Royal Oak OFFSHORE CHRONOGRAPH [42MM]
1993年から続くエクストララージの原点
ロイヤル オーク オフショア
クロノグラフ [42mm]
1993年に発表されたロイヤル オーク オフショアの第3世代がRef.26470OR。26170の細部を変更したモデルである。2014年初出。自動巻き(Cal.3126/3840)。59石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KPG(直径42mm)。100m防水。405万円。
1993年にリリースされた「ロイヤル オーク オフショア」。企画者は当時のCEOだったステファン・ウルクハートであり、デザイナーはオーデマ ピゲの〝秘蔵っ子〟で、後に著名なウォッチデザイナーとなったエマニュエル・ギュエであった。
彼らふたりの狙いは明確だった。約20年前にリリースされたロイヤル オークを若い世代向けに仕立て直すこと。そのためギュエは、ケースを大きく、分厚く仕立てようと考えた。サイズは42㎜に拡大され、防水性能は100mに向上。「モジュール型のクロノグラフを収めるために」(ギュエ)、ムーブメントを覆う耐磁ケースが加わった。しかしギュエ曰く、4年の開発期間中、半年ごとにプロジェクトを止めるよう要求されたという。「ケースが大き過ぎるし、重いし、コマーシャルでもないと言われた」とギュエは語る。確かに開発が進められた90年代初頭、時計のトレンドは、薄くてミドルサイズの時計だった。
93年のバーゼル・フェアに並んだこの大きな「スポーツウォッチ」に対して、関係者たちの反応もやはり芳しくなかった。「こんな時計が売れるのか?」と尋ねたのは、今やMB&Fを率いるマキシミリアン・ブッサーだった。オリジナルモデルをデザインしたジェラルド・ジェンタの反応は一層激烈で、彼は「ロイヤル オークを破壊した」とオーデマ ピゲのブースに怒鳴り込んできたという。
しかし〝新しいロイヤル オーク〟は、たちまちベストセラーとなった。「玄人の愛好家たちが好む時計」というロイヤル オークのパブリックイメージは、このオフショアで一新されたのである。そのオリジナルに敬意を払うかのように、オーデマ ピゲは今なお、42㎜モデルをラインナップに留める。大きく変わったのは文字盤の意匠程度。しかし技術の進歩を反映して、時計の完成度はいっそう高まった。
(左上)通常のロイヤル オークに比して厚みを増したケースサイド。造形自体は1993年のモデルにほぼ同じだが、リュウズ回りがより立体的に改められた。(右上)拡大したメガ・タペストリー模様。当初、この模様はエンボスのみで施されていた。理由はおそらく、立体的な文字盤を可能な限り軽く作るため。ただし以前はエッジが甘く、仕上げは明瞭とは言えなかった。明らかに改善されたのは26170以降のこと。極めて立体的な造形ながら、きちんとエッジが立った仕上がりを持つ。なお文字盤の仕上げはメッキ。下地の繊細な処理を生かすべく、近年のオフショアはメッキ仕上げの文字盤を好む。(中)ケースサイド。厚さは14.18mmもあるが、重心が低く、腕への接地面積を大きく取ったケース構造のため装着感は悪くない。なお2006年発表の26710以降、プッシュボタンとリュウズはセラミックスに改められた。(左下)エマニュエル・ギュエの後継者が、クロード・エメネゲール。1999年から2003年までの在籍期間中、彼はオフショアに、メガ・タペストリー模様や、ラバー製のベゼルといった新しい試みをもたらした。(右下)1993年から2006年まで製造されたファーストモデルには、耐磁ケースが備わっていた。しかし自社製ムーブメントの採用に伴い耐磁ケースは廃され、シースルーバックが与えられた。