創業者であるミシェル・パルミジャーニの誕生日を記念して、毎年パルミジャーニ・フルリエが製作する「オブジェ・ダール」コレクション。2023年の記念モデルとして発表されたのが「オブジェ・ダール・コレクション『ラルモリアル』」だ。唯一無二のムーブメントや繊細なエングレービング、エナメル装飾など、パルミジャーニ・フルリエと最高レベルの職人たちによって作り上げられた傑作である。
手巻き(cal.PF993)。29石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約30時間。18KWGケース(直径58.2mm、厚さ17.5mm)。ユニークピース。価格要問合せ。
[2024年3月21日公開記事]
ミシェル・パルミジャーニの誕生日を記念して作られたユニークピース
「オブジェ・ダール・コレクション『ラルモリアル』」の発表にあたり、パルミジャーニ・フルリエのCEOであるグイド・テレーニはこう語った。
「ラルモリアルという懐中時計は、ただ個性的であるだけではありません。メゾン・パルミジャーニ・フルリエの傑作であり、ある人の非凡な才能の物語、熱意、そして卓越性を内包するものであります。時として、ウォッチメイキングは時間を超える真の芸術作品になり得ることを、この懐中時計は教えてくれます」
そして「この懐中時計は、パラッツォ・デル・テの迷宮に私たちを誘い、ルネサンスの真髄を感じさせるとともに、創業者ミシェル・パルミジャーニの並外れた軌跡を讃えます」と続ける。
このユニークな懐中時計は、パルミジャーニ家の北イタリアの出自と、ミシェル・パルミジャーニのルネサンス、建築、黄金比への深い造形からインスピレーションを得て製作された。
グイド・テレーニはまた、イタリア・マントヴァのパラッツォ・デル・テにある、ルネサンス期に作られた「巨人族の間」の豪華な床面装飾に、ラルモリアルの明白な特徴を認める。そこから全てが始まったのだ。このユニークピースに命を吹き込むため、グイド・テレーニはミシェル・パルミジャーニが愛した「黄金の手(Mains d'Or)」と呼ばれる職人たちを集めた。
本作のムーブメントには、1890年製の機械式ムーブメントが搭載されている。ミシェル·パルミジャーニは、1985年に自身のアトリエである「PMAT(Parmigiani Fleurier Mesure et Art du Temps)」でこのムーブメントを修復し、パーペチュアルカレンダーを追加した。そして今日、クロノグラフ、ミニッツリピーター、ムーンフェイズも搭載している。このムーブメントは、ふたつの時代の「時計製造の融合」といえるだろう。
ミシェル・パルミジャーニ自身によって見事に修復されたこのムーブメントは、それ自体が時計製造の歴史を物語るものだ。ミシェル・パルミジャーニの時計作りという芸術に対する献身を体現する、生きた証なのである。
ミシェル・パルミジャーニ自身によって修復されたムーブメント
1890年製のこのムーブメントには「A. Golay Leresche & Fils」の銘がある。ラルモリアルの鼓動する心臓であり、豊かで複雑な歴史を語る時計界における宝なのだ。もともと懐中時計用として考案されたムーブメントであり、時分表示と秒表示を備えていた。
この歴史的なムーブメントは、前述の通りミシェル・パルミジャーニによって修復され、クォーツ式ムーブメントの台頭によって機械式ムーブメントが絶滅の危機に瀕していた時代のタイムピースとして保存された。
その修復には細心の注意が払われ、表面のポリッシュ仕上げ、手作業で施された面取り、文字盤の模様を反映した手作業のエングレービングが施されている。しかし単なる修復には留まらず、永久カレンダーがムーブメントに組み込まれた。
ラルモリアルのムーブメントは、2.5ヘルツ(毎時1万8000振動)で駆動する。ロービートのゆったりとした鼓動は、時計愛好家には大きな魅力である。このムーブメントに搭載されたミニッツリピーターは、時、クォーター、分をオンデマンドで鳴らす。センター針を備えたクロノグラフも備えている。
この特別なムーブメントはその起源と特徴から、時計製造技術の主要な機能と複雑機構をすべて兼ね備えており、稀に見る複雑さと美しさを備えている。歯車から精巧に彫り込まれたブリッジに至るまで、あらゆる要素がパルミジャーニ・フルリエにおける時計職人の卓越した技術を示している。
グラン・フー・エナメルの裏蓋
ラルモリアルの文字盤はブラウンで「メゾ・ビブラート」をテーマとしたエングレービングが施されている。文字盤を縁取るリングには、ケースとベゼルに施されたアーモンド型のモチーフが反映されている。ホワイトゴールドのカウンターにもエングレービングが施され、全体的なアクセントになっている。
エナメル加工は、エナメルの匠であるヴァネッサ・レッチが手掛けた。彼女の仕事と専門知識は、この時計の細部に至るまで、時代を超越した芸術作品へと昇華させている。直径58.2mmのホワイトゴールド製ケースの裏蓋は、グラン・フー・エナメルの芸術品だ。パラッツォ・デル・テの床にインスパイアされたモチーフは精密にエングレービングされ、それぞれのくぼみはカラーエナメルで満たされている。
この複雑な技法により、微妙なニュアンスと独特のテクスチャーが生まれ、ケースに奥行きを与えている。文字盤に採用されているエナメルの色調は、イエロー、レッド、ブラウンなど、厳選された色味で構成されている。
これらのカラーリングは、パラッツォ・デル・テの所有者であるゴンザーガ家の紋章に由来し、時計にさらなるアーティスティックな要素を加えている。
エディ・ジャケとクリストフ・ブランドニエが手がけたエングレービング
この時計の美しさは、時計業界でその才能と専門性がよく知られているエディ・ジャケとクリストフ・ブランドニエという、ふたりのエングレービング職人の力に依るところが大きい。
ミシェル・パルミジャーニの誕生日に作成されるユニークピースにふさわしく、ケースはパルミジャーニ・フルリエというブランドにふさわしいモチーフで装飾されている。マスターエングレーバーによる技巧は、まさに偉業である。手作業で丹念に施されたラグのモチーフは、奥行きと質感の視覚的効果を生み出している。
ミニッツリピーターを作動させるシステムも、おろそかにはされていない。ケース同様に繊細なエングレービングと完璧なディテールによって、最新の注意を払い仕上げられている。時計のペンダントとリュウズにも、細かくエングレービングが施されているのである。
ラルモリアルのケースに見られるエングレービングは、ジャックマールの懐中時計にある「岩を打つモーゼ」というオートマタからインスピレーションを得ている。
文字盤にもエングレーバーの才能が発揮されている。その装飾は、様式化されたフィレンツェのモチーフだ。
ローラン・ジョリエの手によるホワイトゴールド製チェーン
ラルモリアルのチェーンは、チェーン職人の巨匠であるローラン・ジョリエによるものだ。ローラン・ジョリエは、この職業における最後の職人のひとりであることも記しておく必要があるだろう。
今回のプロジェクトにあたり、30cmのチェーンとラルモリアルの外観を完璧に調和させるため、ローラン・ジョリエはパルミジャーニ・フルリエのチームと協力体制を築いた。
オーダーメイドで作られたホワイトゴールド製のチェーンは、非常にしなやかであり、それ自体が芸術作品といえる。ひとつひとつの部品は細心の精度で手作りされており、面取りとポリッシュ仕上げが施された33個の四角いリンクと33個の楕円型のリンクは、今回のために特別に考案されたものだ。
チェーンのモチーフは、ケースの中央やミニッツリピーターのメカニズムに施されたエングレービングと呼応しており、外観の一貫性を生み出している。
Contact info: パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com
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