ヴィンテージダイアルを採用した、世界限定10本のニバダ・グレンヒェン「デプスマスター・オレンジN.O.S.」

スイスの時計ブランド、ニバダ・グレンヒェンが「デプスマスター・オレンジN.O.S.」「デプスマスター・オレンジ・カレント・コレクション」の、2種類のダイバーズウォッチを発表した。どちらもオレンジカラーが特徴で、特にデプスマスター・オレンジN.O.Sは1960年製の文字盤とムーブメントを採用している点がポイントだ。

1960年代に作られた文字盤を採用した限定モデルと、デザインを踏襲した通常モデル

　1879年に設立されたスイスの時計ブランド、ニバダ・グレンヒェン。1970年代のいわゆる“クォーツレボリューション”の煽りを受けて生産を休止した時期もあったが、2019年にギョーム・ライデらによって再興された。現在は、かつての趣をよみがえらせたコレクションを展開している。

　そんなニバダ・グレンヒェンが展開する、レトロなダイバーズウォッチ「デプスマスター」。このコレクションに、歴史的な文字盤とムーブメントをリファインした限定モデル「デプスマスター オレンジN.O.S.」と、新しい部品のみを使用した通常モデル「デプスマスター・オレンジ・カレント・コレクション」の、2種類のオレンジカラーの新作が加わった。

　1960年代に発表されたデプスマスターは、初の1000m防水を誇るダイバーズウォッチのひとつであり、コレクターの間でその名を知られるようになった。2022年、ニバダ・グレンヒェンは新世代のデプスマスターを発表した。

　近年、ブランドのCEOであるギョーム・ライデは、1960年代に作られたオリジナルのオレンジ色の文字盤を手に入れる幸運に恵まれた。ライデはこれを10本のみの限定モデルに採用し、ヴィンテージのETAキャリバー2472を搭載して「デプスマスター オレンジN.O.S.」を完成させた。N.O.S.とは、New Old Stockの略だ。

　さらに、これとデザインをほぼ揃えて新しく製造した文字盤と、ソプロード社製の現代的なムーブメントCal.P024を搭載した通常モデル「デプスマスター・オレンジ・カレント・コレクション」も作り上げた。どちらのモデルのムーブメントも自動巻きである。

ふたつのモデルの共通点と相違点

　デプスマスター・オレンジN.O.S.とデプスマスター・オレンジ・カレント・コレクションに共通するのは、直径39mmのクッション型ケースを備えていることだ。オリジナルのデプスマスターは1964年頃に発表され、当時のケースサイズは38mmだった。当時、ダイバーズウォッチの多くはラウンド型のケースを採用しており、デプスマスターは一線を画した存在だった。

　ステンレススティール製ケースは、オリジナルと同じく1000m防水だが、風防はサファイアクリスタル製になり、9時位置にはヘリウムエスケープバルブが備えられている。ひときわ目を引くのは、蓄光塗料を塗布した大きな針と、直線的で比較的長いラグである。

　限定モデルと通常モデルの違いは、文字盤とムーブメントにある。限定モデルに使用されているヴィンテージの文字盤には日付窓があり、6時位置には「T SWISS MADE T」の文字がある。これは当時使用されていた、わずかに放射性のある蓄光塗料のトリチウムを意味する。なお、トリチウムは現在使用されていない。通常モデルでは、蓄光塗料にスーパールミノバが採用されている。そのため、文字盤の6時位置には「L SWISS MADE L」の文字がプリントされている。

1960年代のムーブメントと最新のソプロード社製ムーブメント

　デプスマスター・オレンジN.O.S.に搭載されているムーブメントも、歴史的なものだ。搭載されるETA製の自動巻きムーブメントCal.2472は、1956年から1974年にかけて製造されたもので、1万8000振動／時のゆったりと時を刻むテンプや、両面巻き上げ機構などが特徴である。日付調整は簡単で、午前0時になると瞬時にジャンプする日付表示を備えている。ローターは軸受けを用いており、ボールベアリングは使用していない。これは1960年代当時は優れたムーブメントだったが、現在はコレクターの興味を引くヴィンテージ特有の特徴でしかない。

　一方、デプスマスター・オレンジ・カレント・コレクションに搭載されるソプロード社製のCal.P024は堅牢で、人気の高いETA2824と同じ構造を持ち、デイト表示を有する。しかし、ニバダ・グレンヒェンは同モデルにデイト窓を設けていない。

　10本限定で販売されるデプスマスター・オレンジN.O.S.の参考価格は2890USドルだ（既に完売している）。通常モデルのデプスマスター・オレンジ・カレント・コレクションは、995USドルである。限定モデルは、その希少性が通常モデルのほぼ3倍の価格に反映されているというわけだ。ニバダ・グレンヒェンは、レトロデザインを好む愛好家への訴求力を持ったブランドであると言えるだろう。