VAGABONDAGE I
ヴァガボンダージュ Ⅰ
初出2004年(製品版は05年〜06年)。時ディスクをスライドさせて時分を表示するデジタル時計。55分になると時ディスクは止まり、白い枠が進んで次の時に移動する。アンティコルムの30周年記念として3本作られたモデルの製品版。手巻き。19石。2万1600振動/時。Pt。限定69本(他にバゲットダイヤモンド入りが10本)。参考商品。
初出2004年(製品版は05年〜06年)。時ディスクをスライドさせて時分を表示するデジタル時計。55分になると時ディスクは止まり、白い枠が進んで次の時に移動する。アンティコルムの30周年記念として3本作られたモデルの製品版。手巻き。19石。2万1600振動/時。Pt。限定69本(他にバゲットダイヤモンド入りが10本)。参考商品。
「表示機構を押さえるバネが多いほど、メカニズムの抵抗は増える。ヴァガボンダージュⅡを例に挙げると、規制バネは分の1の位を表示するディスクの押さえにのみ使っている。加えて、分と時表示用のディスクは軽いチタン製だ。Ⅲのディスクはチタンよりもさらに軽くなる」
ルモントワールでデジタル表示の瞬時切替を実現したヴァガボンダージュⅡ。対して初代は、まったく別のアプローチから生まれた。
「ヴァガボンダージュを最初に作ったのは、確か1995年だったと思う。原型は、ある顧客(フランスのジャン・オーブとアンティコルムは記す)に依頼されて作ったユニークピースだった。彼は、これは良い時計だ、いっそ量産したらとアドバイスをくれた。私は企画をカルティエに持ち込み、彼らは乗り気になった。しかし、企画は中止になった」
企画が復活したのは2003年のこと。ジュルヌは、当時アンティコルムのCEOを務めていたオズワルド・パトリッツィに、創業30周年の記念モデルを作ってほしいと依頼された。彼は机の中に眠っていたヴァガボンダージュのプロトタイプを引っ張り出し、結局3本のヴァガボンダージュを製作した。こちらも、機構はかなりユニークだ。
文字盤上に見えるのは、60分かけて1回転する時のディスクとその上に重なった白い枠のみ。例えば、2時になると、白い枠が2の数字の上に重なり、時表示ディスクと重なったまま55分まで回る。しかし、55分になると下のディスクの回転は止まり、上の白い枠だけが同じように動いて、12時位置の3の数字に重なる。3に重なると、再び白い枠と時ディスクは同期し、次の55分まで同調して回る。枠も時ディスクも1時間に1回転するが、時ディスクのみ、55分から60分の間だけ止まるというのが、この機構の重要な部分だ。
(左)裏側から見たムーブメント。2004年の3本は、ムーブメントが真鍮製。しかし合計79本製造された製品版は、18Kゴールドに変更された。あえてフリースプラングを載せていない理由は、「テンプが真ん中にあるため、フリースプラングだと調整が難しい」(ジュルヌ)ため。仕上げは現行ほど優れてはいないが、この時代固有の味がある。 (右)時分を表示するのは、時表示ディスクと白い枠のみ。0分から55分まで同期して動くが、55分になるとディスクが止まり、白い枠だけが60分の位置に移動する。55分から60分の間、レバーがディスクに噛み合い、その回転を止める。中心に見える一部が突起したカムが、レバーを動かすためのサプライズカム。仕組みは極めて簡潔だ。
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