ダイアルからも内部機構がのぞく、スケルトン／オープンワークウォッチ8選【ブレゲ、ウブロ、ゼニスなど】

ダイアルやムーブメントのブリッジを肉抜きすることで、内部機構を観賞させる時計の魅力は計り知れない。機械式時計の仕組みや動き、そしてムーブメントの美観に魅せられているユーザーにとって、所有欲を刺激する仕様といえる。そのため多くの時計ブランドからスケルトンまたはオープンワークウォッチがリリースされており、そのラインナップはまさに百花繚乱だ。本記事では、ブレゲやウブロ、オリエントスターなどが手掛ける、そんな内部機構を楽しめるモデルを8本、紹介しよう。

内部機構を楽しむ、スケルトン／オープンワークウォッチの魅力

内部機構ののぞく時計を手に取ろうと思った場合、どのようなポイントを意識して楽しめばよいのだろうか。まずは、スケルトン／オープンワークウォッチが持つ魅力を見ていこう。

“見せる”ことを前提に、高い技術力を発揮

スケルトンまたはオープンワークウォッチはダイアルやムーブメントのブリッジが肉抜きされることで、内部機構があらわになっており、一般的なモデルでは隠れているような動力源の動きや、ムーブメントの一部を見ることができる。しかし、スケルトンウォッチの魅力はそれだけではない。

スケルトン仕様を選ぶ多くの時計ブランドは、“見せる”ことを前提に、ムーブメントに丁寧な仕上げや工夫をこらした肉抜きを施しており、各社の高い審美性や、時計製造技術が発揮されているという「価値」も有しているのだ。

なお、スケルトンウォッチはダイアル全体を肉抜きしたフルスケルトンと、一部を肉抜きしたセミスケルトンとが存在する。

200年超とされる古い歴史

スケルトン時計の歴史を語るうえで、アブラアン-ルイ・ブレゲは欠かせないだろう。18世紀から19世紀にかけて、時計の機構や装飾において、数多くの発明を行った。このことから、天才時計師と称される人物である。

アブラアン-ルイ・ブレゲがフランス王妃マリー・アントワネットのために手掛けた懐中時計「NO.160」は、伝説的なスケルトンウォッチだ。盛り込まれた複雑機構のすべてが可視化されているのだ。

フルスケルトン／オープンワークタイプの時計5選

フルスケルトンまたはオープンワークタイプの時計は、ダイアルとケースバックの両方からムーブメントを観賞することが可能だ。おすすめのモデルを紹介する。

ブレゲ「クラシック トゥールビヨン エクストラフラット スケルトン」5395

　側面にコインエッジ装飾を施したラウンド型のケースや、先端に丸みを帯びたラグ等、「クラシック」コレクションを象徴するデザインを採用しつつ、精緻な仕上げが与えられたスケルトン構造とトゥールビヨンを堪能することが可能なモデル。極限まで削ぎ落され、手作業による面取りが施されたムーブメントの地板と受けには、18Kゴールドが使用されている。

　スケルトンウォッチならではの審美性と実用性の両立に成功させている点も、本作の魅力だ。ダイアルの素材にサファイアクリスタルを採用し、アプライドインデックスとプリントローマンインデックスを配することで、内部構造を隠すことなく視認性を高めている。また、外周式のペリフェラルローターによる自動巻き機構を搭載することによって、ローターがムーブメントを覆い隠してしまうようなこともない。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク」

　柔らかな印象の18Kサンドゴールドをケースとブレスレットに採用した、オーデマ ピゲの2024年新作。サンドゴールドは、ホワイトゴールドとピンクゴールドの中間にあたる独特の色味に加え、経年による変色にも強いという特徴を持つ新素材だ。

　本作は、シンメトリーなレイアウトのムーブメントを採用していることも特徴だ。立体感を強調するような多層構造のオープンワークによって、細部にまで施された面取りや6時位置のフライング トゥールビヨンを存分に鑑賞することができる。フランジには蓄光塗料を塗布したインデックスがセットされており、暗所での視認性も確保されている。ケースバックからは、ブランドロゴをオープンワークで表現したローターを楽しむことが可能だ。

ウブロ「ビッグ・バン ウニコ インテグレーテッド チタニウム」

　ダイナミックなオープンワークダイアルが特徴の「ビッグ・バン ウニコ」。3時位置に60分積算計、9時位置にスモールセコンド、そして6時位置にはクロノグラフの作動を司るコラムホイールが配されている。ダイアルの裏にはデイトリングがのぞき、立体感と遊び心を添えている点も魅力だ。搭載するクロノグラフムーブメントCal.HUB1280には、フライバック機構が搭載されており、ボタン1つでクロノグラフのリセットとリスタートを行うことができる。

　操作性に優れた大型のプッシュボタンとリュウズを備えたケースは、ブレスレットと一体化したスタイリッシュなデザイン。サテンとポリッシュに磨き分けられた迫力のあるルックスながら、外装の素材に軽量なチタンを採用することで、取り回しやすさにも配慮されている。

