時計業界のビッグイベントである、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2024。この祭典でパテック フィリップは、「グランド・コンプリケーション」から「ノーチラス」、そして「ゴールデン・エリプス」など、多彩な新作モデルを発表している。いずれも所有欲をかき立てられるモデルだが、最大の目玉は「ワールドタイム」Ref.5330であろう。
ワールドタイム Ref.5330
都市表示リングの12時位置に表示されている、選択されたタイムゾーンの時刻と同期した日付表示を行う、新世代のワールドタイムが発表された。本作では、従来タイムゾーンを超える際に必要だった日付表示を調整する手間が不要となる。
自動巻き(Cal.240 HU C)。37石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KWGケース(直径40mm、厚さ11.57mm)。3気圧防水。1155万円(税込み)。
この機能を実現させたのは、Cal.240 HUをベースにした新しいムーブメント、Cal.240 HU Cだ。70個の部品で構成される日付表示モジュールには、ふたつの同軸の歯車(星車)からなる特許取得の中央差動システムが組み込まれ、現地時刻の日付表示が制御される。これにより10時位置のプッシュボタンを押すごとに、都市表示リング、24時間表示リング、センター時針が1時間刻みで前進するだけでなく、必要に応じて日付表示も前進または後退する。機械構造は複雑であるが、実用的で快適なユーザーエクスペリエンスを追求するパテック フィリップの創作哲学が体現されている。
またパテック フィリップとしては初めて、先端部分を赤色にラッカー塗装したハンマー型の透明なガラス製センター日付表示針が採用された。これは日付表示針という動きの少ない針が他の情報の読みやすさを妨げないようにするためのものである。
ブルーグレーオパーリン文字盤のセンターには“カーボン”パターンを採用。読みやすい表示と、気品あふれる外観を両立させた。
本作は、2023年6月に東京で開催されたウォッチアート・グランド・エキシビション(東京2023)でリミテッドエディションとして発表された5330モデルが、現行コレクションとして加えられたものだ。
アラーム・トラベルタイム Ref.5520
自動巻き(Cal.AL 30-660 S C FUS)。52石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約52時間。18KRG×18KWGケース(直径42.2mm、厚さ11.6mm)。3気圧防水。3909万円(税込み)。
2019年に発表されたアラーム・トラベルタイムに、ニューバージョンが追加された。18Kローズゴールドケースに、4つのホワイトゴールド製プッシュボタンチューブを組み合わせた2トーンの仕様である。文字盤はグレーソレイユとアンスラサイトの2トーンであり、蓄光性のアンスラサイトホワイトゴールドのアプライドアラビア数字インデックスと、剣型の時分針が配される。
アラーム・トラベルタイムは、異なるふたつのタイムゾーンの時刻を同時に表示する独自のトラベルタイム機構と、ハンマーで24時間対応のアラームを鳴らすクラシックゴングを備えるものだ。搭載される自動巻きCal.AL 30-660 S C FUSは、アラームに関する4件の技術特許を取得している。
アラーム時刻は12時位置の二重窓にデジタル式で表示される。4時位置のリュウズを用いて、昼夜表示と組み合わせて15分単位で設定できる。
トラベル機構は、センターに2本の時針を備え、それぞれ現地時刻(ソリッド針による)と、出発地時刻(スケルトン針による)を表示する。8時位置と10時位置のトラベルタイムプッシュボタンは、+と-の浮き彫り入りで、押すと現地時刻を1時間単位で前進・後退させることができる。
グランド・コンプリケーション Ref. 5160/500
自動巻き(Cal.26-330 S QR)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間・18KRGケース(直径38mm、厚さ11.81mm)。3気圧防水。3047万円(税込み)。
パテック フィリップのレトログラード式日付表示と永久カレンダーを備えた「グランド・コンプリケーション」から、18Kローズゴールド製の、稀少なハンドクラフトモデルが登場した。2016年に18Kホワイトゴールド製のRef.5160/500が登場したが、本作はその過去のモデルが再解釈されている。
特徴は、18Kローズゴールドのケースにパテック フィリップ・ミュージアム所蔵の懐中時計からインスピレーションを得た、渦巻と草木模様の彫金が手作業によって施されていることだ。
シルバーオパーリン文字盤の中央にも、特徴的な模様が施された。なお、中央にはレトログラード式日付表示が備わっており、さらにムーンフェイズ、曜日と月、閏年サイクルの小窓を配している。ホワイトゴールド製のアプライドインデックスはブラック仕上げのブレゲ数字で、同じくブラック仕上げの時分針と併せて、クラシカルであるのみならず、高い判読性を備えている。
搭載するムーブメントは、自動巻きCal. 26-330 S QRだ。2019年に登場したCal.26-330 S Cをベースとしており、カバーを開くと目に飛び込んでくるこのムーブメントにも外装同様、パテック フィリップを象徴するカラトラバ十字がエングレービングされた21Kゴールド製ローターや、コート・ド・ジュネーブ装飾を施したブリッジなど、所有欲をくすぐるディテールが備わっている。
