「GA-2100」のフルメタルコレクションに、メタリックブルーダイアルを備えた新作GM-B2100AD-2AJFが加わった。本作は見応えある新色のダイアルを楽しみつつ、G-SHOCKらしく傷をも恐れず使い倒したい1本である。
Text & Photographs by Kouki Yamada
[2024年4月12日公開記事]
フルメタル「GM-B2100AD-2AJF」を着用レビュー!
『クロノス日本版』編集部より、今回インプレッションするカシオ計算機 G-SHOCK「GM-B2100AD」が届いた。巷では“カシオーク”とあだ名される「GA-2100」の、フルメタル仕様。しかもダイアルが、メタリックブルーに彩られたニューモデルだ。話題をさらったオクタゴンケースの出来映えをこの目で確かめるのは、何より楽しみだった。
試着用の味気ない、しかしだからこそメーカー直送のテスト機感が味わえる簡素なペーパーケースを開けて、初対面。きらりと輝くステンレススティールのオクタゴンケースは、確かに結構なインパクトだった。さっそく手首に巻き付けると、心地よい重さ(コマ詰めした状態の実測値146g)と、ひんやりとした感触が手首に伝わってきた。
初号機「DW-5000C」のフルメタル仕様「GMW-B5000D-1JF」と同じ、ふたつの肉抜き穴が空いたY字型のコマを連結したブレスレットは、筆者の手首回りより少し大きめに調整されてきた。しかしピン抜き棒でバネ棒を押し込み、少しずらしてやるだけで、簡単にコマ調整ができる。
もちろん貸し出し用の時計だから極丁寧には扱ったが、調整に緊張を強いられないどころか、進んでアジャストしたくなるそのフレンドリーさが、G-SHOCKの大きな魅力だ。クルマに例えるとそれは、昔で言えば“テンロク”のスポーツカー。今で言うとBセグメントのコンパクトスポーツといったところか。「手が届く宝物」というイメージがぴったりの時計だ。
予想以上に良いファーストインプレッション
果たして手首に巻き付けたGM-B2100AD-2AJFの第一印象だが、これが予想以上に良かった。
樹脂モデルに対して絶対的な重量が増えているだけでなく、スクリューバック構造となっている分だけ、トップの重心も高い。しかし横方向に多少の遊びを持たせたブレスレットは、巻き付くようにフィットする。コツはバックル側の調整もフルに使って、少しだけタイトに調整することである。
オリジンのフルメタルモデルよりフィット感が若干高い気がするのは、ケースが少し薄いからだろうか。
さて注目のオクタゴンケースだが、近視眼的観察ではやはりエッジの甘さが目立った。ベゼルの際(きわ)もそうだが、オリジンから受け継ぐ特徴的な四隅の“えぐれ”(ボタンカバーというのだそうだ)の、その角が丸まっているのは少し残念だ。
ケースそのものは鍛造だというから、その後のマシニングや磨き上げの甘さが、エッジを丸めてしまうのかもしれない。
ただこれに関しては、カーボン樹脂ケース×ラバーモデルの「GA-2100」でも、ベゼルを見ると、実はそこまでエッジを追い込んではいない。メタル素材だからこそ、丸みが目立ってしまうのだろう。そしてこれ以上のクォリティを求めるなら、研磨にコストを載せられる、「MR-G」の登場を待つべきだ。いや2100系のMRーGが出たら、かなりいいはずである。
また鏡面仕上げはベゼル側面のみで、ボディにもサテン仕上げと鏡面仕上げのコンビネーション加工を施してほしいと感じた。それこそオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」に近づいてしまうが、角の丸い部分に光が当たると、より一層エッジの鈍さが強調されてしまうのだ。
見応えのあるブルー文字盤
蒸着処理されたというブルーの文字盤は、素直に美しい。
チャプターリングやセレクターの段差で光が当たらない部分は色が濃くなり、グラデーションが付くからとてもきれいだ。
アワーマーカーは極太で、光の加減で玉虫色に輝く。また、細かく縦筋を入れたことで乱反射が起こらず、視認性が高い。LEDバックライトがあるからだろう、蓄光塗料の処理は時針・分針、そしてインデックスの外周のみとなっている。LEDライトの色調は白く簡素で、ちょっとチープに感じられてしまう。
12時位置にある「G-SHOCK」のレターは、プリントではなく、メタレターであるため立体感がある。このロゴは丁寧にも、メッキ加工が施されている。
