多彩な複雑時計はさておき、基幹ムーブメントの種類も決して多くないのに大成功を収めているウブロ。なぜこれほどの支持を集めるのか? CEOのリカルド・グアダルーペは次のように答えた。
広田雅将(本誌):取材・ Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年3月号掲載記事]
若い人たちに親の世代とは違うものを提供したい
「私たちのコンセプトはアート・オブ・フュージョンなのです。他のブランドとはアートや素材、そしてデザインで差別化しています。例えば村上隆とのコラボレーションは、彼とウブロのアートの融合ですよね。こういった特別なコンセプトのおかげで、私たちのブランドを多くの人に知ってもらえたと思っています」
ウブロCEO。1965年、スイス・ヌーシャテル生まれ。スイスのビジネススクールとUCLAを卒業後、ブルガリに入社。7年後、ジャン-クロード・ビバーと知り合い、ブランパンに入社。97年、セールスとマーケティングディレクターに就任。2001年に同社を退社するも、ビバーがウブロのCEOに就任した04年にウブロ入社。プロダクト、マーケティング、販売網の再構築などを行った。12年から現職。
彼はマニュファクチュールの在り方にも意見を述べる。
「私たちはカーボンやサファイアクリスタル、マジックゴールドなどを自社開発しています。多くのメーカーにとって、マニュファクチュールとはムーブメントを作るだけ。しかし、私たちはデザインや素材開発にも投資をしています。大手のメーカーは、こんなリスクは投じたがらないでしょう」
確かに、サファイアクリスタルを、塊から作れるメーカーはウブロをおいて他にない。もっとも、同社は素材だけでなく、さらにムーブメント開発に注力するという。
「私たちはまだ若いブランドであり、ムーブメントの観点からマニュファクチュールのノウハウを構築しているところです。今後5年から10年の間に、この部分をさらに大きくしていきたいと思っています」
今やかなりの規模となったウブロ。しかしそのスタンスは、ニッチではないにせよ、いわゆる大手メーカーとはかなり毛色が異なる。それを象徴するのがサファイアクリスタル素材だ。
サファイアクリスタルでは発色が困難とされていたエメラルドグリーンを実現したモデル。その開発には約2年を要したという。立方結晶構造を持つSAXEMを使うことで、極めて安定した発色を誇る。自動巻き(Cal.MHUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。グリーンSAXEMケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。5気圧防水。世界限定100本。発売時期未定。予価1601万6000円(税込み)。
「私たちはサファイアクリスタルケースを採用するパイオニアとして、複数の素材をかみ合わせるサンドイッチ構造を採用しました。また、ウブロのサファイアモデルは、他ブランドよりも良心的な価格と言えるでしょう。ただし、サファイアは完全ではない。ですから、着用しても大丈夫なように、ケース構造を見直し、すべてをサファイアにすることにしました。大きなブランドは、私たちのようなサファイアケースの時計を市場に出すようなリスクは取らないと思いますよ」
確かに、一貫してサファイアケースのモデルをリリースし続けるウブロの姿勢は、彼の言葉を借りると、「破壊的」ではないか。
現在、そんなウブロの顧客が25歳から40歳を占めるようになったのは当然だろう。
「私たちは常にクールで〝破壊的〞でありたいと願っています。私たちは志のあるブランドであり、若い人たちに、親の世代とは違うものを提供したいのです」。
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