空前の時計バブル期に、Gressive編集長の名畑政治が選ぶ新作モデルとは?【2023年発表の時計ベスト5】

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2023.12.30

日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2023年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は、ブランド腕時計の正規販売店紹介サイトGressiveで編集長を務める名畑政治が、「空前の時計バブル期」であった23年、注目する新作モデルを5本選出する。

名畑政治 2023年新作モデル ベスト5


ロレックス「パーペチュアル 1908」

ロレックス パーペチュアル1908

ロレックス「パーペチュアル 1908」
自動巻き(Cal.7140)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約66時間。18KYGケース(直径39mm、厚さ9.5mm)。50m防水。

 タイムレスな魅力が宿る新たな名作。初代エクスプローラーを思わせるシンプルな飛び数字ダイアルと控えめなフルーテッドベゼル、シースルーバックなどが調和し、新たな魅力を獲得した。


ショパール「L.U.C 1860」

ショパール「L.U.C 1860」
自動巻き(Cal.L.U.C 96.40-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径36.5mm、厚さ8.2mm)。30m防水。346万5000円(税込み)。

 ギヨシェダイアルの美しさが際立つシンプルな3針モデル。ステンレススティールのケースにギヨシェを刻んだサーモンピンクのダイアル、これにグレーのストラップを合わせたウルトラ・ハイセンスなモデルだ。


クロノスイス「デルフィス オラクル」

クロノスイス「デルフィス オラクル」
自動巻き(Cal.6004)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定50本。682万円(税込み)。

 クロノスイス創業40周年記念にふさわしい新生「デルフィス」。なにより高温焼成エナメルをカーブしたギヨシェダイアルに施した画期的なダイアルの造形美が素晴らしい。


ゼニス「デファイ リバイバル “シャドウ”」

ゼニス「デファイ リバイバル “シャドウ”」
自動巻き(Cal.エリート670)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径37mm)。30気圧防水。95万1500円(税込み)。

 1969年にこのフォルムを誕生させたことが、まず驚き。それをマット仕上げのチタンで再構成したことで、現代というより近未来的なタイムピースとして完成させた点に、さらに驚いた。


ローラン・フェリエ「クラシック マイクロローター エバーグリーン」

ローラン・フェリエ「クラシック マイクロローター エバーグリーン」
自動巻き(Cal.FBN 229.01)。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRGケース(直径40mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水。1182万5000円(税込み)。

 普通のスモールセコンドモデルに見えるが、裏返すと超絶美しいマイクロローター自動巻きムーブメントが搭載されているというギャップが秀逸。江戸の庶民に流行した「裏勝り(うらまさり)」を体現する時計だ。


総評

 新型コロナ禍がようやく収束した2023年は、ある意味「空前の時計バブル期」を迎えたと言っても過言ではないだろう。もちろんブランドによって温度差はあり、予約注文すら不可能なほど売れているブランドがあるかと思えば、なかなか厳しい状況にあるブランドもある。ただ、スイス時計全体としては空前の売上を記録しているというから、驚くほかはない。

 では「そこで注目した新作は?」と問われれば、私の好みとして比較的シンプルで細かな作り込みがなされたモデルを推薦することになる。時代のトレンドもその方向を向いているし、実際、デイトなしのシンプルでやや小振りな3針モデルが多くのブランドからリリースされていることからも、それは明らか。また、今年のベスト5とは直接、関係ないが6月に開催されたパテック フィリップの「ウォッチアート・グランド・エキシビション(東京2023)」も時計界の大きな話題だった。これを見てパテック フィリップが欲しくなった方、実際に購入した方も少なくないはずで、この展示会が時計全体の人気を高めるために大きな影響を与えたことを、2023年の出来事として記憶しておきたい。

 例によって、すべて同列、順位なし。



選者のプロフィール

名畑政治

Kaori Yoshioka(asterisk-agency)Directed  by Yuko Kikuchi

名畑政治

ブランド腕時計の正規販売店紹介サイトGressive編集長にして、日本における時計ジャーナリストの第一人者。1994年よりスイスの大規模時計展示会を取材し続け、得た見識は業界随一だ。クロノス日本版では特集記事の執筆のほか、巻末の「Chronos Top10 Ranking」で選考委員を務める。近年は犬派から猫派に転向。共著に「カルティエ時計物語」。


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