しかしケース同様、この処理でエッジがぼやけてしまう。ならばいっそのこと、この位置のレターは下段の「CASIO」だけで良いと思う。すでにベゼルの12時位置には、「GーSHOCK」の文字がきちんと彫り込まれているのだから。
と、ここまでは極めて近視眼的で、G-SHOCKを愛するマニアの意見を述べた。
しかしこのGM-B2100ADの魅力は、もっとカジュアルなところにある。実際鏡を前に少し遠目から装着した姿を見てみると、これがなかなかに映えるのだ。
大ぶりに思えた直径44.4mmのボディは、その存在感を示すにはちょうどよい大きさだ。かつメタルボディにブルーのダイアルは、コントラストが鮮やかである。手首を動かせばベゼルだけでなく、チャプターリングやダイヤルの中まで光りの筋が浮かび上がってヒラヒラと動く。そして先ほど文句を付けたメッキコートが、キラッと輝くのだ。
遠目に見たとき美しいのは、すなわち値段相応という見方もあるだろうが、筆者はこれを前向きに捉えている。ビジネスシーンで対面する距離感において、GM-B2100ADは、相手に適度なインパクトと清潔感を与えられる時計だ。つまり、「いい時計」に見える。そこからもし彼が時計好きで話しかけてきたのだとすれば、会話も弾むだろう。そうでなければ、いい印象を与えてその場をやり過ごすことができる。
使い勝手も良好
使い勝手も一応言及すれば、それはオリジナルの「GA-2100」となんら変わりはない。
まずデジ・アナ表示は、直感的に時間を捉えやすい。秒針はなく(通常はデジタル表示)、分針は1分を刻む際、だいたい1/4ずつステップしていることが見てとれた。
ワールドタイム(300都市)、ストップウォッチ、タイマーにアラーム。9時位置のインジケーターをもひとつのボタンで動かして、各種機能を選択する。そして4~6時位置に小窓をあけた、液晶パネルが内容を表示してくれる。
正直このインジケーターがなくても、デジタル表示だけでモードは分かるだろう。だったらもっと液晶画面を広く取って視認性を上げるか、いっそのことスムージングしてしまう方がよいのではないかと個人的には思うが、一方でこのインジケーターこそが、2100系の表情を作り出しているのは事実だ。
本作の機能面が役に立ったと感じたのは、ワールドタイムの入れ替え機能。出張先と日本の時刻(ホームタイム)をワールドタイムで入れ替える時は、2時位置と10時位置のボタンふたつを同時に押す操作だけで、針がぐるぐると回って、時刻の入れ替えを行ってくれるのだ。
G-SHOCKらしく使いたい1本
そして最後にオリジナリティだが、やっぱりこのモデルはG-SHOCKの2100系である。5000系オリジンのオクタゴンケースにアナログ用の丸いダイアルを押し込めば、横長だったケースは丸みを帯びて、ロイヤル オークに見えてしまうのものも、分からなくもない。しかしロイヤル オークはもっと薄造りで、繊細な時計だ。かたやGM-B2100AD-2AJFは、もっとタフ。良い意味で、やはりG-SHOCKなのである。だからこそ、筆者はG-SHOCKのアイデンティティである、ボタンカバーのエッジを立ててほしかったわけだが、その役割はMRーGの登場に期待しよう。ともあれロイヤル オークに似ていることをウイットとして語れるほど、2100系のルーツはしっかりしている。クルマで言えばレンジローバー ディフェンダーと、三菱デリカ・ミニのようなものだろうか。
そんなGM-B2100ADは端正なイケメン時計だが、猫かわいがりするのではなく、傷をも恐れず使い倒すとカッコいい。今でこそファッションとしてメタルシリーズは定着したけれど、そもそもGMWーB5000D-1JFから始まったステンレススティールケースの魅力は、耐久性の高さにある。それは「もうG-SHOCKで、加水分解を心配する必要はなくなったのか!」「ずっと使えるじゃないか!」という驚きと喜びである。
G-SHOCK最大のアイデンティティである強度(GM-B2100ADもベゼルとムーブメントの間にファインレジン製の緩衝材を挟み込むことで、このアイデンティティを達成している)を保ちながら、同時に長くそのデザインを保ち続けることができるフルメタルシリーズだからこそ、G-SHOCKらしく使うべきだと思うのだ。もしこれがMRーGだったら筆者も躊躇しそうだが、少し手に入れやすい価格のGM-B2100ADなら、時間だけでなく歴史をもそのボディに、一緒に刻んで行けそうな気がする。
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