ストーヴァについて知っておきたい5つのポイント。“Bウォッチ”製造の歴史を持つドイツの時計ブランド

FEATUREWatchTime
2024.03.06

1927年に設立されたドイツの時計メーカー、ストーヴァの時計は歴史的な背景を持つ機能的なデザインにその特徴がある。通称「Bウォッチ」をモデルにしたパイロットウォッチをはじめ、シンプルでエレガントな3針時計やダイバーズウォッチ、クロノグラフウォッチなどを展開している。ストーヴァの歴史と、知っておきたい5つのポイントを紹介しよう。

ストーヴァ

ストーヴァが2023年に発表した「テンポラ」(右)と、ベースとなった1968年のモデル(左)。
Originally published on watchtime.net
Text by Martina Richter
[2024年3月6日公開記事]


ストーヴァの歴史

 ストーヴァは、1927年に設立されたドイツの時計メーカーだ。現在、オンラインセールスのおかげで、ストーヴァの時計は世界中どこからでも手に入れることができる。

「STOWA(ストーヴァ)」というブランド名は、創業者であるヴァルター・シュトルツが、自身の名前の最初と最後を組み合わせて名づけたものだ。シュトルツがドイツ南西部シュバルツバルトのホルンベルクに会社を設立したとき、彼はすでに時計店で成功を収めていた。大きな時計の店舗と製造を展開していた父親の跡を継いだのである。

 1935年にフォルツハイムに移転したこの若い会社は、主に自社名義の腕時計の生産においてすでに大きな成功を収めていた。1930年代初頭までは、アールデコスタイルの懐中時計が何点かだけ、コレクションを飾っていた。

 1938年、ビスマルク通り54番地に自社ビルを建設し、ストーヴァの歴史における新たなフェーズが始まった。その翌年には、海軍用の観測時計と大型パイロットウォッチの生産がスタートしている。1940年には軍事経済局の決定により、多くの時計メーカーがいわゆる「Bウォッチ」と呼ばれる観測用時計の生産が義務付けられた。ストーヴァの他に、A.ランゲ&ゾーネやラコ、ヴェンペが同じようにBウォッチの生産を行なっていた。また、スイス・シャフハウゼンのIWCもそのひとつだった。1945年2月23日、ストーヴァの社屋は連合国機によるフォルツハイム空爆で破壊されている。

 家庭内の事情と推察されるが、新しい生産拠点は1951年にバーデン州ラインフェルデンに建設されている。当時のストーヴァのコレクションは多様性に富んでいた。その焦点は現代的なデザインで複雑機構を搭載していない、入手しやすい価格の腕時計だった。とはいえ、週末用のクラシックでエレガントなゴールドウォッチや、ダイヤモンドが配された時計などもカタログに掲載されていた。

 ストーヴァの時計は、80ヵ国以上に輸出された。1970年代には、当時世界最小のアラーム時計であった、電子目覚まし機能付きの機械式アラーム時計を開発している。1974年にヴァルター・シュトルツが逝去すると、会社の経営権はその息子のヴェルナー・シュトルツの手に移った。

 1996年、ヨルク・シャウアーがストーヴァをヴェルナー・シュトルツから譲り受けた。優れた彫金師であり、独学で時計作りを学んだ時計師であった彼は、自らの名前を冠した時計のコレクションで、1995年から時計愛好家の間では知られていた。

 古いムーブメントを探しているなかで、シャウアーはストーヴァに接触し、彼らがもはやブランドを継続する意思を失っていることを知った。そこでシャウアーはブランドの名声を守ることを誓約する書面を交わし、会社と商標権を受け継いだのである。2005年からはオンライン販売や直販に一貫して注力し、ストーヴァは従来の価格帯において再び人気のブランドとなった。

 現在、会社は23名の従業員を擁し、2021年には約3500本の時計を出荷している。2022年、ブランドは95周年を迎えた。同じ年より、ストーヴァはラング&ハイネ、ラインフェルダー、ウーレン・ヴェルケ・ドレスデン、そしてカスタマイズに特化したブラーケンなどのブランドを傘下に置くテンプス・アルテ・グループの一員となった。

 2023年は、ブランドにとって大きな変化があった年だ。ブラーケンと共に、フォルツハイムにある社屋に移転したのである。そして新しいホームページやオンラインショップの開設、1000本以上のストーヴァの時計と一緒にミュージアムに所蔵されている、1968年製の時計をモデルとした「テンポラ」の開発などを行ったのである。

第2次世界大戦中に「Bウォッチ」を製造していた

 A.ランゲ&ゾーネやラコ、ヴェンペ、IWCと同様、ストーヴァも第2次世界大戦中にドイツ空軍偵察機のナビゲーターが使用した通称「Bウォッチ」を製造していた。ドイツ空軍用には、ふたつの特徴的な文字盤デザインがあった。

