CASE STUDY①
DUBOIS DÉPRAZ
デュボア・デプラ
ETAのモディファイで大きな成功を収めてきたのが、
“モジュール屋”のデュボア・デプラである。
長年、ETAと密接な関係を誇ってきた同社だが、近年は方針を改めつつある。
具体的には、セリタをはじめとする非ETA製エボーシュの採用と、“中量生産”へのシフトだ。
2016年のEPHJ(高精度時計/ジュエリー、マイクロテクノロジー、医療技術展)で発表された新型モジュール。モリッツ・グロスマン風のリニア式パワーリザーブ表示を持つのはDD12022、扇形のものはDD12021。前者はモジュールを回転させることで、パワーリザーブ表示の位置を自在に変えられる。ベースに推奨されるのはセリタのSW200。 DD12020系のサンプルが搭載されていたのは、ETA2892A2代替機のSW300-1。なお、モジュールを加えた状態での直径は32.59mm、厚さは6.20mm。価格は240スイスフラン(SW 200ベース、仕上げなしの場合)。もっとも、個数と仕上げの種類によって価格は大きく変わる。 テンプ部分の拡大写真。相変わらずETAを好むデュボア・デプラだが、ここ数年はセリタの採用に積極的だ。香箱の真を伸ばすことで、文字盤側にパワーリザーブ表示を付けることに成功した。香箱真を製造するのは、子会社のDPRM。ETAの歯車なども製造する。
方向転換を支える老舗メーカーの品質に対する自信
2016年のEPHJで発表されたクロノグラフモジュールがDD250系である。ベースは名機DD2000系。直径は30mm、厚さは7.6mmである。価格は550スイスフラン(SW200ベース、仕上げなしの場合)。カタログには「魅力的な価格での解決策を提供」とある。 DD2000系の地板を抜き、その上にカラフルなカバーを被せたのがDD250系である。カバーの素材はアルミ製。しかし「穴石を打ち込むと簡単に抜けるので素材の配合を変えた新しいアルミを開発した」(デュボア)とのこと。彩色はアルマイト処理で行っている。
DD250系のサンプルが載るのは、ETA2892A2である。ETAからのエボーシュ供給は年に15%ずつ削減されているが、ベースとしての選択は可能である。「2020年以降、供給がどうなるかは不明だ。しかし、ETAはおそらく、供給を続けてくれるでしょう」(デュボア)。
“中量生産”を可能にしたのが切削を使った大量生産の手法である。プレスは大量生産に向くが、精密な加工はできない。対して、放電加工機は精密な加工はできるが大量生産に向かない。この場合、0.2mmのバイトで切削することにより、同時に100個以上の部品を作れる。
その成果が、毎年のように発表される新しいモジュールに表れている。2016年に同社が発表したモジュールは、パワーリザーブを強調したDD12020系、ムーブメントをスケルトナイズしたDD250系など。いずれもトレンドを意識した機構を持ち、小メーカーの注文に応じられるよう、見た目も自在に変えられる。適応できるベースムーブメントは、ETA、セリタ、ソプロードなど。
パテック フィリップ風の扇形カレンダーを持つのがDD90313である。こちらもベースムーブメントは自由に選べる。
ETAに依存した大量生産から、中量生産にシフトするデュボア・デプラ。方向転換を支えるのは、品質に対する絶対的な自信だ。「私たちは、今やどのベースムーブメントでも同じ品質を与えることができるのです」。(広田雅将:本誌)