2024時計見本市2日目 再びシャネル発IWC経由ジャッキー・イクス行き【ジュネーブ日記】

2024.04.11

4月9日(火)から15日(月)にかけて、スイスのジュネーブで開催される時計の見本市ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024。この時計業界のビッグイベントをクロノス日本版編集長、広田雅将が日記形式でゆる〜くレポートする。フェア2日目である4月10日は、シャネルのブースを再訪したほか、IWCのセッションやA.ランゲ&ゾーネのプレゼンに参加。さらに、夜はショパールのインターナショナルディナーへ赴いた。

Photograph by Yu Mitamura
広田雅将(本誌):文・写真
Text & Photographs by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[2024年4月11日公開記事]
過去のレポートはこちらから!
「『クロノス日本版』編集長の広田雅将による、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024日記」


https://www.webchronos.net/blog/113426/


4月10日、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024も2日目に突入

 4月10日、朝起床。食べ過ぎるとやる気なくなるので、ヨーグルトを食べて出発。7時45分発、8時10分着。

 初日に比べて、2日目は混んでいた。結構な愛好家たちが会場内にいて、時計談義をやっている。会場内に置かれたカフェでコーヒーを飲み、チョコレート入りのパンをつまむ。フランス人って、なぜか朝食に甘いものを摂る。変な習慣だと思ったけど、スイスに来て納得。甘いものを食べないと頭が回らないのである。

2日目の会場内。すでに広田はヨレヨレになってます。

 再びシャネル訪問。昨日の日記に書いたとおり、今年の新作はマドモアゼル・シャネルに振り切っている。内輪受けにならないのは、質が良いからか。昨日見られなかったオートマタを見せてもらう。ボタンを押すと、シャネルやトルソーなどがぐりぐり動くものだ。技術的にはかなり高度で、シャネルやトルソーといった稼働物は、一種のLIGAプロセスで作られている。シャネル恐ろしいね。加えて、今年は文字盤の出来がいい。印字の精密さもさることながら、ADLCといった新技術をバンバン盛り込んでいる。

「J12 クチュール ワークショップ オートマタ」。マドモアゼルがぐりぐり動く超大作だ。

シャネルの新作。素直にカワイイです。

 その後、大好きなIWCのセッションに参加。新しいIWCの目玉は、ポルトギーゼのエターナルカレンダー。既存の永久カレンダーに遊星歯車を加えて、理論上は西暦3999年までカレンダーの変更がない。また、月齢表示は4500万年(謎)で1日しか狂わないらしい。ブース入り口で開発責任者のステファン・イーネン氏がいたので捕まえて聞く。「永久カレンダーをセキュラーカレンダーにするというアイデアは、クルト・クラウスも持っていた。でもカタチにしたのは新しい設計者だった。アイデアは良かったが、数個の歯車を加えるだけで400年単位の修正をなくすには、2200兆通りの計算が必要だった」。意味不明だがそれがIWCらしくていい(編集部注:その後、広田よりムーンフェイズの計算は22兆7000億通りであったと訂正がありました。詳しくはジュネーブ日記3日目をご覧ください)。

ポルトギーゼ エターナルカレンダーのキモが、新しいプログラミングディスク。400年に1回転しかしない歯車が付いている。

 個人的な推しは、普通のポルトギーゼだ。今年はボックスサファイアの採用で、ベゼルが細くなり、より賢く見える。また文字盤もメッキやPVDの上にラッカーを盛り上げ、表面を研ぎ上げたもの。グランドセイコーでお馴染みの手法だ。これはホントできがいいのよ。

ポルトギーゼの側面。さらに立体感を増している。

Hodinkeeよろしくリストショット。新しいポルトギーゼは文字盤がヤバい。

会場内に置かれた文字盤のサンプル。厚塗りラッカーを研ぎ上げている。ツヤツヤですよね。

 その後、A.ランゲ&ゾーネのプレゼン。2024年はダトグラフ25週年、初の製品発表から20周年となる。お披露目されたのはダトグラフのパーペチュアル・トゥールビヨンの「ルーメン」。もうひとつは青文字盤に18KWGのダトだ。正直地味と思ったが、ダトグラフのムーブメントは、もはや手の入れようがないほど熟成されている。色違いで対応したのも分からなくはないけど、面白みには乏しい。


