メテオライト(隕石)のプレートをレイアウトする新鮮なデザインワークを駆使し、ジラール・ペルゴを代表する「ブリッジ」コレクションに新しく追加された「フリー ブリッジ メテオライト」。それは、1860年代より続くブランドの象徴的なクリエイションを取り入れながら、現代的な佇まいへと昇華させた、まさに“レジェンドの最進化形”とも呼べるタイムピースである。
1867年に誕生したアロー型ブリッジの意匠を継承しつつ、腕時計全体を現代的なルックスへとリデザインした「フリーブリッジ」。このモデルをベースに、アワーブリッジの両側に稀少なメテオライトのプレートをレイアウトすることで、メリハリの効いたデザインに仕上げている。自動巻き(Cal.GP01800-2085)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径44mm、厚さ12.2mm)。30m防水。361万9000円(税込み)。
竹石祐三:取材・文 Edited & Text by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2024年5月号掲載記事]
現代的な佇まいへと昇華させた「フリー ブリッジ メテオライト」
2020年発表の「フリー ブリッジ」をベースに、メテオライトの破片をアクセントとして取り入れた24年の新作「フリー ブリッジ メテオライト」。本作を擁するコレクションがその名称で示している通り、最大の特徴はブリッジだ。もちろんこの新作も、6時位置のアロー型ブリッジと時分針に架かるアワーブリッジを備え、象徴的ディテールを際立たせている。
しかしなぜ、時計の一部品であるブリッジを強調しているのか。それは、ブランドの草創期から実践されている、革新性を追求する姿勢を明示するためであり、それを象徴するのがブリッジを前面に押し出したタイムピースであるからにほかならない。
歴史を振り返ると、ジラール・ペルゴの起源にはふたりのキーパーソンが存在する。ひとりは時計職人としてさまざまな技術を習得した後、1791年に自らの名を刻んだ時計を製作したジャン=フランソワ・ボット。やがてボットは自身の工房を設立し、専門の職人を含む約180人もの従業員を1カ所に結集させると、懐中時計はもちろん、オートマタやオルゴールなどの美術品も製作。スイスにおける大規模マニュファクチュールの草分け的存在となり、一方で常連客には王侯貴族も名を連ねるなど、世界中から注目を集めた。
もうひとりが、ラ・ショー・ド・フォンに生まれ、時計師の祖父と彫刻師の父を持つコンスタン・ジラールだ。1847年にジラール社を創業させ、7年後には時計卸売業を営む家庭に生まれたマリー・ペルゴと結婚。社名をふたりの姓を組み合わせたジラール・ペルゴへと改称し、1906年にはボットの工房を買収するまでに成長する。
そんなコンスタン・ジラールが時計製造において注力したのが、トゥールビヨンだ。ジラールは時間をかけてこの機構を調べ上げたうえで、ムーブメントのデザインやパーツ形状に独自のアイデアを加えた。こうして1867年に誕生したのが、ムーブメントに並行した3枚のニッケル製ブリッジを取り付けたトゥールビヨンであり、さらに89年のパリ万国博覧会ではブリッジをアロー型に変更し、素材にはゴールドを用いたスリー・ゴールドブリッジトゥールビヨン「ラ・エスメラルダ」を出品。この時計が金賞を受賞したことでジラール・ペルゴの評価は一気に高まり、以後、独創的な意匠はブランドのアイコンとして継承されていく。
事実、クォーツ時計の台頭が著しい1970年代後半に、機械式時計への回帰をいち早く決断したジラール・ペルゴが最初に取り掛かったのは、スリー・ゴールドブリッジ トゥールビヨンの復刻であり、これを機にブランドは特徴的なブリッジを取り入れたタイムピースを積極的に製作してきた。
フリー ブリッジ メテオライトもそのひとつだ。伝説的なスリー・ブリッジにオマージュを捧げるアロー型のブリッジには現代建築を想起させる構造を取り入れ、さらに直線的なパターンが現れたメテオライトのプレートを組み合わせることでモダンな表情を一層強めた。1867年に生み出されたスリー・ブリッジは、その形状を変えながらも現代に継承され、今なお存在感を放っている。その進化は、この先も確実に続いていくことだろう。
ブリッジがもたらす独創的なデザインを愉しめるもうひとつの新作が「ネオ ブリッジ アストンマーティン エディション」だ。本作はアストンマーティンとのパートナーシップモデルの5作目にあたり、輪列とテンプを支えるアストンマーティン グリーンのネオ ブリッジがひときわ存在感を放っている。自動巻き(Cal.GP084000-2164)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。Tiケース(直径45mm、厚さ12.18mm)。30m防水。世界限定250本。531万3000円(税込み)。
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