セイコーの「専用すぎる腕時計展」には “ドキドキとワクワクとオドロキ”が詰まったユニークで面白い時計ばかり

1990年代から時計をずっと取材していると、正直なところ「さすがに飽きちゃったな」と言いたくなるときがある。なぜなら新作時計の80%くらいが「定番」の進化型や「カラーチェンジ」したモデルで、“ドキドキとワクワクとオドロキ”のある時計が少ないからだ。でも今、東京・原宿でそんな時計に出合えるデザインイベントが開催されている。セイコーの「専用すぎる腕時計展」だ。

セイコー「専用すぎる腕時計展」

渋谷ヤスヒト:取材・文 Text by Yasuhito Shibuya
[2024年2月XX日公開記事]


コンサバこそ「時計デザインの王道」

 最初に「新作時計の80%に飽き気味だ」と書いた。でもそれは時計ブランドの「責任」ではない。そうなる理由は市場が、つまり私のような時計ジャーナリスト、この時計コラムをお読みいただいているような時計好きの多くがコンサバだから。機能やデザインが革新的な時計よりも、ロレックスや過去の傑作時計の復刻版のような「中身は昔から大きく進化しても、基本デザインは昔と同じ」時計を何よりも望んでいるからだ。

 特に高級時計の場合は、ファッションアイコンとしての記号性、また簡単に譲渡できる動産としての価値、つまり“投資価値”なるものを考えると、デザインは基本的にコンサバな、ひと目で誰もが「ああ、あのブランドのあの時計だ」と即座にわかる「オーソドックス」な方がいい。これが時計のデザインと、機能の進化と一緒にデザインも必然的に進化するクルマや家電製品のデザインのいちばん大きな違いだ。

 つまり時計業界は残念ながら、これまで存在しない機能やデザインの時計が、もともと生まれにくいところ。でもクリエーターである時計デザイナーが、この状況に安住していいわけがない。

 そこでセイコーウオッチのデザイン部門は、所属するデザイナーが、時計デザインの新しい可能性に挑戦して創り上げた作品を展示する「power design project」というプロジェクトを、これまで途中にブランクはあったものの1年に1回行ってきた。前回のテーマは、過去のモデルを現代風にリデザインする「REBIRTH(リ・バース=再誕生)」だった。


時計デザイナーが“自分が欲しい専用時計”作りに挑戦!

 今回ご紹介する「専用すぎる腕時計展」はその2024年版だ。1月19日(金)から3月31日まで、東京・原宿駅前すぐの場所にある「Seiko Seed(セイコーシード)」で開催中だ。

セイコー「専用すぎる腕時計展」

会場の「Seiko Seed」はJR原宿駅東口、東京メトロ明治神宮前2番出口を出て信号を渡ってすぐ左。IKEAのあるビルの奥にある。

 案内メールをいただいたときは、イベントのタイトルだけを見て「さまざまな分野のプロ向けの特殊時計が見られるのかな」と思っていた。「専用すぎる」の「すぎる」という言葉に秘められた仕掛けを見逃していた。まさにコンサバというかスクエア(平凡)な考え方だ。

 ところが会場に足を運んでみると、うれしいことに予想外の「ドキドキとワクワクとオドロキ」が詰まったユニークで面白い時計ばかり。そのなかには「もし、商品化されたら絶対に欲しい」というものがいくつもあった。


「○○専用」を楽しく自由に解釈!

 今回展示されている作品は全部で7つ。時計デザイナーたちが「○○専用」というテーマを、常識にとらわれないで、のびのびと自由に個人的に解釈して、楽しみながら製作したのだろう。どれも、とっても面白い。

セイコー「専用すぎる腕時計展」

展示は2面構成。表側に作品が、後ろに回るとその時計の開発のきっかけや背景、開発に関わった人の話、試作品などが展示されている。

 ちなみに7つの「専用」作品は、①かくれんぼ専用、②パタンナー専用、③すき焼き専用、④パンダ好き専用、⑤マスキングテープ好き専用、⑥晴れ男専用、⑦両利き専用、というもの。

 このネーミングだけでは、どれほど想像力と直感が豊かな人でも、どんな腕時計なのか分からないと思う。使う目的や機能は、もしかしたら、おぼろげながら想像はできるかもしれない。でも7つの作品にはそれぞれに、期待以上の工夫というかこだわりというか、面白い「作り込み」がある。

どうしても気になる人は、上記の画像をクリックすると見ることができる。

 ここで7つの作品の中身を説明して「ネタバレ」させるのはやめることにする。何しろ展示会はまだ開催中。そんなことをしたら、作品が与えてくれる貴重な“ドキドキとワクワクとオドロキ”が台無しだから。主催するセイコーウオッチも、そう考えているのだろう。プレスリリースには作品の名前と、そのごく一部をクローズアップした写真しか掲載されていない。

セイコー「専用すぎる腕時計展」

どの時計にもユニークなストーリーがある。展示されている7つの時計、あなたのイチ押しはどれ?

 大人から子供まで、どんな人でも楽しめる展覧会なので、渋谷、原宿、明治神宮前、表参道あたりに行く機会があれば、ぜひ足を運んで作品を見て、触れてほしい。時計好きでもそうでなくても、必ず“ドキドキとワクワクとオドロキ”が味わえるはずだから。


展示会概要

展示会:「power design project 2024」
会期:2024 年 1 月 19 日(金)~ 3 月 31 日(日)※会期中無休
会場:Seiko Seed(セイコーシード)
場所:東京都渋谷区神宮前 1-14-30 WITH HARAJUKU 1F
開催時間:11:00~20:00(入場は19:45 まで)
入場料:無料
特設サイト:https://www.seiko-design.com/powerdesignproject2024/


Contact info: セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


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