フランク ミュラーの「カサブランカ」といえば、1994年に登場して以来、多くの時計愛好家の心を魅了してきた代表的なシリーズだ。現在も独創的な魅力にあふれたラインナップをリリースしているカサブランカの魅力と、おすすめのモデルを紹介しよう。
フランク ミュラー「カサブランカ」ってどんな時計?
数あるフランク ミュラーのシリーズの中でも、長く愛され続けてきた「カサブランカ」。豊富なラインナップがそろっていることでも有名で、さまざまなモデルが用意されているので、時計好きなら一度は目にしたことがあるだろう。まずは、カサブランカの特徴や歴史を簡単に押さえておこう。
1994年誕生のステンレススティール採用モデル
フランク ミュラーのカサブランカは、1994年に誕生した、同ブランド初のステンレススティール製ケースを備えたモデルだ。同ブランドを代表するシリーズとして人気を博している。
モデル名は、かつてフランス領だったモロッコの都市名に由来する。1920年〜40年代、ヨーロッパの貴族階級にとっての高級避寒地でもあったカサブランカを想起させる意匠が、多くの時計ファンを引き付けてきた。
その最たる特徴は、ブランドのアイコンともなったトノウ カーベックスケース。90年代、硬いステンレススティールではこの複雑な3Dシェイプ加工は不可能と考えられていた。しかし、気鋭のケースメーカー「テクノケース」の創業者であったヴァルタン・シルマケス(現フランク ミュラーグループCEO)は、ステンレススティールを鍛造することで高品質なケースを作り出し、しかも量産に成功したのだ。
トノウ カーベックスは、個性的なデザインを求める時計愛好家をはじめ、ファッションに信念のある多くの著名人にも広く受け入れられることとなった。
現在は第4世代までリリース
カサブランカは、94年にリリースされた第1世代に始まり、それに続いて2000年頃に第2世代、2003年頃に第3世代が発表されたという歴史をたどる。現行の第4世代は、約14年頃に市場に登場した。
第3世代からケース側面が厚くなり、ブレスレットの質も向上した。また、世代を重ねるごとに、インデックスのビザン数字がより大きく、湾曲が強調されている点も特徴だ。
代表的な文字盤カラーは3種だ。カサブランカ(スペイン語で「白い家」)の名が示すホワイト、砂漠の夜空のブラック、そして砂漠の色合いを連想させるサーモンピンク。針とインデックスには蓄光塗料が施されており、夜間でも時刻を明確に読み取ることができる。
初代から踏襲されるテイスト
近年もフランク ミュラーは、コンプリケーションウォッチを筆頭に、多彩なコレクション展開を行なっている。このコレクションの中にはモダンであったり、他に類を見ないアヴァンギャルドな意匠を備えていたりするモデルもあるが、カサブランカは初代モデルのテイストを踏襲し、トノウ カーベックスと砂漠への旅情を感じられる文字盤を採用し続けている。
なお、カサブランカは、文字盤に日焼け防止のクリア処理(クリア塗装を塗布すること)を長く行なってこなかった。現行モデルには薄く吹かれているというが、あえてエイジングを楽しむための仕様なのだという。
フランク ミュラー カサブランカのおすすめモデル
定番のモデルからクロノグラフまで、幅広いラインナップもカサブランカの特徴だ。その中でも、特におすすめのモデルをチェックしてみよう。
カサブランカ 6850CASA AC
フランク ミュラーのアイコンのひとつで、ヨーロッパの高級避寒地として好まれた、カサブランカの乾燥した気候を体現する。自然の懐に抱かれながらも、洗練されたお洒落を忘れないヨーロッパの人々に好まれる時計としてデザインされた。自動巻き。SSケース(縦47×横34mm)。日常生活防水。159万5000円(税込み)。
カサブランカは、1990年代のヨーロッパの富裕層がバカンスの際に、タフなステンレススティール製の時計好んで着用していたことを背景に、旅情を感じさせるラグジュアリーなデイリーウォッチとして誕生した。本作は、初期にリリースされた5850ケースよりもひと回り大きい6850ケースが特徴だ。
湾曲させた文字盤には、石灰石で作られたカサブランカ(白い家)の壁のようなテクスチャーを与えている。3次元曲線を描くケースは、大ぶりながらも着け心地を配慮。どのようなシーンにおいても腕元に個性を添えてくれる。
カサブランカ サハラ 6850SAHA
当初、限定モデルとして登場したサハラは、砂漠をイメージしたカラーリングが特徴。日に焼けたようなカラーのインデックスが特徴で、そのヴィンテージ感のある佇まいを好むファンも多い。自動巻き。SSケース(縦47×横34mm)。日常生活防水。159万5000円(税込み)。
95年に限定モデルとしてリリースされたサハラは、その名の通り、砂漠の荒野を連想させる色を文字盤にあしらっている。アイコンであるビザン数字と針には、経年で日に焼けたようなブラウンが塗装されており、最初からヴィンテージな風合いを感じさせる。
前述の通り、使用するほどに味わいが深まる仕様となっており、当初は限定版だったものの、人気の高さからレギュラーコレクションの一角となった経緯がある。
カサブランカ・ルナ ホワイト 7880CL AC
ムーンフェイズを50mm超の大振りケースに配した1本。CASABLANCAのロゴは青が基本だが、ごく少数、イレギュラーな赤モデルも生産されているという。自動巻き。SSケース(縦50.4×横36mm)。日常生活防水。233万2000円(税込み)。
カサブランカ ルナは2016年にラインナップされたモデル。フランス語で「月」を指すルナのモデル名通り、6時位置にムーンフェイズを配置する。細身に改められたビザン数字と、顔が描かれた月により、カサブランカの中でも独自の雰囲気を醸し出しており、定番モデル以上に好む人は少なくない。
使い込むほどに味の出る文字盤に「月」の動きを加えることで、砂漠での時の流れをイメージできるのが魅力だ。小さな天体を閉じ込めたような遊び心と、神秘性がほどよく融合している。
カサブランカの絶妙な曲線美を楽しむ
94年のリリース以来、世界中で多くのファンを獲得しているカサブランカは、世代を重ねるごとに洗練度を増し続けている。往年の時計ファンだけではなく、ここ数年で高級時計に興味を持ち始めた人々も魅了しており、今後もこの傾向は続いていくだろう。
多くのモデルがリリースされており、バリエーションも豊富なので、気に入ったものがあれば細かくチェックしてみよう。歴史や意匠の理由を理解すれば、納得の1本に出会えるはずだ。
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