ロジェ・デュブイ「エクスカリバー モノバランシエ イーオンゴールド」

　モダンな印象のオープンワークが目を引くスケルトンウォッチ。この「エクスカリバー モノバランシエ」は、10時半位置のマイクロローターや8時位置のテンプ等、ムーブメントの構造をダイアル全体で楽しむことが可能な、ロジェ・デュブイの代表作だ。星型にデザインされたブリッジは、深い面取りによって立体感が強調され、ダイアルに奥行き感をもたらしている。

　理論上の耐衝撃性に優れるフリースプラングテンプや動力の伝達効率を高めるシリコン製脱進機が採用されており、デザインだけではなく優れた実用性を秘めていることも本作の特徴だ。

　ケースに用いられているイーオンゴールドは、一般的なローズゴールドに比べて変色しにくく、高い硬度と耐傷性を備えた素材である。

ユリス・ナルダン「ダイバー X スケルトン ホワイト 44MM」

　その名の通り、ダイアルにX型のモチーフをあしらった、アヴァンギャルドなデザインを特徴とするダイバーズウォッチ。他社に先駆けて、ムーブメントにシリコンパーツの導入を開始したユリス・ナルダンらしく、本作にも多くのシリコンパーツが採用され、シリコン製のテンワや脱進機をダイアル側から楽しむことができる。シースルーバックからは、同じくX型に切り抜かれたローターを鑑賞することが可能だ。

　ケースに軽量かつ耐傷性に優れたチタンを、ベゼルとリュウズガード、ストラップにホワイトのラバーを採用することで、見た目にも爽やかなカラーリングに仕上がっている。

　200m防水を備えており、繊細なイメージの強いスケルトンウォッチながら、アクティブシーンでも使える点は心強い。

セミスケルトン／オープンワークタイプの時計3選

セミスケルトンタイプの時計は、その多くがムーブメントの心臓部にあたる「テンプ」の動きを見せるため、オープンハート」と呼ばれることもある。ここでは、おすすめのセミスケルトン時計を見ていこう。

ゼニス「クロノマスター オープン」

　1969年に誕生した、毎秒10振動の伝説的なクロノグラフムーブメント「エル・プリメロ」の後継機を搭載したモデル。本作が搭載するCal.エル・プリメロ3604は、1/10秒のクロノグラフ機能を備えたムーブメントだ。その性能を視覚的にも味わうことができるよう、ダイアルの脱進機周りがスケルトナイズされている。

　見どころは、鮮やかなシリコン製ガンギ車と高速で振動するテンプ。ガンギ車には、ブランドを象徴する星型のデザインが与えられている。また、この構造を露わにするために、9時位置のインダイアルにはヘサライトクリスタルが採用されている。

　ポンプ型のプッシャーやシャープなラグ等、すっきりとしたクラシカルなデザインと、ゼニスの最新の技術を堪能することができる1本だ。

ハミルトン「ジャズマスター オープンハート オート」

　ハミルトンの定番コレクションである「ジャズマスター」のセミスケルトンモデル。ジャズマスター特有のシンプルでスタイリッシュなデザインをベースに、個性的なディティールを与えられている。

　ダイアルのカラーはバーガンディ。中心から外周に向かって徐々に暗くなるグラデーションがかけられ、スモーキーな雰囲気を漂わせている。オープンワークは、12時から4時位置と7時から8時位置にかけて施されている。この変則的なオープンワークは、ダイアルに動きをもたらすだけでなく、テンプやオシドリ、ペルラージュが施された地板、軸受けのルビー等、機械式ムーブメントならではの構造を可視化させている。

　搭載するCal.H-10は、耐磁性に優れたニヴァクロン製ヒゲゼンマイを採用し、約80時間のロングパワーリザーブを誇る実用性に優れたムーブメントだ。

オリエントスター「M34 F7 セミスケルトン RK-BY0001A」

　オーロラを想起させるような、ブルーグリーングラデーションの白蝶貝ダイアルが幻想的な1本。9時位置に設けられた開口部からは、振動するテンプと収縮するヒゲゼンマイ、面取りが施された地板を鑑賞することが可能だ。12時位置にはパワーリザーブインジケーターが配され、主ゼンマイの残量を把握することができる。開口部に重なるスモールセコンドのリング等、ダイアルの立体感を創出するためのデザインもポイントだ。

　モデル名に含まれるM34は、ペルセウス座に位置する散開星団を意味しており、シャープなラグや時分針の形状は、英雄ペルセウスの力強さを表現したものだ。サテンとポリッシュで磨き分けられたステンレススティールブレスレットや10気圧防水等、日常的に使いやすい仕様で纏められていることも本作の特徴だ。

まるで芸術品のようなスケルトン／オープンワークウォッチを手に取ろう

内部機構を楽しめる、スケルトン／オープンワークウォッチ。8本のモデルを紹介したが、いずれも各時計ブランドごとの特色が見られたのではないだろうか。各時計ブランドが信念を持った、“見せる”ムーブメントは、所有欲を刺激する。

スケルトン／オープンワークウォッチを検討する際は、ブランドごとの特徴を知ったり、比較してみたりすることで、いっそうこの種の時計の魅力を、深く理解できるだろう。