全国のチューダー販売店スタッフに、長年の愛用をおすすめしたいメンズモデルを調査。2023年新作からロングセラーまで、幅広くラインナップする結果となった。第1位は、日本人に合った絶妙なサイズ感で支持を集める「ブラックベイ 58」だ。
Text and Photographs by Tsubasa Nojima
2023年12月19日掲載記事
ブランドを熟知した全国の販売店スタッフが、BEST5を厳選!
チューダーが日本上陸を果たしたのは2018年10月のこと。それから5年あまりが経過した今、日本市場における同社の存在感は年々増し、今やミドルレンジを代表するブランドのひとつとして認知されるに至った。正規販売店は北海道から鹿児島まで全国に拡大し、実機を見る機会が多くなったことも喜ばしい。昨今では、一時期のような品薄も解消されつつあり、幅広いラインナップから自分好みの1本を選ぶことができるようになった。
しかし、あまりにも多い選択肢の中から1本を選び抜くのは、なかなか難しいのではないだろうか。特にチューダーでは、主力の「ブラックベイ」コレクションのバリエーションが非常に豊富であり、その違いを正確に理解するのは一筋縄ではいかないからだ。
そこで、チューダーを知り尽くした全国34の販売店のスタッフを対象にアンケートを取り、長年の愛用をおすすめしたいメンズモデルBEST5をフル型番で選んでもらった。その結果を集計。1位を5pt、2位を4pt、3位を3pt、4位を2pt、5位を1ptとし、順位を決定している。なお、同点の場合は1位を選んだ人がより多い方を優先し、ダイアルのカラーバリエーションは別モデル、ベルトのバリエーションは同一モデルとして扱っている。
第5位: ブラックベイ M79230N
ブラックベイの基本モデルである41mm径ケースモデルが第5位にランクイン。落ち着いた印象のブラックダイアルは、様々なシーンでも着用しやすい。
自動巻き(Cal.MT5602)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。53万3500円(税込み)。
第5位にランクインしたのは、41mm径のケースとブラックカラーのダイアルを組み合わせた、「ブラックベイ M79230N」だ。今では多様なケースサイズが用意されているブラックベイ。しかし、2012年の初登場からしばらく、41mm径ケースのみのラインナップであったことを考えると、本作はブラックベイとして最もオーソドックスなモデルと言えるだろう。
ブラックカラーのダイアルとベゼルインサートを採用し、ゴールドカラーの針とインデックス、印字によって、ヴィンテージ感を創出している。このカラーリングこそ、復刻モデルとして誕生したブラックベイの魅力を強く感じることができるディティールだろう。リベット風のブレスレットもレトロな印象を与えることに一役買っている。
搭載するムーブメントは、傘下のケニッシ社によるCal.MT5602だ。優れた堅牢性に加え、C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した高い精度と、約70時間のパワーリザーブを備えている。
ムーブメントはそれなりに厚みを持っているため、それに伴ってケース自体も厚くなっている。しかしそのことが、かつてのチューダーに見られる“カマボコ”型のケースを彷彿とさせる結果となった。往年のファンにとっては、歓迎すべき横顔であるはずだ。もしボリューム感が気になる場合は、「ブラックベイ 58」や2023年新作の「ブラックベイ 54」などの小ぶりなモデルを選ぶと良いだろう。
レザーストラップも似合うレトロなデザインだが、逆回転防止ベゼルや針とインデックスの蓄光塗料、200m防水を備えた、本格的なダイバーズウォッチである。
第4位: レンジャー M79950
BEST5中、唯一ブラックベイコレクション以外からランクイン。視認性に特化したシンプルなダイアルは、まさに長年愛用するに相応しい、飽きの来ないデザインだ。取り回しやすいサイズ感と高性能なムーブメントも魅力。
自動巻き(Cal.MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。100m防水。41万5800円(税込み)。