グランド・コンプリケーション Ref.5236P
自動巻き(Cal.31-260 PS QL)。51石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間・Ptケース(直径41.3mm、厚さ11.07mm)。3気圧防水。2132万円(税込み)。
2021年に登場した、インライン表示の永久カレンダーモデル。曜日、日付、月を表示させる大型表示の窓を1列に並べて配することで、永久カレンダーながら、すっきりとした意匠を確立した。インラインカレンダーのほか、6時位置にはスモールセコンドと同軸になったムーンフェイズ、4時位置には閏年サイクル、8時位置には昼夜表示の丸窓が搭載されるも、煩雑な印象はない。
今回、パテック フィリップのこの永久カレンダーを備えた新作が、ローズゴールドのオパーリン文字盤を備えて登場している。
パテック フィリップのヴィンテージウォッチにインスピレーションを得たというこのカラーの文字盤には、アンスラサイトのホワイトゴールド製時分針、そしてアプライドインデックスが備わっている。
手作業で全面がポリッシュに仕上げられたケースの6時位置には、プラチナ製モデルの証として、ダイヤモンドがひっそりとセッティングされている。
ムーブメントは、3件の特許を取得した自動巻きCal.31 260 PS QLだ。薄型自動巻きムーブメントCal.31-260をベースにしており、、3件の特許技術で保護された追加モジュールと、巻き上げの力が強化されたマイクロローターを搭載している。なお、このローターには、ゴールドよりも比重の重いプラチナを使用している。
このムーブメントはトランスパレント式の裏蓋から、いつでも鑑賞することができる。
コンプリケーション Ref.5396
自動巻き(Cal.26-330 S QA LU 24H)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間・P18KWGケース(直径38.5mm、厚さ11.2mm)。3気圧防水。958万円(税込み)。
パテック フィリップが開発した年次カレンダー。2月の末日を除き、時計が動き続けている限りは手動でのカレンダー送りが必要のない機構であると同時に、12時位置に曜日、月の小窓を、6時位置にデイト、そしてムーンフェイズと同軸になった24時間表示のインダイアルを備えたスタイルがアイコニックでもある。
新作はこのレイアウトを備えつつ、18Kホワイトゴールド製ケースにブルーソレイユ文字盤の意匠を有する。文字盤は外周に向かって濃くグラデーションしており、加えてインデックスに配された11個のバゲットカットダイヤモンドが、本作にさりげなく輝きを与えている。ホワイトゴールド製のドーフィン型時分針は力強く、パテック フィリップのオーセンティックなスタイルをほうふつとさせるとともに、良好な視認性にもつながっている。
搭載するムーブメントは自動巻きCal.26-330 S QA LU 24Hだ。従来コレクションではCal.324 S QA LU 24H/303が採用されてきたが、Cal.26-330ベースとなっており、トランスパレント式の裏蓋から21Kゴールド製ローターとともに、その意匠を眺めることができる。
ノーチラス フライバック・クロノグラフ Ref.5980/60
自動巻き(Cal.26-330 S C FUS)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWGケース(直径40.5mm、厚さ12.2mm)。3気圧防水。1190万円(税込み)。
フライバッククロノグラフを搭載するノーチラスの新バリエーション。これまで18KローズゴールドやSSのケースで展開されていた同モデルだが、今回は18Kホワイトゴールドケースで登場した。
注目は文字盤カラーのブルーグレー・オパーリンに合わせ採用されたストラップだ。一見、テキスタイルかと思いきや、素材はカーフだという。デニム柄のパターンを与え、ホワイトステッチを施したストラップは、ノーチラス フライバック・クロノグラフ 5980/60に、これまで無縁だったカジュアルなイメージを持たせた。
爽やかなブルーでまとめたクロノグラフという構成は、ややもするとラフになりすぎる。しかし、さすがはパテック フィリップ。一体型ラグの稜線やアイコニックな“耳”の側面などに入れられたポリッシュが、ラグジュアリー感をしっかりと演出してくれている。
なお、6時位置に配された60分および12時間の同軸積算計には、ノーチラス40周年フォントが用いられる。このフレームもケース同様に18Kホワイトゴールド製だ。
限定モデルではないが手の込んだ2ピースケースであること、そして昨今のノーチラスの人気ぶりを考えれば入手困難となることが予想される。
アクアノート Ref.5164
自動巻き(Cal.26-330 S C FUS)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ最大45時間。18KWGケース(直径40.8mm、厚さ10.2mm)。3気圧防水。951万円(税込み)。
アクアノートのトラベルタイムモデルである5164が、初めてホワイトゴールド・バージョンで登場した。ブルーグレー・オパーリン文字盤には、象徴的なアクアノート・パターンが施されている。
