日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2023年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は人気時計系Youtubeチャンネル『ウォッチ情熱応援団』のメインMC、団長が選ぶ時計を紹介! テーマは「デイリーラグジュアリー」、日常に溶け込むラグジュアリーだ!
1位:ルイ・ヴィトン「タンブール」
(時計オタク界隈では)これまで大きく注目されることのなかったルイ・ヴィトンのタンブール。2023年のリニューアルは、度肝を抜くものでした。ただ私、発表された公式画像を見た時は、正直地味だなと思っておりました。同じように思っていた方、きっと多いように思います。
この時計、実機を見ないと分からないことが多すぎるので、まだ実機をご覧になっていない方は、ぜひ見ていただきたいですね。ひとつだけ見どころをお伝えしますと、ケース厚の設計。
ムーブメントの厚みが4.2mmなのに対し、ケース厚は8.3mm。ということは、ムーブメント以外の部分は、4.1mmしかありません。それでここまで立体感のある文字盤デザインを与えているのは、本当に凄い。
その分、裏面のサファイアクリスタルに密着せんばかりに、ムーブメントが背面に寄せられていることにもご注目いただきたい。
自動巻き(Cal.LFT023)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG×SSケース(直径40mm、厚さ8.3mm)。50m防水。376万2000円(税込み)。
2位:パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF オートマティック」
2022年に、GPHGレディースウォッチ部門賞を獲得した「トンダ PF オートマティック」。23年は、SS×18Kローズゴールドのコンビネーションモデルが追加されたことで、選択の幅が増え、よりジェンダーフリーなモデルになったように思います。個人的に、36mm以下の色気ある時計が欲しいと思っていたタイミングでの発表。もしかして縁があるのかも? とも思っています。
約60時間パワーリザーブのセンターローター自動巻きムーブメントを搭載して、ケース径36mm、8.6mm厚という設計はお見事。個性的なデザインのブレスレットを、こんな風にバイカラーにするのか! という驚きもありました。
しなやかで心地よい着用感も魅力。ジュエリー感覚でシャラっと使いたくなる作品。
自動巻き(Cal.PF770)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS✕18KRGケース(直径36mm、厚さ8.6mm)。100m防水。376万2000円(税込み)。
3位:カルティエ「タンク ノルマル」
メゾンの歴史的モデルを限定復活するシリーズ、カルティエ プリヴェ。2023年、その第7作目として発表された「タンク ノルマル」も非常に印象的な新作でした。時計のみを扱うメーカーからは、こういったものは出来上がってこないだろうなと。カルティエの時計は、老舗ジュエラーならではのテイストというか、いわゆる時計時計した時計ではないことが面白いのです。
特にブレスレットの仕様は、カチッともギラッともし過ぎず、でもラグジュアリーであるという、絶妙なバランス感覚を楽しむことができます。また、重心の置かれ方、コマ間の遊び、面取りの具合など、貴金属を身に着けることへの知見の深さも体現された作品だと思います。
手巻き(Cal.070)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約38時間。Ptケース(縦32.6mm×横25.7mm)。3気圧防水。完売。
4位:ベル&ロス「BR 03 ジャイロコンパス」
ケース直径41mmへとダウンサイジングされた新型BR 03の限定モデル・ジャイロコンパス。飛行機が回転する時計。もうそれだけで面白い。こういう発想は、やはり時計時計し過ぎていないからこそのものなのでしょうね。
創業者兼クリエイティブディレクターのブルーノ・ベラミッシュさんに直接伺ったところ、「飛行機をバランスよく動かすのが難しかった」とのことで、実は機械式時計だからこそできるデザインであることにもご注目いただきたい。
自動巻き(cal.BR 302)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。マットブラックセラミックケース(縦41✕横41mm、厚さ10.6mm)。100m防水。世界限定999本。64万9000円(税込み)。
5位:グラスヒュッテ・オリジナル「セネタ・クロノメーター」
船舶時計、マリーンクロノメーター由来のデザインと精度を腕時計で楽しめる、精度マニア垂涎の高精度時計「セネタ・クロノメーター」。リュウズを引いた際、秒針が帰零し、分目盛り単位で時刻調整できる針合わせ機能は、用事がなくても触りたくなってしまいます。
こちらはバリエーションとしての新作になりますが、そこはグラスヒュッテ・オリジナル。単にカラーや素材を変えるには留まっておりません。手作業によって仕上げられる文字盤は、銀粉を塗ってからガルバニックグレーコーティングを施すのだそう。独特の質感、繊細な輝きに目を奪われることでしょう。
同様の加工がケースバックからのぞくムーブメントの3/4プレートにも施されており、既存モデルとの差別化が図られている点もさすがです。内製率が非常に高いブランドだからこそできる、贅沢なバリエーション展開。
手巻き(Cal.58-08)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間40分。18KWGケース(直径42mm、厚さ11.4mm)。5気圧防水。455万4000円(税込み)。
総評
良い時計という切り口ではなく、好き!欲しい!と思えた作品を5つ選んでみました。
あれ?団長、好み変わった?そう言われてもおかしくないチョイスになっております。我ながら、今回はゼンマイ臭過ぎないラインナップになりました。
これまでゴールドの時計は、照れくさく、なんとなく避けてきてしまったのですが、今年の新作は魅力的なものばかりでしたので、チャレンジしてみたい気持ちが強くなってきております。「タンブール」「トンダ PF」「タンク ノルマル」。
この3つに共通しているのは、「デイリーラグジュアリー」日常に溶け込むラグジュアリーです。「ロイヤル オーク」のようなゴリゴリの“ラグスポ”も、もちろんかっこいいのですが、ちょっとした油断も欲しいというのが、今、時計に求める条件になっております。
特にブレスレット仕様の時計の作り込みは、各社どんどん深みを増しており、熟成の域に達しているように思います。その上でそれぞれに個性が発揮されていますから、デザイン面でも、着用感の面でも、自分の好みに合う最高の1本に出合いやすくなってきているのではないでしょうか。
熟練のカルティエは言わずもがな、一発で形にしてきた新生タンブールは、本当にお見事でしたし、「トンダ PF」の36mmモデルは、ゴールドの使い方まで含めて技ありだったと思います。
2024年の新作も楽しみですね! 個人的なトレンド予想は、39mm径以下のデイリーラグジュアリーウォッチと、マリーンクロノメーター系のデザインが注目されるのでは? と思っております。
ウォッチ情熱応援団 団長のプロフィール
腕時計の面白さを伝えるYoutubeチャンネル、『ウォッチ情熱応援団』のメインMC。モノづくりに憧れ、東証一部の電機メーカーへ研究職として就職。しかしマスプロダクトではなく“手仕事”への興味を自覚したことで職人の世界へ転身。“クラフトマンシップへの賞賛”をテーマに年間およそ300本、これまでに1600本を超える動画を投稿。累計再生回数は4450万(2023年12月時点)を超える。
https://www.webchronos.net/features/106045/
https://www.webchronos.net/features/94048/
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