos.net/features/48731/
オイルを封入した機械式腕時計、レッセンス「Type3」シリーズに爽やかなユーカリ グリーンが登場

https://www.webchronos.net/news/101181/
レッセンスから柔らかなセージグリーンダイアルが特徴の「Type 8S」が登場

https://www.webchronos.net/news/92590/