Ref.5164では、トラベルタイム表示を備えた自動巻きCal.26-330 S C FUSが搭載される。出発地と現地時刻は、文字盤の2本の時針で表示される。時針は、9時側のケースサイドのプッシュボタンでの単独操作が可能だ。3時位置、9時位置のそれぞれの小窓では昼夜が表示される。6時位置のポインターデイトと合わせ、多彩な表示がバランス良く配置された秀逸なダイアルデザインだ。なお、日付表示は現地時刻と連動する。
文字盤と同じカラーのコンポジット・バンドは、特許取得のホワイトゴールド折り畳み式バックルを備える。
優れた視認性と使いやすさを兼ね備えた1本だ。
アクアノート Ref.5269
クォーツ(Cal.E 23‑250 S FUS 24H)。18KRGケース(直径38.8mm、厚さ8.77mm)。3気圧防水。533万円(税込み)。
クォーツCal.E 23-250 S FUS 24Hを搭載する、やや小ぶりなアクアノート・トラベルタイムRef.5269モデルに、18Kローズゴールド・バージョンが加わった。宝石をセッティングしない、シンプルで洗練された外観が特徴だ。ケースは、ポリッシュ仕上げとサテン仕上げのコントラストによって際立ち、コンテンポラリー・カジュアル・シックな存在感を強調する。
デュアル・タイムゾーンを表示するRef.5269は、文字盤に2本の時針が備えられ、ひとつは出発地時刻、もうひとつは現地時刻を表示する。時刻設定はリュウズで行われ、目立たない実用的な調整システムが魅力だ。
ブルーグレー・オパーリン文字盤と同色のコンポジット・バンドは、独立した4つの止め金により安全性を高めた、特許取得の折り畳み式バックルを装着している。
ゴールデン・エリプス Ref.5738/1
自動巻き(Cal.240)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(縦39.5×横34.5mm)。3気圧防水。906万円(税込み)。
ゴールデン・エリプスの中では大型ケースを持つ5738に、初めてのブレスレットモデルが追加された。
オーソドックスなチェーンブレスレットかと思いきや、15年間にわたる開発の末に、出来上がった全く新しいブレスレットとのこと。詳細は現時点で明らかになっていないが、パテック フィリップいわく、「特に長さ調整に関し、以前のバージョンに存在した技術的欠点を克服した」。
ブレスレットのパーツ数363個のうち、300個以上をリンクが占めており、その全てを手作業でひとつずつ組み立てたというブレスレットは、広報画像を見る限りでは、非常にしなやかだ。また、長さ調整という点では、エングレービングが施されたバックルにも3段階の微調整機構が設けられている。
もともと、パテック フィリップで最も薄型ムーブメントであるCal.240を搭載し、ブランド最薄のケース厚5.9mmを実現したゴールデン・エリプスは、何もしなくても装着感に優れた時計だ。そんな5738に、パテック フィリップが本気で長さ調整に関して設計を詰めたブレスレットを合わせてきたのである。その装着感には期待が募るばかりだ。
アクアノート Ref.5268/461G
自動巻き(Cal.26-330 S)。2万8800振動/時。パワーリザーブ最小45時間。18KWGケース(直径38.8mm、厚さ9.1mm)。3気圧防水。3553万円(税込み)。
華やかなデザイン性を備えるアクアノート・ルーチェに、多数のダイヤモンドやサファイアで装飾された、18Kホワイトゴールドケースの煌びやかなモデルが加わった。
文字盤のセンターにはバゲットカット・ダイヤモンドとブルーサファイアがセッティングされ、アクアノート・コレクションの象徴的パターンをほうふつさせるチェッカー模様のモチーフが形成されている。その外周にはアワーマーカーのバゲットカット・ブルーサファイアと、スノー・セッティングによるブリリアントカット・ダイヤモンドが交互に配置されている。ベゼルを飾るのは、明るいブルーから濃いブルーの繊細なグラデーションによるバゲットカット・サファイアだ。他にラグやバックルも、バゲットカット・ダイヤモンドで飾られている。
ケースバックはトランスパレント式だ。搭載される自動巻きCal.26-330 Sは、3時位置の日付表示や、センターセコンドを備えている。
TWENTY~4 Ref.4910/1201R
クォーツ(Cal.E 15)。18KRGケース(縦30×横25.1mm、厚さ6.8mm)。3気圧防水。718万円(税込み)。
1999年に誕生し、25周年を迎えたTwenty~4コレクションに、重厚感ある文字盤が特徴の新作が加わった。わずかに反ったレクタンギュラー型ケースと、植字ローマ数字を配した文字盤を特徴とする「マンシェット」スタイルのニューモデルである。
文字盤にはまず同心円状の波模様がエンボス加工されている。ここに半透明なパープル・ラッカー塗装を何十層もコーティングし、さらに無色透明のラッカー塗装を施すことにより、美しい奥行きのある効果が生み出されている。
2重の段差を持つレクタンギュラー型ケースは、文字盤の両側に17個ずつ並んだブリリアントカット・ダイヤモンド(0.63カラット)で装飾されている。
ケースとブレスレットにはローズゴールドを採用。芳醇なパープルの色味と相まって、モダンクラシック・スタイルを基本とするTwenty~4の中でも、周年を彩るにふさわしい高雅な仕上がりとなった。
Tel.03-3255-8109
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