[アイコニックピースの肖像 37]オーデマ ピゲ ロイヤルオーク オフショア

2016.12.02

Royal Oak OFFSHORE CHRONOGRAPH [42MM]
1993年から続くエクストララージの原点

ロイヤル オーク オフショア
クロノグラフ [42mm]

Ref.26401PO。SSケースの6400をPtケースに改めたモデルである。外装の完成度は圧巻だ。2011年初出。自動巻き(Cal.3126/3840)。59石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Pt×セラミックス(直径44mm)。100m防水。695万円。

 ロイヤル オーク オフショアの人気は、1999年の映画『エンド・オブ・デイズ』で決定的となった。主演のアーノルド・シュワルツェネッガーは、ブラックPVDケースの「エンド・オブ・デイズモデル」(Ref.15770)を腕に巻き、世界中の観客を魅了した。この成功が、オフショアのあり方を変えたと言えなくもない。以降オフショアはさまざまな限定モデルを加えるようになり、一部のモデルはケースサイズを拡大した。有名なのはふたつの限定モデル、2003年の「T3」(直径48㎜)と07年の「アリンギ」(直径44㎜)だろう。もっともオーデマ ピゲは、際限ないケースの拡大には懐疑的だった。直径44㎜サイズのケースがレギュラー化されたのは、実に11年のことである。

 1993年から現在に至るまで、オフショアは複数回のリファインを受けている。ムーブメントが自社製に置き換わり、耐磁ケースが廃された2006年のものが最大の変化だが、11年の手直しも大きな変化と言える。後者で加わった44㎜モデルは、オフショアの特徴であるマッシブさをより誇張した試みだった。ベゼルにはブラックセラミックスが与えられ、ふたつのプッシュボタンはスクエアに変更されたほか、リュウズガードの形状はよりエッジが強調された。その造形は、かつての限定モデルの要素を、巧みに取り入れたものといえる。もっとも限定モデルの造形を量産モデルに転用できた背景には、加工技術の進歩がある。とりわけ、ベゼルとプッシュボタンで用いられた「割れないセラミックス」は、ケースメーカーの買収が大きな一因だった。量産型オフショアで初めて採用されたプラチナケースも、理由は同様だ。オーデマ ピゲが進めてきたケースの内製化と工作機械の刷新。本作は、そういったオーデマ ピゲの充実ぶりを示すモデルと言えるだろう。

(左上)極めて切り立ったエッジを持つRef.26401。ステンレススティールでさえこれほど角の立ったケースを作るのは難しいが、これは難削材のプラチナである。優れた工作機械があればこその仕上げだが、ケース前面の筋目仕上げは既存のモデル同様、職人が手作業で施している。その水準は写真が示す通りだ。(右上)ブルー文字盤。26470同様、立体感とエッジを巧みに両立している。なおタペストリー模様が際立って見えるのは、文字盤の仕上げにメッキを採用したため。(中)ケースサイド。プラチナケースのため時計はかなり重いが、相変わらず装着感は良好な部類に入る。ただ個人的な好みを言うと、リュウズのエッジはやや立ち過ぎている。もう少し角を落とした方が、指当たりは改善されるだろう。(左下)拡大した文字盤。立体感を強調するため、オーデマ ピゲはオフショアの文字盤に、初代で採用されたギヨシェではなくエンボス仕上げを用いてきた。しかし切り立ったタペストリーのエッジを見る限り、近年その水準は大きく高まった。下地がわずかに荒れて見えるのは、仕上げの際に微粒子のパウダーで磨くため。(右下)搭載ムーブメントは、自社製のCal.3120にモジュールを加えたCal.3126/3840。クロノグラフの搭載に伴いトルクは増強され、パワーリザーブは約10時間短くなった。

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