パネライ 詰められたディテールで魅せるユニークピース

2024.01.13

「ラジオミール」を前面に打ち出した2023年のパネライ。そのハイライトが、「ラジオミール グイド・パネライ&フィリオ」と命名されたユニークピースだ。驚くべき落札価格も、非凡な完成度を考えれば納得だ。

ラジオミール グイド・パネライ&フィリオ

ラジオミール グイド・パネライ&フィリオ
フィリップスのオークションに出展された、過去作のオマージュ版。好事家向けを強調するためか、かつてパネライに納品していたクオイエリア・メカニケ・ブレイルの予備ストラップが付属する。手巻き(Cal.アンジェラスSF240)。15石。1万8000振動/時。パネライ プラチナテックケース(直径47mm)。5気圧防水。落札価格35万5600スイスフラン。
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]


過去作を再解釈したユニークピース「ラジオミール グイド・パネライ&フィリオ」

 リシュモン グループに加わった1997年以降、パネライはしばしば過去の傑作をリバイバルさせてきた。2023年の復刻版は「ラジオミール グイド・パネライ&フィリオ」。もっともこれは、厳密な復刻ではなく、過去作を再解釈したオマージュモデルとなる。

 1960年に製造されたRef.3646は、ラジオミールとルミノールの過渡期に生まれたモデルだった。ラグがワイヤーからソリッド一体型に改められたほか、ムーブメントも、懐中時計用の16リーニュキャリバー(そのほとんどはロレックス製だった)ではなく、8日巻きのアンジェラス製Cal.SF240に置き換えられた。

ラジオミール グイド・パネライ&フィリオ

シースルーバックからのぞくのは、アンジェラスのクロック用ムーブメントであるCal.SF240だ。約8日間という長いパワーリザーブに加えて、レバー脱進機による高精度は、潜水時計パネライにはうってつけだった。本作が搭載するのは1961年6月製のもの。

 このモデルを再解釈したのが、ラジオミール グイド・パネライ&フィリオだ。フィリップスのオーレル・バックスとアレクサンドル・ゴトビという目利きが関わっただけあって、同作には過去存在したようなディテールが与えられた。例えばラグ。後から溶接したように、あえてケースとの間に隙間が開けられた。また、当時の加工技術を再現したのか、ケースとラグの上面は連続してつながっている。ラグを溶接した後、ケースの上面を研削で整えると、こういう造形になるはずだ。搭載するムーブメントもやはり1961年製のCal.SF240である。

 とはいえ、これはあくまでパネライの最新作だ。ケースの素材はSSからパネライ プラチナテックに変更されたほか、磨きも明らかに高級時計のそれとなっている。また、風防とケースバックには60年代のプラスティック製風防に替えて、サファイアクリスタルがあしらわれる。

 小憎らしいほど詰められたディテールを持つPAM01346。35万5600スイスフランという落札価格も、この充実ぶりを考えればむべなるかな。なお、すべての収益は、ユネスコ政府間海洋学委員会に寄贈された。



Contact info: オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110


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