2019年の「紺碧」でデビューしたインディペンデント、パリス・ダコスタ・ハヤシマ。5年ぶりとなる最新作は、ブランドの飛躍を感じさせる完成度だ。
ブランド第2作目。サプライヤーとの連携強化の影響か、トータルパッケージが劇的に良くなった。他に18KRGケース(世界限定4本)、18KWGケース(世界限定2本)が展開される(いずれも3万スイスフラン)。自動巻き(Cal.PdCH02)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径39mm、厚さ6.9mm)。3気圧防水。世界限定19本。1万2000スイスフラン。
Edited & Text by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年3月号掲載記事]
PdCHの2作目となる「Kagamimochi」
パリス・ダコスタ・ハヤシマ(以下PdCH)は、2019年にデビューした福岡のインディペンデントだ。社名は家族ぐるみで付き合いがあった創業者3人の名前を合わせたもの。彼らは時計が共通の趣味ではあったが、それぞれが時計とは無縁の仕事をしていた。そんな彼らがブランドを興した理由は、3人の理想とする時計を自分たちで作り出し、そして適正価格で販売するためだ。
このPdCHの2作目として発表されたのが「Kagamimochi」だ。薄型ケースにヴォーシェ製のシードを搭載するパッケージングは初作「紺碧」に同じ。しかし決定的に異なるのが、紺碧があくまでPdCHのデザイン・意見をヴォーシェが具現化したモデルだったのに対し、本作は各パーツをそれぞれのサプライヤーに発注し、ひとつのモデルとして作り上げたことだ。スイス時計の伝統的な水平分業制を取り入れた本作の誕生をもって、PdCHはついに本格的な時計ブランドになったと言えるだろう。
(右)ムーブメントの仕上げも劇的に改善された。搭載されるのは初作と変わらずボーシェ製のシード。しかし、受けが細かく分割された「クラシック」に変更され、ダイヤモンドカットだった面取りは手作業に変わった。深く切れ込んだ戻り角はその証しだ。
ブランド初の試みをサポートしたサプライヤーはどこもビッグネームばかりだ。文字盤はショパールの「L.U.C 1860」やフィリップ・デュフォーの「シンプリシティ」を製造するメタレム。ケースとバックルはルイ・ヴィトンのウォッチメイキングアトリエであるラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン。そしてムーブメントやアッセンブリーは引き続きヴォーシェだ。加えて、本作では独立時計師エマニュエル・ブーシェがコンサルタントとして参加し、デザイン面での助言や製品のパッケージングを見ているという。これだけのドリームチームによる共演ながら、販売価格は1万2000スイスフランからと、ブランドの哲学である〝適価〞販売も変わらずだ。
https://www.webchronos.net/features/83374/
https://www.webchronos.net/features/81169/
https://www.webchronos.net/features/103084/