ロレックスが約153億円の課徴金を命じられる！　自社時計のオンライン販売を禁じたことが原因

2023年末、フランスの競争委員会はロレックスに対し、正規代理店に自社時計のオンライン販売を10年にわたり禁じたことについて、9160万ユーロ（約153億円）という高額な課徴金を科した。ロレックスのオンライン販売は解禁されることになるのだろうか？

フランスの競争委員会がロレックスに約153億円の課徴金

　2023年末、高級時計業界に大きな物議を醸したニュースがあった。フランスの競争委員会は2023年12月19日、ロレックスに対し、正規代理店に自社時計のオンライン販売を10年にわたり禁じたことについて、9160万ユーロ（約153億円）の課徴金を科したのである。フランスの新聞「ル・フィガロ」が報じた。

　ラグジュアリー業界がウェブをコミュニケーション手段として、そして販売手段として考えるようになるまでには、何年もかかった。しかし今日、それは当たり前のこととなった。実際のところ、高級品をオンラインで販売することに、大きな問題はなかったのである。

　かつて店頭で味わえた「ラグジュアリー体験」は、もはや以前ほど神聖なものではなくなっている。若い世代だけでなく年配の世代も、夜中にネットサーフィンをしながら、時計やジュエリー、バッグを気軽にオンラインで購入するようになった。

　一方、一部のブランドは今も商品のオンライン販売を（一部には自社通販でさえ）拒み続けている。時計愛好家から絶大な支持を受けているロレックスもそのひとつだ。

　このような状況について、フランスの宝飾品時計連合（UBH）と、プロヴァンス地方に本拠を置く宝石商のペレグラン&フィルズ社（Pellegrin & Fils）がフランスの競争委員会に申し立てていた。これを受けて、競争委員会は正規代理店による時計のオンライン販売を10年にわたり禁止したとして、ロレックスに9160万ユーロ（約153億円）という高額の課徴金を科した。

　理由は、ロレックス・フランス支社と販売代理店との間の契約で、オンライン販売を禁止する「選択的流通」の条項は垂直的制限に該当し、競争法に違反するとみなされたためだ。垂直的制限とは、メーカーが自社製品を取り扱う流通業者に対し、販売価格や取扱商品、取引先などを制限する行為のことである。

　競争委員会は、ロレックス・フランスの「偽造品や並行取引と闘う必要があるため、オンライン販売の禁止は正当」という反論を退けた。

　さらに、ロレックスの主な競合他社も「同じリスクに直面しているが、一定の条件の下で自社製品のオンライン販売を許可している」と指摘し、「より競争制限の少ない手段によって、模造品等のリスクに対処できる」としている。

　当局が強調したもうひとつの興味深い点は、ロレックスが販売代理店の1社と協力し、ロレックスが真正を認定する中古品をオンラインで購入できるプログラムを開発したということである。「ゆえに、ロレックスの商品のオンライン販売を完全に禁じることは正当化できない」と競争委員会は考えている。

　結論として当局は、時計を含む高級品においてオンライン販売は15年以上も発展傾向にあるにもかかわらず、ロレックスがオンライン販売を禁じたことは、消費者と流通業者を犠牲にして商業流通の一経路を閉ざすことになる深刻な問題だとみなしている。

　当然ながら、ロレックスのオンライン販売の解禁は、最も需要の高いモデルが「ウェイティングリスト」経由でしか流通しないのではなく、オンラインで誰でもが入手できるようになることを意味するものでもある。

　もちろん、ロレックスはこの決定に対し異議を申し立てる可能性がある。今後の動きに注目したい。