2022年に発表された「レンジャー M79950」は、英国海軍による北グリーンランド遠征探検70周年を記念したモデルだ。この探検では、1952年から54年までの期間、チューダー「オイスター プリンス」の性能調査を行い、過酷な状況における同社の時計の信頼性を証明した。
4つのアラビア数字インデックスと矢印型の時針を組み合わせたデザインは、60年代に登場し、現在ではコレクターズアイテムとしても知られる「Ref.7995」をモチーフとしている。日付表示はなく、マットなブラックダイアルとコントラストを成す、ホワイトの針とインデックスを持つ本作からは、正確な時刻を表示し続けるという探検用時計に求められる信頼性に特化したコンセプトが感じられる。
ムーブメントは、シリコン製ヒゲゼンマイを採用したCal.MT5402を搭載する。約70時間のパワーリザーブや、耐衝撃性に優れる両持ちタイプのテンプ受けなど、極限の環境にも耐え抜く性能を備えている。もちろん、C.O.S.C.公認クロノメーターを取得しているため、精度にも優れている。
ムーブメント自体が比較的薄く、またケースの直径が39mmに抑えられているため、装着感に優れていることも本作の魅力だ。回転ベゼルがないためにすっきりとしたデザインを持ち、過度なスポーティさがないことで、オンオフ問わず幅広いシーンで活躍してくれる。ベルトはステンレススティールブレスレットやレザーストラップ、ファブリックストラップが用意されている。シンプルで見やすく、かつ丈夫な時計を探しているのであれば、本作は間違いのないチョイスだ。
第3位: ブラックベイ M7941A1A0RU
マスタークロノメーターを取得した、ハイスペックな最新作。新たに用意された5列リンクブレスレットは、これまでのブラックベイとは一味違ったエレガントな印象を与える。
自動巻き(Cal.MT5602-U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。58万8500円(税込み)。
第3位の「ブラックベイ M7941A1A0RU」は、 2023年新作であるとともに、チューダーの先進性を表すモデルだ。本作は、従来の41mm径ケースのブラックベイに代わるものであり、METASによるマスタークロノメーター認定を受けている。この認定を取得するためには、異なる温度や姿勢、パワーリザーブ残量での精度テストや、1万5000ガウスもの高磁場への耐性をはじめとする様々な検査に合格することが求められる。本作が現行の機械式腕時計として突出したスペックを有していることが、第三者からも認められているというわけだ。
外装面の変化は最小限と思いきや、見た目と数値以上に一新されている。直径41mmのケースは先代モデルより1mm以上薄型化が図られ、わずかにケースからはみ出るようにリデザインされたベゼルによって、時計全体がひと回り小さくなった印象を与えている。また、リュウズのレッドアルマイトのチューブが廃され、側面に刻まれた溝が大きく深くなり、いっそう操作しやすい造形となっている。ちなみに意匠として、秒針がスクエア型からロリポップ型に変更されたことも特筆すべき点だ。
加えて、ベルトの選択肢は大幅に増え、従来の3列ステンレススティールブレスレットに加え、5列リンクブレスレットやラバーストラップまでが用意されている。それまで5列リンクのブレスレットは、スムースベゼルを持つシンプルなブラックベイに採用され、ラバーストラップはモダンなダイバーズウォッチである「ペラゴス」に採用されていた。大幅なスペックアップを果たしただけではなく、ベルトの選択肢が増えたことは喜ばしい。
2012年、最初に登場したブラックベイは、ブランドカラーであるレッドのベゼルを採用したモデルであった。ブルーやブラックのモデルは、後年ラインナップに加わったものだ。最初にレッドのモデルがマスタークロノメーター化を果たしたのは、依然として同社がこのカラーリングを重要視している証拠だろう。本作であれば、チューダーの魅力を存分に味わうことができるはずだ。
第2位: ブラックベイ セラミック M79210CNU
ミドルケースに軽量かつ耐傷性に優れるセラミックを採用しながらも、手頃な価格帯を実現。高い硬度を持つセラミックスでありながらも、サテンとポリッシュにしっかりと仕上げ分けられている。マスタークロノメーターを取得した高い耐磁性は、磁気に溢れた現代の生活でも安心できる。
