名門オークションハウス「フィリップス」によるチャリティーオークション「ザ・ニューヨーク・ウォッチオークション ナイン」に出品されたゴールド製G-SHOCK「G-D001」。日本時間2023年12月12日の昼、オークションの結果が出た。その詳細を報告する。
https://www.phillips.com/detail/casio/NY080223/79
[2023年12月16日公開記事]
最高落札予想価格の約3倍、約5700万円で落札!
フィリップスが事前に提示していた落札予想価格は7万USドルから14万ドル。だが、注目の最終落札価格は何とその約3倍近い40万50ドル。現時点での為替レート(1USドル=142.27円、2023年12月15日13:50UTC)で換算すると約5692万円になる。最高落札予想価格の3倍近い高値が付いたのだ。
デザイン、外装、ムーブメントのすべてで「新しい挑戦」を試みたプレミアムでラグジュアリーな新世代G-SHOCK「G-D001」。このオークションはその第一歩を飾る、期待以上の記念すべき落札価格になったと言えるだろう。
https://www.phillips.com/article/135703267/
地板の美しい装飾も、こだわりのナノ加工シリコン製歯車もまるで機械式
本コラムの12月15日公開記事では「真正面から見たその姿は、機械式のスケルトンウォッチ、そしてケースサイドから見ると、腕時計というよりも生き物の骨格やクルマのスペースフレームを思わせる」とお伝えした。ここまで歯車輪列を文字盤側から見ることができるG-SHOCKは史上初だろう。
ケースの中で時を刻む時計モジュールも、YouTubeの「G-D001」の公式動画からの情報と画像によれば、これまでのG-SHOCKとはまったく違う。多くのディテールが高級時計の機械式ムーブメントに近い。
2023年11月9日、米ニューヨーク市マンハッタンで開催された「G-SHOCK 40周年記念イベント ショック・ザ・ワールド ニューヨーク2023」でのカシオ計算機シニアフェロー伊部菊雄氏のプレゼンテーションでは、美しい渦巻き状の装飾が施された金属製の地板が大映しになった。この地板には、機械式ムーブメントと同様の人工ルビーが55個(石)セットされている。これはもちろん、歯車輪列を保持する軸受けだ。また輪列を構成する歯車の加工精度や美しさに徹底的にこだわったこと。一部の歯車が半導体製造と同じフォトリソグラフィーおよびマイクロエッチングなど、ナノ加工技術を使って作られた超精密な仕上げのシリコン製だということも明かされている。こうした点も最先端の機械式ムーブメントのようだ。
時分針による時刻表示に加えて、クロノグラフ積算計など3つのインダイアルはもちろんアナログ表示。さらに6時位置にある日付表示も、数字の周囲を打ち抜いたディスクを使ったアナログ式だ。
そして、この腕時計を動かす時計モジュール。世界6局の標準電波を受信して時刻を自動修正する「マルチバンド6(シックス)」機能、ワールドタイム機能、ストップウォッチ機能を備えたクォーツ式腕時計モジュールのエネルギー源となるソーラーセル(太陽電池)は、何とこの日付表示ディスクの下にあり、日付表示ディスクの数字の隙間から差し込むわずかな光で発電するのだという。これはできるだけソーラーセルを目立たせないための工夫だろう。
ふつうの時計モジュールなら、またふつうのソーラーセルなら、この構造では電力不足になってしまう。だが「G-D001」は、超省電力設計の新開発時計モジュールと、人工衛星などに採用されている超高効率のガリウム系ソーラーセルでこの問題をクリアしている。
AIを活用したケースとブレスレットのデザイン。また歯車輪列とディスクによるアナログ表示機構を採用した新しい時計モジュール。
このコラムを読んでいただいている時計好きの読者の方なら、筆者と同様にYouTubeのこの公式コンテンツで解説されているこのふたつについて、もっともっと深く知りたいと思うだろう。まずは以下のYouTubeの公式コンテンツをご覧いただきたい。
さらに筆者は近々、伊部菊雄シニアフェローをはじめ、この「G-D001」の開発を担当したチームの取材を予定している。さらなる詳細は後日、改めてご報告したい。
https://www.webchronos.net/features/105868/
https://www.webchronos.net/features/104299/
https://www.webchronos.net/comic/34335/