2023年発表モデルから選ぶ、ムーブメントにも注目したいクロノグラフ3選

FEATUREWatchTime
2024.02.08

メカニカルなデザインと、搭載される複雑な機構で人気のクロノグラフウォッチ。2023年も各ブランドから新作が登場したが、そのうちのいくつかは革新的なムーブメントを搭載していた。今回は、WatchTime編集部が選んだムーブメントにも注目のクロノグラフ3本を紹介する。

Originally published on watchtime.net
Text by Jens Koch
[2024年2月8日公開記事]


A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス・クロノグラフ」

オデュッセウス・クロノグラフ

A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス・クロノグラフ」
自動巻き(Cal.L156.1 DATOMATIC)。52石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42.5mm、厚さ14.2mm)。12気圧防水。世界限定100本。価格要問合せ。(問)A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845

 A.ランゲ&ゾーネ「オデュッセウス・クロノグラフ」の最も独創的な点は、ダイナミックリセット機能を搭載していることだ。この機能は、クロノグラフをリセットする際、従来のようにクロノグラフ秒針が瞬時に帰零するのではなく、計測で進んだ分素早く何周も巻き戻る動作をする、というものだ。もうひとつ、2時位置と4時位置のボタンがリュウズの位置によって機能を変えるという「デュアルファンクション・ボタン」も特徴である。

 これらの機能を実現するために、新型ムーブメントのCal.L156.1 DATOMATICが開発された。このA.ランゲ&ゾーネ初の自動巻きクロノグラフムーブメントはスケルトナイズされ、部分的にブラックロジウムメッキが施されており、高級時計ブランドにふさわしい精緻な装飾によって仕上げられている。また、曜日表示とアウトサイズデイトを備えた文字盤のデザインを保ったまま視認性を確保するため、赤いクロノグラフ秒針を配置し、秒針の先端をダイヤモンドシェイプにしている。

Cal.L156.1 DATOMATIC

Photograph by ERIK SCHIMSCHAR
サファイアクリスタル製のケースバックから鑑賞可能な、Cal.L156.1 DATOMATIC。

 クロノグラフの操作を可能な限り安全にするため、くさび形のプッシュボタンは新しいふたつの機能を備えている。リュウズがねじ込まれた通常位置ではクロノグラフ機能を制御し、リュウズを引き出すと日付と曜日を修正することができるのだ。


グランドセイコー「エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」

テンタグラフ SLGC001

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」
自動巻き(Cal.9SC5)。60石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径43.2mm)。10気圧防水。181万5000円。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617

 グランドセイコーは「エボリューション9 コレクション テンタグラフ SLGC001」で、初の機械式クロノグラフを発表した。モデル名の「テンタグラフ」は高振動(Ten beats per second)、長時間パワーリザーブ(Three days)、自動巻きクロノグラフ機構(Automatic chronograph)に由来する。

9SC5

ムーブメントは、デュアルインパルス脱進機を備えた機械式自動巻きムーブメントCal.9SA5をベースに開発し、ダイアル側にクロノグラフモジュールを追加している。

 ブルーのダイアルには、グランドセイコーの特徴となっている「岩手山」パターンが施されている。これは、雫石にあるグランドセイコーのスタジオから見える、岩木山の稜線からインスピレーションを得たものだ。搭載されるCal.9SC5は、自社製の3針用高振動ムーブメントCal.9SA5がベースとなっている。これはエネルギー効率の高いデュアルインパルス脱進機とふたつの香箱により、クロノグラフ作動時でも約3日間作動する。

 デュアルインパルス脱進機は、ガンギ車から直接テンプに力を伝える「直接衝撃」と、従来からあるアンクルを介してテンプに力を伝える「間接衝撃」の2種類の伝達方式を組み合わせるものであり、動力ゼンマイの力をより効率的にテンプに伝達できるグランドセイコー独自の構造だ。垂直クラッチとコラムホイールを採用し、クロノグラフ作動時の機能的信頼性を確保している。


ロレックス「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」

オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ

ロレックス「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」
自動巻き(Cal.4131)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40.0mm)。100m防水。

 ロレックスの「オイスター パーペチュアル コスモグラフ デイトナ」は、何十年ものあいだ、最も人気のあるクロノグラフのひとつである。1963年に発表されたこのモデルは、2023年に誕生60周年を迎えた。この節目を祝って、素人目にはほとんど分からない、しかし力強いアップデートを果たした。インダイアルのデザインやインデックスが見直され、一体成型のモノブロック セラクロムベゼルを備えるなど、プレミアム感が増したのである。

 またケースにも変更が加えられた。より薄くなり、ラグがさらに下がる形になっている。ムーブメントも改良され、Cal.4130に代わりCal.4131が採用された。このムーブメントは2023年に発表されたもので、エネルギーの消費を抑えるとともに、耐磁性を増したクロナジー エスケープメントや、ムーブメントの心臓部を保護するパラフレックス ショック・アブソーバ、最適化されたボールベアリングなど、革新的な技術が採用されている。

4131

新たに開発されたCal.4131は、ベースとなった既存のCal.4130と同様に、クロナジー エスケープメントにパラフレックス ショック・アブソーバを備え、落下した際の衝撃への耐性を高めている。

 注目すべきは、オイスターコレクションでは斬新なトランスパレントバックが、プラチナモデルとル・マン24時間レースの100周年記念モデルに採用されたことである。この仕様では、ローターはゴールド製となっている。なお、ステンレススティールモデルはクローズドケースバックである。


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