ムーブメント製造の名手「グランドセイコー」は、3種類のムーブメントを使い分けている。独自機構であるスプリングドライブが有名だが、メカニカルムーブメントの評価も高い。グランドセイコーのメカニカルムーブメントの特徴と、このムーブメントを搭載したおすすめモデルを紹介する。
グランドセイコーのメカニカルムーブメント、その特徴
世界最高峰の腕時計に挑み続けるグランドセイコーは、これまで多くの高精度ムーブメントを誕生させてきた。マニュファクチュールで生み出されるメカニカルムーブメントの何がすごいのか、その特徴を見ていこう。
先端技術「MEMS」の導入
メカニカルウォッチには、約200~300もの部品が使用されており、それぞれの精細さがムーブメントの精度に大きく関わってくる。より高精度な部品を作るために、グランドセイコーでは脱進機の部品製造過程において先端技術「MEMS」を導入している。
“MEMS”は超精密部品の製造現場で用いられている加工技術のこと。この加工技術により0.001mm単位の精度で脱進機のアンクルやガンギ車を作ることが可能となる。
ムーブメントは精度が高くなるほど、部品同士が触れ合う回数が多くなり、摩擦が大きくなるため負荷もかかりやすい。しかし、MEMSで作った部品は表面が平滑になることから、摩擦が小さくなり、負荷も抑えられる。
職人による丁寧な手作業
どんなに各部品が優れたものであっても、そのまま組み立てるだけでは理想のムーブメントにはならない。部品同士が適切に組み合わさるよう、丁寧な作業を進めることが重要だ。
グランドセイコーの工房では、メカニカルウォッチの仕組みを熟知した職人たちが、手作業で微細な調整を繰り返しながら高精度のムーブメントを作り上げている。
主ゼンマイの力を伝達する歯車一つひとつにも、職人が歯車の溝を一歯ごと丁寧に磨いている。グランドセイコーのメカニカルムーブメントが芸術品に見えることがあるのは、職人による丁寧な手作業が生み出した結果なのだ。
独自の精度基準「新グランドセイコースペシャル規格」
グランドセイコーは独自のメカニカル時計用精度基準として、「新グランドセイコー規格」を設けている。スイス公式クロノメーター検定機関(C.O.S.C.)のクロノメーター基準よりも厳しい精度基準だ。
さらに、新グランドセイコー規格を上回る「グランドセイコースペシャル規格」も存在する。この基準をパスしたモデルには、選ばれた時計であることの証として、「SPECIAL」の文字がダイアルに記される。
また、9S系ムーブメントは、いくつもの姿勢差や温度環境で17日間に及ぶ検定試験を受けなければならない。厳格な規格に基づく独自の試験をパスしたムーブメントのみが、グランドセイコーの9Sメカニカルを名乗れるのだ。
グランドセイコーのメカニカル時計おすすめ4選
9S系ムーブメントを開発し約20年ぶりにメカニカル時計を復活させた1998年以降、グランドセイコーはさまざまなメカニカル時計を生み出してきた。優れた精度を誇る9Sメカニカルを搭載したおすすめモデルを紹介する。
ブランド初のメカニカルクロノグラフ「エボリューション9 コレクション テンタグラフ」 Ref.SLGC001
自動巻き(Cal.9SC5)。60石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約72時間。ブライトチタンケース(直径43.2mm、厚さ15.3mm)。10気圧防水。188万1000円。
グランドセイコーは2023年、ブランド初のメカニカルクロノグラフ「Cal.9SC5」、通称「テンタグラフ」を誕生させた。約72時間のパワーリザーブを実現しているムーブメントである。
テンタグラフを搭載した「SLGC001」は、グランドセイコーの新たなデザイン文法「エボリューション9スタイル」をもとに設計されている。視認性を高めるための特徴的な針やインデックスは、「エボリューション9スタイル」によるものだ。
ケースは独自素材の「ブライトチタン」を採用している。ステンレススティールより軽く、耐傷性・耐食性に優れており、金属アレルギーを引き起こしにくいチタンであることから肌にも優しい。
約80時間のロングパワーリザーブ「エボリューション9 コレクション」 Ref.SLGH019
自動巻き(Cal.9SA5)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブライトチタンケース(直径40mm、厚さ11.7mm)。10気圧防水。138万6000円。
「SLGH019」は、メカニカルハイビートムーブメント「Cal.9SA5」を搭載したモデルだ。「Cal.9SA5」は3万6000振動/時のハイビートでありながら、約80時間のロングパワーリザーブを誇り、高精度と高耐久性を両立させている。
新たな「水平輪列構造」により薄型化を実現している点もポイントである。腕時計としての重心位置にもこだわり、より快適な装着感を実現している。
透明度の高いブルーダイアルに施されたパターンは、「グランドセイコースタジオ 雫石」から望める岩手山の山肌を表現したものだ。
GMT機能を搭載「スポーツコレクション」 Ref.SBGJ277
自動巻き(Cal.9S86)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径44.2mm、厚さ14.4mm)。20気圧防水。94万6000円。
新作「SBGJ277」は、標高の高い夏の山々に残る雄大な「雪渓」を文字盤上で表現。これからのシーズンにふさわしいモデルだ。
回転ベゼルに施されたグリーンと、繊細な型打ちで表現された純白のダイヤルパターンは、厳しい冬から春夏へと移りゆく、岩手山の雄大さをほうふつさせる。
ムーブメントにはメカニカルハイビート「Cal.9S86」が搭載されている。24時針によりもうひとつの時刻を表示できるGMT機能が搭載されたムーブメントだ。
カレンダー機能付きメカニカル自動巻き「ヘリテージコレクション」 Ref.SBGR309
自動巻き(Cal.9S68)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.1mm)。10気圧防水。58万3000円。
「SBGR309」の大きな特徴は迫力のある42mmケースだ。かん先を細く絞り込んでいるため、大きめのケースサイズでありながらすっきりとした印象を与える。
搭載されているムーブメントは、便利なカレンダー機能を備えた「Cal.9S68」である。振動数2万8800振動/時、約72時間のパワーリザーブを誇る。
ブラックのダイアルには放射が施され、立体的なインデックスと相まって、より引き締まった雰囲気を醸し出している。
グランドセイコーの高精度メカニカル時計を堪能
グランドセイコーの9Sメカニカルは、先端技術「MEMS」と職人の丁寧な手作業により生み出されている。独自の厳しい精度基準が設けられていることもポイントだ。
世界最高峰の腕時計にこだわるグランドセイコーのメカニカルモデルを手にして、最新技術と匠の技を融合したメカニカルムーブメントの高精度を実感してみよう。
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