ジラール・ペルゴ 最新作に息づくマニュファクチュールの魂「進化し続けるレジェンド」

2024.04.06

メテオライト(隕石)のプレートをレイアウトする新鮮なデザインワークを駆使し、ジラール・ペルゴを代表する「ブリッジ」コレクションに新しく追加された「フリー ブリッジ メテオライト」。それは、1860年代より続くブランドの象徴的なクリエイションを取り入れながら、現代的な佇まいへと昇華させた、まさに“レジェンドの最進化形”とも呼べるタイムピースである。

フリー ブリッジ メテオライト

フリー ブリッジ メテオライト
1867年に誕生したアロー型ブリッジの意匠を継承しつつ、腕時計全体を現代的なルックスへとリデザインした「フリーブリッジ」。このモデルをベースに、アワーブリッジの両側に稀少なメテオライトのプレートをレイアウトすることで、メリハリの効いたデザインに仕上げている。自動巻き(Cal.GP01800-2085)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径44mm、厚さ12.2mm)。30m防水。361万9000円(税込み)。
奥山栄一:写真 Photographs by Eiichi Okuyama
竹石祐三:取材・文 Edited & Text by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2024年5月号掲載記事]


現代的な佇まいへと昇華させた「フリー ブリッジ メテオライト」

フリー ブリッジ メテオライト

アロー型のネオ ブリッジのみならず、シンメトリックなレイアウトも1867年に発表されたスリー・ゴールドブリッジ トゥールビヨンを踏襲したもの。文字盤側に主要輪列を現す自動巻きムーブメントは立体的にデザインされ、さらにインデックスをフランジに取り付けたことで、その表情はフューチャリスティックな印象を強めている。

 2020年発表の「フリー ブリッジ」をベースに、メテオライトの破片をアクセントとして取り入れた24年の新作「フリー ブリッジ メテオライト」。本作を擁するコレクションがその名称で示している通り、最大の特徴はブリッジだ。もちろんこの新作も、6時位置のアロー型ブリッジと時分針に架かるアワーブリッジを備え、象徴的ディテールを際立たせている。

 しかしなぜ、時計の一部品であるブリッジを強調しているのか。それは、ブランドの草創期から実践されている、革新性を追求する姿勢を明示するためであり、それを象徴するのがブリッジを前面に押し出したタイムピースであるからにほかならない。

フリー ブリッジ メテオライト

12時側にある香箱にはオープンワークのデザインが用いられ、カットアウトされた部分からは主ゼンマイが巻き上がり、ほどける様子を確認できる。
フリー ブリッジ メテオライト

本作で使われているのは、アフリカ南西部のナミビアで発見されたギベオン隕石で、表面にラインが複雑に交錯した独特のパターンを持つ。もちろん、同じパターンはふたつとないため、腕時計に唯一無二の価値を与えられる。

フリー ブリッジ メテオライト

文字盤の6時位置には、橋梁から着想を得たネオ ブリッジが配され、その立体的で力強い造形と、テンプが規則正しく振動する様子を鑑賞できるようにデザインされている。

 歴史を振り返ると、ジラール・ペルゴの起源にはふたりのキーパーソンが存在する。ひとりは時計職人としてさまざまな技術を習得した後、1791年に自らの名を刻んだ時計を製作したジャン=フランソワ・ボット。やがてボットは自身の工房を設立し、専門の職人を含む約180人もの従業員を1カ所に結集させると、懐中時計はもちろん、オートマタやオルゴールなどの美術品も製作。スイスにおける大規模マニュファクチュールの草分け的存在となり、一方で常連客には王侯貴族も名を連ねるなど、世界中から注目を集めた。

 もうひとりが、ラ・ショー・ド・フォンに生まれ、時計師の祖父と彫刻師の父を持つコンスタン・ジラールだ。1847年にジラール社を創業させ、7年後には時計卸売業を営む家庭に生まれたマリー・ペルゴと結婚。社名をふたりの姓を組み合わせたジラール・ペルゴへと改称し、1906年にはボットの工房を買収するまでに成長する。

コンスタン・ジラールとその妻マリー・ペルゴ

現在のジラール・ペルゴの礎を築いたのが、コンスタン・ジラール(1825-1903/左)と、その妻であるマリー・ペルゴ(1831-1912/右)。時計製造の帝都とされるラ・ショー・ド・フォンで生まれたジラールは、熟練時計師の下で研鑽を積んだ後、22歳で自身の会社を設立し、結婚後に社名をジラール・ペルゴに変更した。ジラールがとりわけ魅了されていたのがトゥールビヨンで、時間をかけてこの機構を研究すると、1867年には自身のアイデアを盛り込んだスリー・ブリッジのトゥールビヨン懐中時計を完成させた。

 そんなコンスタン・ジラールが時計製造において注力したのが、トゥールビヨンだ。ジラールは時間をかけてこの機構を調べ上げたうえで、ムーブメントのデザインやパーツ形状に独自のアイデアを加えた。こうして1867年に誕生したのが、ムーブメントに並行した3枚のニッケル製ブリッジを取り付けたトゥールビヨンであり、さらに89年のパリ万国博覧会ではブリッジをアロー型に変更し、素材にはゴールドを用いたスリー・ゴールドブリッジトゥールビヨン「ラ・エスメラルダ」を出品。この時計が金賞を受賞したことでジラール・ペルゴの評価は一気に高まり、以後、独創的な意匠はブランドのアイコンとして継承されていく。

ラ・エスメラルダ

1867年に発表されたトゥールビヨン懐中時計は、ニッケル製のブリッジが用いられていた。その後、1889年のパリ万国博覧会に出品され、金賞を受賞したのが写真の「ラ・エスメラルダ」である。このトゥールビヨン懐中時計は、ブリッジ形状をアロー型に変更し、さらにブリッジの素材にゴールドを用いることで、より豪奢な佇まいへとブラッシュアップさせたものだ。3つのブリッジを大胆に配置するのみならず、ムーブメントをシンメトリックにレイアウトするなど、均整の取れたデザインで一層完成度を高めた。

 事実、クォーツ時計の台頭が著しい1970年代後半に、機械式時計への回帰をいち早く決断したジラール・ペルゴが最初に取り掛かったのは、スリー・ゴールドブリッジ トゥールビヨンの復刻であり、これを機にブランドは特徴的なブリッジを取り入れたタイムピースを積極的に製作してきた。

 フリー ブリッジ メテオライトもそのひとつだ。伝説的なスリー・ブリッジにオマージュを捧げるアロー型のブリッジには現代建築を想起させる構造を取り入れ、さらに直線的なパターンが現れたメテオライトのプレートを組み合わせることでモダンな表情を一層強めた。1867年に生み出されたスリー・ブリッジは、その形状を変えながらも現代に継承され、今なお存在感を放っている。その進化は、この先も確実に続いていくことだろう。

ネオ ブリッジ アストンマーティン エディション

ネオ ブリッジ アストンマーティン エディション
ブリッジがもたらす独創的なデザインを愉しめるもうひとつの新作が「ネオ ブリッジ アストンマーティン エディション」だ。本作はアストンマーティンとのパートナーシップモデルの5作目にあたり、輪列とテンプを支えるアストンマーティン グリーンのネオ ブリッジがひときわ存在感を放っている。自動巻き(Cal.GP084000-2164)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径45mm、厚さ12.18mm)。30m防水。世界限定250本。531万3000円(税込み)。



Contact info: ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791


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