 今日のハイライトは、パルミジャーニCEOのインタビューだ。新しいトリックは、なんとスモセコ手巻き、ムーブメントも金、そしてこのムーブメントは一から新造されたもの。広田のすーぱー上位互換であるグイド・テレーニ氏に話を聞いた。良い聞き手である彼は、今回はかなり饒舌だ。男性の服装史から語り出したのでかなりビックリした。企画が始まったのは2年前。「その頃に、ドレスウォッチは来ると思いましたか?」「Yes。トレンドは変わるものだからね」。

パルミジャーニ・フルリエの「トリック」。3針手巻き、ムーブメントも金というマニア仕様。個人的にはツボだ。


 時間が空いたので、いくつかのブースを回った。驚いたのはハイゼックだ、ベーシックなモデルにも、自社製ムーブメントが載るようになった。この出来のまたいいこと。PR担当の女性が胸を張りながら語る。「私たちのムーブメントはローラン・ベッセですから。開発責任者なのです」。マジかよ。

ハイゼックの自社製ムーブメント。ローラン・ベッセ謹製。

会場内で見たヴァン クリーフ&アーペルの「エクストラオーディナリーダイヤル」モデル。エナメルに直接貴石をセットするという謎テクニックが用いられている。

 途中、ジャーナリストのカーソン・チャン氏と、ジャン・フィリップ・タロ氏に会う。ふたりともうきうきで、マイクロメゾンのブースに行くという。彼らの隣に、もうひとり兄さんが突っ立っていた。「私、今回ヴィアネイ・ハルターとコラボしたんですよ」。これまたマジかよ。

カーソン・チャン氏の時計はユニバーサルのトリコン。「政治的に一番もめない時計」と苦笑していた。

 ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの後半3日間は、パブリックデーと称して、一般開放される。その前に入ってこられる「一般人」は、天竜人みたいなもん。記事を書かねばならないジャーナリストたちよりシリアスに見えるのは、本気の買いモードになっているためか。くろのぴーすさんほか、世界的なコレクターたちをちらほら見かけた。たまたま友人たちがいたので、某社のブース内に案内。普通は入れないけど、天竜人ですから。後、プレスセンターでフォトグラファーの奥田氏と昼食。ニョッキおいしい。

慌てて食べた昼食。ニョッキおいしゅうございました。

 ゼニスCEO改め、タグ・ホイヤーCEOとなったジュリアン・トルナーレ氏とも話をする。「ぶっちゃけ聞きますけど、今のタグホイヤーはめっちゃすごい人たちをそろえるじゃないですか。これ、どうやってハンドリングするんです?」「私の役目は指揮者になることだと思うよ」。

 最後は、カルティエのヘリテージを牽引するピエール・レネロ氏。博覧強記ぶりに圧倒される。「新しいリフレクション、まったくの新作に思えるけど、アイデアは昔のリストレットから来てるんですよ」。名著『Cartier』を記した、ハンス・ナーデルホッファーの話で盛り上がる。「彼ね、本を書き上げた後亡くなっちゃったんですよね」。


夜はショパールのインターナショナルディナーへ

ショパールの会場にて。わくわく動物ランドだろ、コレは。

 夜はショパールのインターナショナルディナー。日本からはHodinkeeの関口さん、LEONの石井さん、WWDの村上さん、そして広田。場所は、ショイフレ家の個人的なプロパティーだった。ミッレミリアのジャッキー・イクス限定モデルを発表だそうで、壇上ではイクスとショイフレ氏が楽しそうに話し合っていた。時計自体は見られなかったが、今のショパールなら外れはないだろう。

ショパールのディナーにて。左から、ジャッキー・イクス、ショイフレ氏、司会のオッサン。

 食事中、ショイフレ氏のワイナリーで作る、シャトー・モネスティエが提供された。以前はぱっとしなかったけど、別物みたいに良くなっている。ショイフレ氏に感想を伝えたところ。「It takes time」、良くなるのには時間がかかるとのことだった。時計にも通じるよな。

会場内にはジャッキー・イクス本人が乗ったマシンがいくつか置かれていた。


おまけ

 追記。なぜか会場内で出会った韓国人Youtuberの番組に出ることになりましたとさ。

 2日目にして死亡。

韓国人YoutuberのClassy氏に声をかけれられて、彼の番組に出演。イケメンでした。

華やかなW&Wの会場だが、裏はこんなもん。


2024年のカルティエ新作時計を一気読み!

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2024年 IWC新作時計を一気読み!

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2024年 パルミジャーニ・フルリエ新作時計を一気読み!

https://www.webchronos.net/features/112609/