日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2023年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は時計・宝飾ジャーナリストとして活躍する野上亜紀が、男性にとっても女性にとっても実用的に身に着けられる、〝ジェンダーレスなサイズ感〟のモデルを5本、選出した。
1位: パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF オートマティック」
自動巻き(cal.PF770)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS✕18KRGケース(直径36mm、厚さ8.6mm)。100m防水。376万2000円(税込み)。
「トンダ」コレクションに加わった直径36mm。文字盤のアイコニックなギヨシェやベゼルの繊細な刻みというトンダならではの美しさをそのままに、デイトなしの2針で品格漂うドレスウォッチへと仕立てた。アプライドインデックスのパターンのほかにバゲットカットを配したタイプもあり、ダイヤモンドを配しながらもその主張しない輝き、バランス力が実に秀逸。
2位: オーデマ ピゲ「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック」
自動巻き(Cal.5900)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径38mm、厚さ9.6mm)。3気圧防水。440万円(税込み)。
代表作「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」の直径38mmは、ここ数年のレディースウォッチにおけるジェンダーレス化の傾向をまさに物語るモデルともいえるのではないだろうか。細やかな意匠が美しい文字盤を彩るパープルやアイボリーという色彩のチョイスも実に絶妙で、そのスタイリッシュな佇まいが今という時代にふさわしい。
3位: ロンジン「ロンジン マスターコレクション」
自動巻き(Cal.L893)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38.5mm、厚さ10.2mm)。3気圧防水。37万8400円(税込み)。
彫り込んだアラビアンインデックスが個性的なシリーズから、38.5ミリの小径化を叶えたスモールセコンドモデル。シルバー、サーモン、アンスラサイトの3色があり、それぞれの色に合わせて文字盤の仕上げを変えているという点も素晴らしい。ムーブメントも含めてそのコスパの良さも見逃せない。
4位: グランドセイコー「ヘリテージコレクション 44GS 手巻きメカニカル」SBGW299
手巻き(Cal.9S64)。24石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径36.5mm、厚さ11.6mm)。日常生活用強化防水。69万3000円(税込み)。
グランドセイコーの象徴的な「44GS」を進化させた「44GS現代デザイン」。コレクション最小の直径36.5mmに、2023年は写真のブルーダイアルが加わった。目覚ましいブルーの彩りと見事な造形美で、ジュエリーがなくても上品な輝きを存分に味わうことができる。薄くコンパクトで、女性の腕にもふさわしい44GSに出合うという、大きな喜びを与えてくれた時計。
5位: ブライトリング「ナビタイマー オートマチック 36」
自動巻き(Cal.ブライトリング17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径36mm、厚さ11.4mm)。3気圧防水。63万2500円(税込み)。
5番目はちょっと迷ったが、女性用として登場した新作「ナビタイマー」の直径36mmに。2020年に直径35mmが出たのも記憶に新しいが、今回は32mmも加わってさらにカラフルになった。前作同様クロノグラフではなく、日常に使いやすいシンプルな3針モデルながらもナビタイマーのアイコニックな回転計算尺を残し、各ディテールを女性向けに見直すことで、よりすっきりとした、スレンダーなデザインへと落とし込んだ。昨今需要が伸びているジェンダーレスなサイズ感と、女性向けのアプローチが興味深い。
総評
ここ数年、レディースウォッチのバリエーションは非常に大きな広がりを見せている。身を装うジュエリーに匹敵する宝飾化の傾向はすでに定着したものでもあり、改めて2023年を振り返ってみると、華やかなジュエリーウォッチの一方で、男女問わず身に着けることができるジェンダーレスなサイズ感が実に増えたように思う。ということで、ここではレディースモデルも含めたベスト5とは言っても、この一年を統括するような、男性にとっては小径化、女性にとってはなじみよく手首に主張するサイズとなった実用的なモデルをテーマとして何本かチョイスした。女性用の腕時計が、新たなステージへ向かいつつあることを指し示してくれたモデルでもある。
選者のプロフィール
野上亜紀
時計・宝飾ジャーナリスト。『クロノス日本版』『クロノスファム』をはじめ、専門誌や女性誌、ライフスタイル誌など、幅広い媒体で編集および執筆を行なっている。ジュエリーやレディースウォッチのみならず、メンズウォッチにも造詣が深い。
https://www.webchronos.net/features/107103/
https://www.webchronos.net/features/107061/
https://www.webchronos.net/features/106974/