自動巻き(Cal.MT5602-1U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。セラミックスケース(直径41mm)。200m防水。66万5500円(税込み)。
チューダー初のマスタークロノメーター機である「ブラックベイ セラミック M79210CNU」。METASによる認定を取得した、優れた実用性は言うまでもなく、本作の最大の特徴はミドルケースにセラミックスを採用している点にある。
セラミックスは、軽量かつ高い硬度を持ち、耐アレルギー性にも優れた素材だ。まさに時計の外装として理想的な素材のひとつであるが、その製造には高度な技術が要求される。セラミックスは原料を焼成して作るため、焼成後の収縮を考慮する必要があるのだ。加えて高い硬度は、着用時には傷が付きにくいが、製造時には仕上げを与えることが難しいという二面性を持つ。しかし本作では、高精度なセラミック製ミドルケースの製造に成功し、ダイバーズウォッチとして使うことが可能な200m防水の気密性を確保している。ヘアラインとポリッシュを組み合わせ、立体的に仕上げられていることにも注目だ。
ケースからベルトに至るまで、カラーリングはオールブラックに統一されている。逆回転防止機構が搭載されたベゼルは、ステンレススティールにブラックPVDを施し、セラミックス製のインサートを組み合わせている。バックケースとリュウズも同様にステンレススティールにブラックPVDを施したものだ。ブラックベイコレクションとしては珍しくシースルーバックを採用し、マニュファクチュールムーブメントCal.MT5602-1Uを鑑賞することができる。
レザーとラバーを組み合わせたハイブリッド素材のベルトが装着されており、クリームカラーのラインが入ったファブリックストラップが同梱される。
第1位: ブラックベイ 58 M79030N
2018年の登場以来、根強い人気を誇るブラックベイ 58。幅広いサイズの手首にもマッチする39mm径のケースを採用する本作は、ブラックベイならではのヴィンテージ感も味わうことができる。
自動巻き(Cal.MT5402)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。200m防水。51万9200円(税込み)。
ブラックベイ 58は、1958年に登場し“ビッグクラウン”の愛称で親しまれる「Ref.7924」にオマージュを捧げるコレクションだ。その特徴は、39mm径という控えめなサイズ感にある。加えて、比較的薄型なムーブメント、Cal.MT5402を採用することによって、ケースの厚さも抑えている。41mm径のスタンダードなブラックベイに比べると、性別や体格を選ばない万人向きの仕様だと言えるだろう。
ブラックベイには様々なケースサイズのモデルが存在するが、購入を検討する際には、単にケース径だけで判断しないようにしたい。搭載するムーブメントによって、スペックだけでなく装着感や見た目の印象も変わるからだ。
ダイアルとベゼルはブラックカラーだが、第5位の41mmケースモデルとは異なり、ベゼルのスケールにもゴールドカラーが取り入れられている。これによって、ヴィンテージテイストをより強く感じることができる印象に仕上がっている。
欧米人に比べて小柄な体格である日本人は、当然ながら腕周りも比較的細く、一般的に小ぶりな時計の方が腕に収まりやすい。すっかり定番化した感のあるブラックベイ 58だが、こうしてランキングとして見ると、その日本市場での適合性と完成度の高さが、ブランドを熟知したスタッフからも認められているということが分かる。ステンレススティールケースモデルの他、ブラックベイ 58には、ケース素材に18Kイエローゴールドやブロンズ、シルバーを採用したモデルも存在する。選ぶ楽しみや集める楽しみも提供してくれる懐の深いコレクションだ。
https://www.webchronos.net/features/100716/
https://www.webchronos.net/features/72594/
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