2023年に発表された腕時計から選ぶ、革新的な素材を用いたモデル3選

ステンレススティールやチタン、カーボンなど、腕時計のケースにはさまざまな素材が採用されている。しかし、時に時計ブランドは驚くような素材を用いた時計を発表する。今回は2023年に発表された中から、際立って革新的な素材を用いた腕時計3本を紹介しよう。

アーティア「タイニー ピュアリティ トゥールビヨン カメレオン」

　勝手に色が変わる時計？　まるでSF映画に出てくるようなこの時計は、実存する。スイス・ジュネーブを拠点にする時計ブランドのアーティアは、多結晶分子構造により色が変わるハイテク素材、ナノサファイアをケースに採用した「タイニー ピュアリティ トゥールビヨン カメレオン」で、このアイデアを形にした。

　色の変化の鍵となるのは、光だ。時計にあたっているのが自然光か、人工照明かによって色が変化する。このモデルでは、グリーンとオレンジの間で色が変化する。時計のケースは、特別なサファイアクリスタルのブロックからの削り出しだ。ナノサファイアは2色のペアとなっている。

　スケルトナイズされた約72時間のパワーリザーブを持つ手巻きムーブメントの製作では、アーティアはトゥールビヨンに特化したラ・ショー・ド・フォンのムーブメントメーカー、テロス（Telos）とコラボレーションした。ムーブメントには、17mmの大型ケージとツインバレルを備えたフライングトゥールビヨンが搭載されている。このモデルのほかに、世界限定1本ずつのカラーバリエーションがある。

オリス「プロパイロット アルティメーター」

　カーボンは、時計業界でもケース素材としての地位を確立している。だがオリスが選んだのは、これまでの編み込みやフォージドカーボンとは異なる、新しいプロセスだ。機械式高度計を搭載した「プロパイロット アルティメーター」の新バージョンのために、オリスはスイスの革新的なスタートアップ企業と協力し、カーボンファイバーとPEEK樹脂の層を3Dプリンターで積み重ねてケースを製作した。個々の積層は、ケース側面とラグに線状に見ることができる。

　革新的なケースによって、存在感ある直径47mmの時計の重量は、従来の168gから98gへと大幅に軽量化された。さらなる技術的改良点として、高度計の目盛りは従来の4500mから6000mまでとなった。オリスは標準的な3針ムーブメントをベースに、その周りに空気圧を計る缶と高度表示機構を配している。

ウブロ「ビッグ・バン インテグレーテッド トゥールビヨン フルカーボン」

　ウブロは「ビッグ・バン インテグレーテッド トゥールビヨン フルカーボン」で、初めてカーボンファイバーとテキサリウムの組み合わせをブレスレットに採用した。

　テキサリウムは、グラスファイバーにアルミニウムの薄膜を合わせた複合素材だ。金型内での製造工程でカーボンファイバーの最上層に配され、加熱されるとカーボンと強固に結合する。そのため、剥離する可能性のあるコーティングではなく、強固な素材として融合しているのだ。

　テキサリウムのベースは、表面に極薄のアルミニウム層を施したグラスファイバー・プラスチックだ。この薄い金属素材が、完成すると光に強く反射し、テキサリウムの魅力的なカラーの変化を生み出している。