時計の貸し借りを仲介する「トケマッチ」、じわじわ広がる破綻の影響

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2024.02.13

月額を払えば気に入った時計が借りられるトケマッチ。運営会社が所有者にお金を払って時計を借り上げ、それを希望者に貸すというビジネスモデルは、一見良くできていた。しかし、2024年の1月にトケマッチを運営する合同会社ネオリバースは破綻。見えてきたのは、自転車操業というべき運営体制だった。

広田雅将(クロノス日本版):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[2024年2月13日公開記事]


波紋を広げるトケマッチのサービス停止

 時計のシェアサービスを展開し、2024年1月にサービスが終了したトケマッチ。その苦しい経営具合を象徴するのが、下記のコメントである。

「以前は、時計を質に入れていました。しかし、その後、買い取りを求めるようになりました」。トケマッチの変化を語るのは、ある買い取り店舗のスタッフだ。当初、同社は所有者から預かった時計を質に預けていたが、おそらくは経営状態の悪化に伴い、預かった時計を売却するようになった。

 所有者から時計を借りて又貸しをするため、トケマッチを運営するネオリバースには箱と保証書がない。トケマッチが破綻し、借りた時計の横流しが発覚した後、大手の質屋グループや買い取り業者は、箱と保証書がない時計の預かりや買い取りを拒否するようになった。

 事実、ある買い取り店はこう語った。「現在、盗品が増えているため、箱と保証書がない時計は扱えません」。現在、トケマッチが預かった時計の内、不明になっているのは総額16億円、約1200本。所有者から返却が求められる可能性を考えれば、質屋や買い取り業者が、素性の怪しい時計を避けるのは当然だろう。結果として、時計の二次流通市場は大きな影響を受けつつある。


トケマッチに無断売却された時計は戻ってくるのか?

 二次流通市場に関わるある関係者はこう説明する。「個人的には、トケマッチのビジネスモデルは詐欺だと思っていた。盗難ではなく詐欺だから、被害届の受理まで時間がかかる。その間に売り抜けてしまえば問題ない、という判断なのだろう。もっとも、シリアルナンバーが分かっている時計を日本の市場で売却するのは難しい。無断で売却された時計の多くは、海外に流出したのではないか」。

 ちなみに、多くの時計メーカーは盗難された時計のシリアルナンバーを記録している。ジュエリーなどと違って、盗まれた時計が戻ってくる可能性が高い理由だ。しかし、被害届の受理が遅れ、その間に時計が海外で売却されたら、戻ってくる可能性はかなり少なくなるだろう。

 売却先のひとつになりうるのが、世界最大の時計売買プラットフォームのChrono24(クロノトゥトゥエンティーフォー)だ。同社は「トケマッチの破綻は知っている。現在は情報を集めて対処策を検討中」と説明する。世界中の時計を扱うChrono24でさえも初めての事態、と考えれば、トケマッチの破綻はかなりの大事と言えそうだ。


貸した所有者もメーカーの「ブラックリスト」に!?

 この状況は、貸した所有者にも影響を及ぼしそうだ。ある時計メーカーは、仮に貸した時計が所有者の許可を得ずに売却されても、メーカーとしては介入できないと説明する。つまり、所有者が売却したと見なされる可能性があるわけだ。現在、一部の時計メーカーは、厳しく転売対策を敷いている。そのため、本人と関係ない第三者が時計を売却しても、転売とみなされ「ブラックリスト」に入る可能性は否定できず、今後の購入に影響の出る可能性がある。

 時計の二次流通市場を中心に大きな影を落としつつある、トケマッチの破綻。webChronosでは、引き続いて情報を掲載する予定だ。



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