ウブロ、ブライトリングなど、ジュネーブに拠点を置く7つの時計ブランド訪問の旅

FEATUREWatchTime
2024.02.14

2023年10月、クロノスドイツ版編集部は、スイス・ジュネーブに拠点を置く7つの時計ブランドを訪問した。ウルベルク、ブライトリング、アクリヴィア、ウブロ、アーティア、フレデリック・コンスタント、アルピナだ。今回は、その訪問の様子をレポートする。

Originally published on watchtime.net
[2024年2月14日公開記事]


ウルベルク

UR-102 リローデッド チタニアム

1997年の創業時に発表された「UR-102」コレクションのリニューアル版である、チタニアムモデルの「UR-102 リローデッド チタニアム」。

 今回の旅は、ジュネーブの旧市街にある天井高が低い建物の入口をくぐることから始まった。この建物はウルベルクの本社である。ここから何フロアにも分かれて連なる工房へと向かうのだ。

 ウルベルクは、時計師のフェリックス・バウムガートナーとデザイナーのマーティン・フライが1997年に創業した、独創的な作品で時計業界に挑戦し続けているブランドである。例えば、宇宙船のような外観を持ち、4時間単位の3組のキューブが回転しながら時間表示を行う「UR-220」がある。それぞれの回転体はゼロから60までの分表示が1周したのち、次のものに入れ替わる仕組みだ。

フェリックス・バウムガートナー

クロノスドイツ版編集部を出迎えてくれた、ウルベルクの共同創業者フェリックス・バウムガートナー。

 ウルベルクの工房では、改良や再解釈が加えられていく多くの時計を見ただけでなく、ブランドの歴史とその背後にある時計への情熱を理解することができた。共同創業者のフェリックス・バウムガートナーは、ブランドの未来的な創造が何世紀にも及ぶ時計作りから影響を受けていることを熱心に語り、1997年に発表されたファーストモデル「UR-102」にインスピレーションを与えたものを見せてくれた。時表示の番号がクォーターアワー・マーカーに沿って半円内を移動する、17世紀のイタリア製枕時計である。

 その真逆が2017年に発表された「AMC(Atomic Mechanical Control)」だ。これは高精度の原子クロックと腕時計を同期することで時刻修正するものであり、アブラアン-ルイ・ブレゲのパンデュール・サンパティークに着想を得たものである。


ブライトリング・ブティックとブライトリング・キッチン

ブライトリング・キッチン

レマン湖畔にある、ブライトリング・キッチンでの昼食の様子。

 ランチタイムには、レマン湖畔にあるブライトリング・ブティックとブライトリング・キッチンへと向かった。ブライトリング・キッチンは2023年にオープンしたブランド初のレストランで、ブライトリング・ブティックのすぐ隣にある。最初にブティックへと立ち寄り、最新作の鑑賞と購入を行った。

 まず、ナビタイマーとプレミエの多くのカラーバリエーションが気になったので積極的に試着し、服の色との相性を見た。そのため、予定より多くの時間を費やしてしまった。その後、ブライトリング・キッチンでは気温23℃の晴天のもと、ブライトリング・バーガーと湖畔の眺めを楽しみ、好きな話題に花を咲かせた。

ブライトリング・キッチン

ブライトリング・キッチンで提供された「ブライトリング・バーガー」。

 ブライトリング・キッチンの展開は、最も大きなブライトリングのブティックがある韓国・ソウルのブライトリング・カフェに端を発しており、少しずつ拠点を増やしている。ここは誰もが自由に来店し、モダンレトロなブランドの世界観が漂うなか、時計を見たり購入したりという心理的圧力を感じずに飲み物を楽しみながらリラックスすることができる。

 ブライトリングは心地よい空間を提供することで、ブランドへ親近感を持ってもらうよう注力している。こういった形態は時計業界ではまだ珍しく、新しいものだろう。

ブライトリング・ブティック

ブライトリング・ブティックでは、最新作をチェックした。


アクリヴィア

 レジェップ・レジェピは、スイス時計界における彗星のような存在だ。コソボ出身である彼のクラシックな時計作りへの愛情が、愛好家やコレクターの心を嵐のように奪い去ったのである。年産数はわずか50本〜70本。2023年10月には、ルイ・ヴィトンとのコラボレーションモデル「LVRR-01 クロノグラフ・ア・ソヌリ」の発表で存在感を発揮し、その名を轟かせた。

アクリヴィア

ジュネーブ旧市街にあるアクリヴィアの工房。

 今回のツアーにおいて、レジェップ・レジェピがひとつひとつの時計を作っている、ジュネーブ旧市街にある工房を訪ねることができた。それだけではなく、ブランド哲学の中心にある「可能な限りパーツを内製する」という気風にも触れることができた。そこにはヒゲゼンマイも含まれている。なお、シリコン製ヒゲゼンマイは長い時間が培った伝統的クラフツマンシップに反するとして採用されていない。

アクリヴィア

アクリヴィアの工房にて。

 アクリヴィア訪問中には、ケース製造のスペシャリストとして伝説的な存在であるであるジャン-ピエール・ハグマンに会うことができた。彼はアクリヴィアのケースを、すべて手作りで、デジタル機器を一切使用せず製作している。非常に限定的な生産を目の当たりにする喜びの中で、2本の時計を鑑賞することができたが、撮影は許可されなかった。トゥールビヨン搭載の2針時計「AK 02」と、2017年に発表された「AK 06」である。

