190年の歴史が紡いだ、その豊富なアーカイブを見事な形で現在に受け継ぐサンティミエの雄。1月に発表された新作は、そんなロンジンの巧さが堪能できる逸品だ。
1959年モデル(右)を復刻した、コンクエスト70周年記念モデル(左)。文字盤中央の表示ディスクが、その外周の数字を指し、パワーリザーブ残量を伝える。数字ディスクはリュウズを回すことで任意の場所に移動可能だ。自動巻き(Cal.L896.5)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38mm、厚さ12.30mm)。5気圧防水。59万5100円(税込み)。
Edited & Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年3月号掲載記事]
コンクエスト誕生70周年を記念した「ロンジン コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」
過去のアーカイブから優れた復刻モデルを作ることに定評のあるロンジン。同社が口うるさい時計愛好家たちの支持を得られるのは、オリジナルを忠実に再現する箇所と、現代的なアレンジを加える部分の匙加減が絶妙だからだ。コンクエストの誕生70周年を記念して1月に発表した「コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブ」は、そんな同社の巧さが滲み出ている。
機械式時計黄金期とも言われる1950〜60年代の腕時計を再現する際、議論の的となるのが日付表示の有無やサイズ感だ。コンクエスト ヘリテージ セントラル パワーリザーブの場合、カレンダーはオリジナルと同様に12時位置に置かれている。同作の場合、このカレンダー位置も特徴のひとつのため、この選択に異論はないだろう。感心させられたのが後者のサイズ感だ。新作のケースサイズは59年のオリジナル比で3mm大きい、直径38mmである。しかし、ケースの大径化に伴うデザインの間延び感は皆無だ。それは本ページのメインカットを見ても明らかである。特にベゼルの厚みや時分針の太さ、日付窓の縦横比、各表示要素の配置によって、オリジナル以上に凝縮感を出すことに成功。結果、自然な〝クラシック感〞が演出されている。
では、このモデル最大の見どころである文字盤中央に配されたパワーリザーブインジケーターはどうだろうか。パワーリザーブの最大値が延びたことによるデザイン面での微調整こそ生じたが、2枚のディスクを組み合わせたユニークな表示方法は不変だ。任意の位置にパワーリザーブのスケールを移動できるという、一見、メリットが分からないギミックもしっかりと残している。このバランス感覚こそが、ロンジンの強みなのだ。
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