さまざまなジャンルの有名人が愛用する時計に着目して紹介する「セレブウォッチ・ハンティング」。今回は、全編をiPhone15 Proで撮影した短編映画「ミッドナイト」が話題の映画監督、三池崇史が長年にわたって愛用しているパネライの腕時計に注目した。
Text by Yukaco Numamoto
[2024年3月24日掲載記事]
国際的に活躍するバイオレンス映画の巨匠、三池崇史
大阪八尾市出身の三池崇史は、現在の日本映画大学である横浜放送映画専門学院に進学し、横浜にあった今村昌平の私塾で映画を学んだ。専門学校時代の先輩からテレビの仕事の手伝いを頼まれ、それを引き受けた流れでフリーの助監督としてさまざまな現場での経験を積んでいった。
コメディ、バイオレンス、ホラーなどジャンルは多岐にわたり、1998年にはTIME誌が紹介する「これから活躍が期待される非英語圏の監督」として選出された。三池崇史の作風は暴力描写が最大の持ち味であり、クエンティン・タランティーノ、イーライ・ロスといった海外の監督にも影響を与えている。「仕事は来たもん順で受ける」「映像化可能であれば、まず何でもやってみる」というポリシーではあるが、仕事が長期になり、他の仕事と関わることを禁止される契約を結ぶハリウッドからの引き合いは自分の気質に合わないという理由で断っているそうだ。
三池作品といえば、ホラー映画を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。中でも伝説的な存在となっているのがアメリカ資本で作成された「インプリント~ぼっけえ、きょうてえ~」である。これは、アメリカのテレビで最も表現規制が緩いとされている有料チャンネルの放送コードにさえ引っ掛かってしまう内容で、北米の放映は見送られることになったことで話題になった作品である。アメリカでホラー映画のオムニバス放映のうちの一作品としてピックアップされたものの、唯一放送できなかった作品ということがジャパニーズホラーの恐ろしさを物語っている。日本での公開も計画されていたが、映倫が審査拒否をしたため、映倫の審査が必要ない単館上映となった。DVD化はされているので常軌を逸した拷問シーンなどに興味のある方はぜひ観てみてほしい。倫理感が吹き飛ぶ発想と表現に三池崇史の真骨頂を見ることができる。
第一線で活躍し、バイオレンスの巨匠と呼ばれる現在でも、新しいことに次々と挑戦しているアグレッシブな姿は、多くの映画監督、俳優にも影響を与え続けている。全編をiPhone15 PROで撮影したという短編映画「ミッドナイト」はiPhoneの撮影だからこそできたアングル、通常のカメラでは実現しなかったシーンなどが盛り込まれており、新鮮な映像を楽しむことができそうだ。
三池崇史が愛用する腕時計はパネライ「ルミノール 1950 エイトデイズ GMT」
2011年の第64回カンヌ国際映画祭で撮影された三池崇史の手元を見ると、そこにはパネライと思われる腕時計が写っていた。また17年の第70回カンヌ国際映画祭で撮影された写真でも、同じパネライの時計を身に着けていることが分かった。
ストラップを替えて愛用しているのは「ルミノール 1950 エイトデイズ GMT」だろう。特徴的なリュウズガードと高い防水機能、直径44mm径の大型ケースが遠目に見ても個性を放つ。滑らかな曲線を描くドーム型の風防を備えた大型ケース、2枚のメタルプレートを重ね合わせて作られたサンドイッチ文字盤などの要素がヴィンテージ風味を醸し出す一本である。1950年代にパネライがイタリア海軍用に作成した当時のケースを再現している。
「ルミノール 1950 エイトデイズ GMT」に搭載されるムーブメントはパネライ初の完全自社製手巻ムーブメントP.2002である。約8日間(約192時間)のパワーリザーブを実現し、短針だけを動かすことができるリュウズ操作を備えている。これは海外へ頻繁に行く人にとってはうれしい機能である。
便利で独自性の高い機能は他にもある。9時位置に配置されている秒針はリュウズを引くと12時位置に戻るゼロリセット機能、同じく9時位置にもうひとつ付いているのが24時間計である。午前と午後が分かりやすいようにAMPMの表示窓もある。
また、パネライの時計は専用工具が付属し、自分でベルトの変更ができる楽しみもある。特にレッドカーペットでのドレッシーなシーンにも、汗をかく昼間にもそれぞれストラップを最適なものに気軽に交換することができるのは、海外でも活躍する三池崇史にとっては魅力のひとつなのではないだろうか。
手巻き(Cal.P.2002)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約192時間。SSケース(直径44mm)。100m防水。
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