アクリヴィア

アクリヴィアの時計職人。


ウブロ

ウブロ

ウブロの工場前で撮影した、今回のツアーの記念写真。

 2日目には、打って変わって大きな製造ラインを持つ時計工場を訪問することになった。アクリヴィアの1000倍、つまり年間約7万本を生産するウブロである。人気の上昇を受けて、CEOのリカルド・グアダルーペは、数年のうちに新しい工場の建設を予定している。

 今回の訪問は、まず前プロダクション・マネージャーのジャン-ピエール・コーラーによる、分かりやすい情報が豊富に盛り込まれたガイド付きツアーから始まった。コーラーはムーブメントの基本的な部品や、真鍮、ステンレススティール、ゴールドの棒状の素材から旋盤で切り出されるケースパーツ、そしてパーツがCNC旋盤や放電加工によってどのように加工されていくかを見せてくれた。個々のパーツは、一部が機械仕上げ、一部が手仕上げとなっている。

ウブロ

工場で生産された、ウブロの数々のコンプリケーションモデル。

 ジャン-ピエール・コーラーは、ウブロ独自のマジックゴールドや鮮やかなセラミックスの製造工程も説明してくれた。また、石のセッティングや電気メッキ部門も見学することができた。他にも、多くの時計職人たちが作業をしている光景を目にした。

 他の多くの時計メーカー同様、ウブロでもコンプリケーションウォッチの組み立ては同じ時計職人が最初から最後まで担当する。これは、例えば同じ50本の1工程をひとりが担当し、次の工程へと渡していくような、量産型で見られるものとは異なる。

ウブロ

ウブロで製造された地板の一部。

 見学では「クラシック・フュージョン」のステンレススティールケースやチタンの定番モデル、ダイヤモンドが配された豪奢な「ビッグ・バン ウニコ サンブルーⅡ」も見ることができた。

ビッグ・バン ウニコ サンブルー

「ビッグ・バン ウニコ サンブルーⅡ キングゴールド ブルー パヴェ」を試着させてもらった。


アーティア

アーティア

工房でアーティアのサファイアクリスタルモデルを鑑賞する編集部メンバー。

 アーティアはスイスのジュラ地方にふたつの工房を持つが、時計のアイデアは、ジュネーブ湖南東のメイニエ村にある目立たない建物から生まれるようだ。アーティア創業者のイヴァン・アルパはここで独創的な時計の数々を思い描き、実現させてきた。数年前はライファイゼン銀行の支店がこの建物にあり、私たちが座っている当時の金庫の扉は厚さが50センチほどもあった。

 アーティアは実にユニークな作品を生み出し続けている。今回は10あるコレクションのうちの7つという多くのモデルを見せてもらうことができ、いずれもブランドの独自性を感じさせるものだった。

タイニー ピュアリティ トゥールビヨン

バイカラーのサファイアクリスタル製ケースを備えた「タイニー・ピュアリティ・トゥールビヨン・ナノサファイア・バイカラー」。

 数学者でもあるイヴァン・アルパは自らのブランドを立ち上げる前に、リシュモンやウブロ、ロマン・ジェロームで経験を積んだ。今回の見学で目にしたのはトゥールビヨンやミニッツリピーターだが、最も魅力的だったのはサファイアクリスタル製ケースであった。ツートーンのものはまさに他と一線を画しており、人工照明から自然光環境下でそのカラーが変化するのだ。

 印象的な訪問の後、湖畔での会食を前に、ジュネーブ市内にあるイヴァンの妻ドミニクが経営するアーティアのブティックにも立ち寄った。


フレデリック・コンスタントとアルピナ

フレデリック・コンスタント

フレデリック・コンスタントとアルピナで時計を鑑賞する様子。

 1883年創業のアルピナにとって、2023年は創業140周年の節目となる。そのため、以前の訪問よりも注目すべき点が多くあった。姉妹ブランドのフレデリック・コンスタントもまた、ピーター・スタースと妻アレッタ・スタースによる創業から35年目という小さな周年を祝っていた。

 ジュネーブ州のプラン・レ・ワットにある工房はリニューアルされ、新しく美しいレセプションデスクと新しいアルピナのコーナーが設けられていた。特徴あるミュージアムでは、ブランドの歴史や生産、哲学について知ることができる。製造現場を見ることもでき、我々の質問にも応じてくれた。

アルピナ

フレデリック・コンスタントとアルピナの工房内。

 2階では時計職人たちの作業の様子を見学し、彼らと言葉を交わすこともできた。最上階では、アルピナとフレデリック・コンスタントの現行モデルを存分に目にした。そこには歴史的キャリバーを搭載したアルピナの角型ウォッチ「ヘリテージ・カレ」も含まれていた。今後数ヵ月のうちに発表されるものもあったが、それについてここで触れることはできない。

ヘリテージ・カレ メカニカル 140イヤーズ

アルピナの「ヘリテージ・カレ メカニカル 140イヤーズ」。

 アルピナのCEOであるオリヴァー・ファン・ランショット・ウブレヒトとの夕食会において、豊かな創造性やクラフツマンシップ、革新性に対する話を聞いた。そして今回の時計の旅が非常に特別なものであったと、私たち編集部一同は心をひとつにした。


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