“タイプA”は文字盤の縁に分表示のインデックスが配されており、1から11までの時間表示には大きなアラビア数字を採用、12時位置にはトライアングルのマーカーが配されていた。“タイプB”も文字盤の縁に分表示のインデックスが配されているが、5分刻みのインデックスがアラビア数字で5から55まで配され、さらに内側には12時位置に上向きの矢印と、1から12までのアラビア数字インデックスを備えたもうひとつの表示部があった。

 ケースサイズは直径55mmで、黒文字盤も特徴のひとつだった。大きなリュウズやムーブメントに違いが見られた。

 ストーヴァはギョームテンプやブレゲヒゲゼンマイ、スワンネック型緩急針、ストップセコンド、コート・ド・ジュネーブ仕上げが施されたブリッジと、受けを備えた20石のユニタス製ムーブメントを使用していた。その視認性の高さから、これらのBウォッチは現在のストーヴァにおける多くのパイロットウォッチのモデルとなった。

ブランドロゴを排した文字盤

フリーガー クラシック 40 ウィザウト ロゴ

「Bウォッチ」のタイプAをモチーフとした、ストーヴァの現行モデル「フリーガー クラシック 40 ウィザウト ロゴ」。自動巻き(Cal.ETA2824-2)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.2mm)。5気圧防水。18万7000円(税込み)。

 1940年代から続く伝説的なパイロットウォッチの歴史を紡ぎ、ストーヴァは現在も文字盤にブランドロゴを配さないパイロットウォッチの生産を続けている。

 現在、ストーヴァで最も人気があるモデルはブランドロゴのないパイロットウォッチだ。これらのモデルは、文字盤にブランドロゴがなくてもすぐにストーヴァの時計だと認識できる。

会社直営のミュージアム

 2008年と2009年にかけて、ストーヴァは自社のミュージアムをオープンした。

 ミュージアムには、1927年のブランド創立から今日に至るまでの1000本以上の時計が収蔵され、同社の歴史を辿ることができる。

多彩なパイロットウォッチやダイバーズウォッチ

フリーガー ヴェリュス GMTクロノグラフ

エントリーモデルである「フリーガー ヴェリュス」を、第2時間帯表示を備えたクロノグラフとしてアップグレードした「フリーガー ヴェリュス GMTクロノグラフ」。自動巻き(Cal.ETA/ヴァルジュー 7754)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約46時間。SSケース(直径41mm)。世界限定100本。国内未入荷。

 ストーヴァは現在、2タイプのパイロットウォッチコレクションを展開している。ひとつは、歴史的なBウォッチをモデルとしたものだ。もうひとつは現代的なアレンジが加えられたもので、追加機能を搭載した「フリーガー ヴェリュス GMTクロノグラフ」などが用意されている。

 フリーガー ヴェリュス GMTクロノグラフは、時刻表示を時分針に集約し、クロノグラフ表示をセンタークロノグラフ秒針とオフセンターに配したした30分積算計に依っている。これに加えて、24時間計には先端がレッドのGMT針とベゼルのエングレービングを用いている。この時計は、2021年にレッド・ドット・デザイン賞を受賞している。

プロダイバー・モーリシャス・リミテッド

ストーヴァのダイバーズウォッチ「プロダイバー・モーリシャス・リミテッド」。

 2006年から、ストーヴァはラインナップに直径42mmのプロフェッショナル向けダイバーズウォッチを加えている。これらのダイバーズウォッチはブラックやグレー、鮮やかなブルーやオレンジ、ライムグリーン、ホワイト、ブロンズなど、多彩なカラーが用意されている。1000m防水でありながら軽量なチタン製ケースを備え、ヘリウムバルブにより飽和潜水を可能としている。ラバーストラップのフォールディングクラスプには、ダイビング用エクステンションを内蔵。搭載されるのは、自動巻きムーブメントのCal.セリタSW200だ。

エレガントなデザインのモデルも展開

マリン・ブロンズ・ヴィンテージ 40 ローマン

ブロンズケースを備えた「マリン・ブロンズ・ヴィンテージ 40 ローマン」。

 パイロットウォッチやダイバーズウォッチだけでなく、ストーヴァにはエレガントな時計もある。その一例が「マリーン」コレクションだ。

 このコレクションは、文字盤の縁にレイルウェイ式のミニッツトラックをあしらい、歴史的なマリーンクロノメーターを想起させるデザイン要素が散りばめられている。インデックスにはアラビア数字に加え、ローマ数字も多く採用されている。



Contact info:チックタック池袋店 Tel.03-5391-8376


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